欅坂46「サイレントマジョリティー」は全てをかっさらったーー『アイドル楽曲大賞』アフタートーク

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2017年01月21日 13:32  リアルサウンド

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『第5回アイドル楽曲大賞2016』フライヤー。

 欅坂46の「サイレントマジョリティー」がメジャーアイドル楽曲部門の1位に、インディーズ/地方アイドル楽曲部門の1位にはまねきケチャの「きみわずらい」が1位に輝いた『第5回アイドル楽曲大賞2016』。年末恒例となった阿佐ヶ谷ロフトAでの順位結果発表イベント時には、Twitterトレンドワード上位に「#アイドル楽曲大賞」がランクインし、数日後には一部のタワーレコードの店頭にアイドル楽曲大賞の展開ポップが作られるほどの盛り上がりを見せた。


 リアルサウンドでは、3年連続となる『アイドル楽曲大賞アフタートーク』と題した座談会を今年も開催。ライターとして企画・編集・選盤した書籍『アイドル楽曲ディスクガイド』を著書に持つイベント主宰のピロスエ氏、コメンテーター登壇者からはアイドル専門ライターであり、『IDOL NEWSING』制作・運営に携わる岡島紳士氏、昨年著書『MOBSPROOF EX CREATOR LIFE is HARD「渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする」』を発売した音楽評論家の宗像明将氏、トークライブ「ガリバーのアイドル漫遊記」を毎月大阪にて開催しているガリバー氏が参加。前編では、メジャーレーベルとインディーズレーベルとのグレイゾーン、2016年における欅坂46の存在などについて語り合ってもらった。(渡辺彰浩)


・「メジャーかインディーズかというのを精査していかないと」(ピロスエ)


ーー今年はNegiccoやアップアップガールズ(仮)、アイドルネッサンスなどが所属する<T-Palette Records>がメジャー部門からインディーズ部門に移動しました。


ピロスエ:アイドル楽曲大賞を始めた1年目はメジャーとインディーズは分かれていなかったのですが、2年目からそれを分けるようになったんです。<T-Palette Records>をどちらに入れようかとなった際に、厳密に言えばレコード協会に参加しているレコード会社はメジャーという考え方があり、その考え方に準ずると<T-Palette Records>はインディーズということになる。けれど、自分たちの実感として<T-Palette Records>は当時から有名グループが揃っていて、ライブ動員もある。それに加え、全国のタワーレコードで販売されているということなので「実質的にメジャーだろう」という解釈になりました。そのうち、それに関して厳密に言うような人が目立つようになってきたこともありますし、メジャーからインディーズに移した一つのきっかけに、アップアップガールズ(仮)が昨年11月に日本武道館で開催したワンマンライブがあって。その時のマスコミ取材で彼女たち自身が「インディーズのグループだけど武道館でライブが出来て嬉しい」という主旨の発言をしていたんです。公的発言として、自分たちをインディーズとして認識しているというのが分かったので、投票者からも「インディーズの方がいいんじゃないの?」という声もあり、今年はインディーズにしたというのが経緯です。


宗像:インディーズにしたらしたで、「メジャーの方が良かった」という人もいるよね。


ガリバー:どっちにしても何かしら言われますからね……。


ーー<T-Palette Records>以外で言えば、まねきケチャなどが所属していた<FORCE MUSIC>、sora tob sakana、虹のコンキスタドールの<FUJIYAMA PROJECT JAPAN>が上位を占めています。


岡島:<FORCE MUSIC>、思い出をありがとう!


宗像:みんな倒産したって言ってるけど本当に倒産したの!? 流通的には「メジャー流通」にならしてもいいんですよ。コロムビア(コロムビアマーケティング流通なので)流通なんだから。


ガリバー:マボロシ可憐GeNEも「<FORCE MUSIC>からメジャーデビュー!」とプロモーションしていましたからね。


岡島:そんなこと言い出したら、ももいろクローバーも『ももいろパンチ』でメジャーデビューって言っていましたよ。


宗像:メジャーとインディーズという日本のグレーゾーンを背負っていくのがアイドル楽曲大賞なんですよね。しかし、そこのグレーゾーンに面白みがある。


岡島:流通だけを行う、とはどういう意味なんですか?


