アイドル的存在としてブレイク!? 映画から派生したグリーンボーイズ、ピュアな歌声の魅力

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2017年01月20日 18:42  リアルサウンド

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グリーンボーイズ(左から、成田凌、菅田将暉、横浜流星、杉野遥亮)

 2017年にCDデビューする新人グループで、既にブレイクが約束された存在。その名は「グリーンボーイズ」。菅田将暉、横浜流星、成田凌、杉野遥亮の俳優4人で結成されたこのユニットは、1月7日にさいたまスーパーアリーナで行なわれたGReeeeNの10周年記念ライブで前座を務め、いきなりアリーナクラスで生歌を披露。1月20日には『ミュージックステーション』にも出演し、1月24日のCDデビュー前に公開された「声」の動画は260万回再生(1月19日現在)と、勢いに乗っている。もはや映画『キセキ ーあの日のソビトー』から生まれた企画ユニットという枠を超え、人気を広げつつある。


参考:菅田将暉、サブカル女子から支持されるワケ 王道的イケメン×抜け感の魅力


 1月27日公開の映画『キセキ ―あの日のソビト―』は、「キセキ」のヒットで知られるボーカルグループGReeeeNの結成当時の実話を基にした青春ストーリー。GReeeeNの4人は現役の歯科医師であるため、2007年のメジャーデビュー以来、顔と本名を公表せずに音楽活動を行なっているが、その結成からデビューまでには、いったいどんなドラマがあったのか。菅田将暉が演じるリーダーのヒデと、その兄で音楽プロデューサーのジン(松坂桃季)との関係を中心に描いていく。兄弟の父は医師で、ミュージシャンを職業として認めず、「音楽なんてお遊びだ」と兄弟の夢を全否定する。ヒデがどうして音楽と医療の仕事を両立しているのか、その背景がよく分かるし、厳格な父に対する兄弟の葛藤を描き、音楽がカウンターカルチャーであることを改めて思い起こさせてくれる優れた人間ドラマだ。


 グリーンボーイズのCDにも収録される「声」は、GReeeeN結成のきっかけとなった曲。その歌が生まれファーストライブで披露するまでの展開は、この映画で声を合わせることになったキャスト4人の初々しさにシンクロし、さわやかな感動を呼ぶ。顔を見せないで活動するGReeeeNの素顔を演じるのも強みで、彼らの事情を理解しつつも姿を見たいと思うのがファン心理というものだからそんなGReeeeNファンのフラストレーションを解消してもくれるのだ。GReeeeNのコンサートで表示されるアバターではなく、当代きってのイケメンたちが大好きな彼らになりきってくれる。こんな楽しいことがあるだろうか。


 リードボーカルの菅田将暉は、映画『何者』ではバンドのボーカルとして歌を披露し、auのCMソング「見たこともない景色」で既に歌手デビューも果たしている。歌の上手さには定評があり、昭和のフォークソングからロックバンド曲、そしてGReeeeNのようなラップまでこなすリズム感も抜群。なにより役者だけにその曲の色の染まる器用さがあり、歌手としては映画劇中歌からブレイクし福山雅治や椎名林檎から楽曲を提供されてきた柴咲コウに似た展開を見せている。その菅田(ヒデ役)に加え、表情が豊かで軽妙な成田凌(クニ役)、甘い歌声を持つ横浜流星(ナビ役)、低音を効かせる杉野遥亮(ソウ役)も、実際のGReeeeNに近いメンバーが選ばれただけに、バランスが良い。


 筆者がグリーンボーイズの魅力に気づいたのは、前述の1月7日のGReeeeNライブにて。個人的な感傷になるが、昨年末はSMAP解散などにまつわるあれこれで、自分がふだんレポートしている芸能界やアイドルビジネスに失望していたまさにそのタイミング。さいたまスーパーアリーナの花道に登場し、初舞台のプレッシャーと戦いながらガチで歌ったグリーンボーイズにはフレッシュな輝きがあった。菅田将暉はステージ上でぴょんぴょんと跳ねながら、観客を熱狂させていた。しかし、彼らは作詞作曲をしたわけではなく、映画の延長としてグリーンボーイズを演じているわけで、そこがアイドル的。まさにアイドルに代わる存在として約1万6000人のサイリウムを揺らしていた。そのパフォーマンスからは芸能界のしがらみも、アイドルの陰も見えてこなかった。


 既にエンタメ業界では、俳優の桐谷健太が浦島太郎名義で歌う「海の声」が大ヒットし、映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』で長瀬智也、神木隆之介らが組んだバンド「地獄図(ヘルズ)」が『ミュージックステーション』に出るなど(ここにも桐谷健太が!)、“企画もの”の音楽活動が盛んになってきている。ここで、それに熱狂する受け手の気持ちを考えてみると、どうせアイドルに夢を見られない時代ならば、始めから作りものと銘打ったものに乗っかってしまおう。それはあくまでキャラなわけなので、文春砲などによるスキャンダルに心を揺らすこともないし、彼らが結婚したり解散したりしてもショックが少ない。そんなリスクヘッジの心理が働いているように見える。近年、漫画原作のミュージカルに出る俳優たちが「2.5次元アイドル」として人気を得ているが、それにも通じる流れなのかもしれない。


そんな中でも、グリーンボーイズは、菅田将暉という旬のスターとGReeeeNの楽曲という強みを持っている。このアイドル神話が崩壊しつつある2017年初頭、本業のアイドルすらもしのぐ存在感を放つはずだ。(小田慶子)


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