宗像:発売元がレコード会社に発売することを知らせて、レコード会社がメジャーの流通網に乗せる形ですね。日本レコード協会の正会員と準会員というのがあって、正会員ならメジャーだけど、準会員はメジャーなのか、とかそういった議論がまたあるんですけど。準会員の中に<SPACE SHOWER MUSIC>がいたりして、いろいろこんがらがってくるんですよ。例えば、今のBiSや田島貴男も<SPACE SHOWER MUSIC>の流通ですね。


ガリバー:それはメジャーじゃないですか!


ピロスエ:個々のケース毎に違うってことですよね。メジャーかインディーズかというのを精査していかないといけない。


宗像:我々もオリコン並みの精査が必要かもしれないけれど、グレーゾーンはグレーゾーンで置いておく。そこのごちゃっとしたところに日本の音楽産業、ひいてはアイドル産業の面白いところがあるのでは。


ガリバー:でも、別にアイドル産業だけではなくて、音楽産業全体がそうなんですよね? そういった括りは意味がないというか。話題は変わりますが、投票時に入れられる曲に対するコメントが明らかに減ってませんか? 特に今年はコメントの量がアイドルによって顕著に分かれてますよ。その中でも、メジャー1位に輝いた欅坂46の「サイレントマジョリティー」は「結局今年はこれでした」というようなコメントをみんなが何かしら書いている。メジャー、インディーズのファンに関係なくコメントも一番多かった。次は2位のBiSHの「オーケストラ」かな。欅坂46に一矢報いようっていうコメントが結構あった。


ーー客観的に見ても「サイレントマジョリティー」が1位だろうというのは、2016年下半期にかけて空気感として漂っていましたね。


ガリバー:アイドル楽曲大賞も5年目に突入しているので、反応として慣れてくるというのはありますが、今年に関して言えば1位が「サイレントマジョリティー」と発表されてもなんの驚きもない結果としてあったので。受け取る側も「まぁ、そうだよね」と受け流されたのは感じていますね。ここまでどんでん返しはあり得ないという状況はこれまでなかった。各ジャンルのファンが細分化している、各グループの勢いが落ちてきているなという状況もありつつ、全てをかっさらっていった欅坂46は自分がどこのエリアにいても、避けて通れない大きな傘のような存在でした。宗像さんが「今年は欅坂46の年だった」(http://realsound.jp/2016/12/post-10517.html)と書いていて衝撃でしたね。


宗像:「サイレントマジョリティー」のMVを出された時点で圧倒的なインパクトでしたし、『TOKYO IDOL FESTIVAL 2016』で観た時の衝撃も大きかった。


岡島:欅坂46はアイドルが好きな層にしっかりアプローチしていったのが大きかったと思います。『TIF』、『@JAM×ナタリーEXPO 2016』といったアイドルフェスに出たりと、どちらかと言えばAKB48グループや乃木坂46などはシーンから独立していたイメージだったので、そこの層にハマったのかなという印象です。


ガリバー:新人だから出れたのであって、来年以降は出演はなさそうですけどね。AKB48 チーム8、NGT48も『TIF』は初出場だったのに完全に欅坂46が話題を持っていった。デビュー同時期として、NGT48は不運なライバルを背負ってしまった……。NGT48は来春リリースされるメジャーデビュー曲がどうなるかですね。


宗像:14位にランキングした「Maxとき315号」は、Negicco、RYUTistに通ずるアコースティック感覚のサウンドで、同じ新潟アイドルグループと差別化できてないので、打ち込みみたいな楽曲も期待しています。あとは、新潟県知事にNGT48サイドが挨拶した時に、Negiccoも同席していたこともあるので、Negiccoをカバーすれば面白いですけどね(笑)。


・「2016年はアイドルのサイクルの早さをすごく感じた」(宗像)


ーー9位の私立恵比寿中学「まっすぐ」、16位の乃木坂46「きっかけ」、23位の同じく乃木坂46「サヨナラの意味」と杉山勝彦の作曲ソングが多く入っているのも印象的です。


ガリバー:乃木坂46は反面、杉山勝彦頼みなところもあると言えるので、来年は頑張ってほしいですね。グループ単体としては一番力を持っているというのは間違いないので。


ーーメンバーもよく言っていますが、誰もが歌える国民的ヒット曲がないという点もあります。


宗像:ヒット曲がないと言っても売れてはいますよね。


ガリバー:一方で、国民的ヒット曲はなくてもいいんじゃないかというのがあって。毎年、年末にメドレーの中でAKB48が「恋するフォーチュンクッキー」、モーニング娘。が「LOVEマシーン」を歌っているよりかはいいんじゃないかと。乃木坂46にそれがないのはポジティブに捉えるといいことなんじゃないかな。「恋するフォーチュンクッキー」は、2013年の楽曲大賞1位も自然といえるものだったんですけど、前年のランキングでは上位に来なかったAKB48が1位になったという事実に会場が「本当に一位になるなんて!」というリアクションだったのも面白かったですよね。


宗像:AKB48+ブラックミュージック=無限大みたいな。その反面、今年は2位のBiSHが発表された時に「あー!欅か!」というような反応があった。


ガリバー:インディーズ1位のまねきケチャ「きみわずらい」も予想している人は多かったですからね。


宗像:今年は特にインディーズのランキングを見た時に、同じアイドルが上位に何度も出てくる。投票対象となるアイドルが限られてきているというのは感じましたね。TOP10にアイドルネッサンス、sora tob sakanaが共に3曲も入っている。


ガリバー:フィロソフィーのダンスもTOP20で言えば2曲がランクインしています。例えば、ベイビーレイズJAPANは、年末に赤坂BLITZで3DAYSワンマンライブを開催していたり、同時期にZepp DiverCity (TOKYO)、Zepp Tokyoでは、まねきケチャ、神宿、prediaがライブを行っていて。動員はあるのにも関わらず、そういったアイドルがランキング上位にほとんど入ってきていない。投票に繋がってこないというのは、参加層にまだ偏りがあるということですよね……。


宗像:アメリカ大統領選みたく、夏の『TIF』の段階で予備投票を始めるんですよ。俺らが「楽曲大賞でーす! 好きな楽曲選んでください!」と呼びかければみんな投票してくれるかもしれないから。


ガリバー:これは『TIF』のトークステージに出るしかないですよ……(笑)。


岡島:ファンが多くても楽曲大賞の上位に来ないアイドルは、ファン側があまり楽曲に興味がないのではないですか? 好きな曲はあるのだろうけど。順位に表れないというのは、それそのものの結果が表れている気がしますけど……。とは言え、バイアスというのは必ずあって、アイドルネッサンスファンに楽曲嗜好が多いのかもしれないし、2014年にアイドルネッサンスの「17才」が1位を取った時から心に響いて、投票を続けてくれているのかもしれないですし。


ピロスエ:アイドルネッサンスは古今の名曲をカバーするというのがコンセプトにあるので、それだけ楽曲の力が強いということだから、ランキング上位にくるというのは至極自然なことだと、逆説的に言えますね。もちろんグループの力もあるんだろうけど。


岡島:同じグループの曲が上位に固まるというのは、楽曲の善し悪しのみでランキングしているという象徴的なものになっているのかもしれないですね。


宗像:一方で、楽曲大賞の上位にいるグループはまだ良くて、2016年はアイドルのサイクルの早さ、スパンの短さをすごく感じましたね。生まれては消えていく、スピードが早い。


ガリバー:それにみんな慣れてきてしまった。「また、この繰り返しかよ……」と。


岡島:「大切なお知らせ」のジャンクフード感がありますからね。iPhoneのメモ帳に文面を書いて、スクリーンショットしてTwitterにアップ、みたいな。姫乃たまさんがその一連の流れに対して、「引退の挨拶をスマホのメモ帳に打ち込んでスクリーンショットで済ませるような地下アイドルにはならないので安心してください」とツイートしていたのが印象的でした。


宗像:だからと言って、書道で書かれても困りますからね……。


一同:ははははは(笑)。


【後編に続く】(渡辺彰浩)


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