ピクサー社員はどんな環境で働いている? ピクサー・アニメーション・スタジオ潜入レポ

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2017年01月21日 13:32  リアルサウンド

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ピクサー・アニメーション・スタジオ

 『ファインディング・ドリー』のMovieNEX発売を記念したピクサー・アニメーション・スタジオ現地取材。最終回となる第4回は、米カリフォルニア州エメリービルに位置するピクサー・アニメーション・スタジオ内部の様子をレポートする。


参考:『ファインディング・ドリー』クリエイター陣が明かす、作品世界の創造とタコのハンクの制作秘話


 ピクサー・アニメーション・スタジオがあるエメリービルは、人口約1万人、サンフランシスコから車で約20分ほどの小さな町。ピクサー・アニメーション・スタジオは、そんなエメリービルの町中に、22エーカー(約27000坪/東京ドーム約2個分)もの広大な敷地を持つ。“PIXAR”の文字が大きく掲げられたゲートをくぐり駐車場を抜けると、ピクサー作品お馴染みのルクソーJr.とルクソーボールのオブジェがそびえ立つ。その隣に建っているビルが、メインオフィスのひとつThe Steve Jobs Buildingだ。アップル社の共同設立者として知られ、ピクサーの元CEOでもあるスティーブ・ジョブズを追悼して名付けられている。


 中に入ると、レゴブロックでできた『トイ・ストーリー』のウッディ&バズ、『Mr.インクレディブル』一家、『カーズ』のルイジ&グイドらがお出迎え。大きな空間が広がるアトリウムには、『ファインディング・ドリー』のフィギュアやピクサー社のカードが飾られた受付や、アカデミー賞やゴールデングローブ賞などのトロフィーが飾られたショーケース、壁にかけられた『ファインディング・ドリー』の大きなアートワークなどが目に入ってくる。トイレや壁などのいたるところにピクサー作品のキャラクターが隠れているのも、遊び心溢れるピクサーならでは。


 The Steve Jobs Buildingで働く社員が毎日必ず通ることになるアトリウムには、日によってメニューが変わる社員専用カフェテリアCafe Luxo、シリアルやフルーツ、オートミールなどが無料で提供されるシリアルバー、ここだけでしか買うことができない商品も豊富に用意されたPixar Studio Storeなども常設。“社員の間で会話が生まれるように”というジョブズの思想のもと設計されたアトリウムは、まさにその言葉通りランチタイムには大変な賑わいを見せていた。


 1日に約400人が訪れるというストアは、もともとはピクサーの商品課で働いていたヴァレリー・ハサウェイが、デザインから仕入れまでを数名のスタッフとともにすべて自分たちで行ないながら営業している。人気商品は、キャップやマグカップ、Tシャツなど、ピクサーのロゴが入ったここだけしか買えないオリジナルグッズ。ヴァレリーは、「このぬいぐるみは先週入荷したばかりで、このストアでしか買えない限定商品だからものすごい人気なの」と、『ファインディング・ドリー』の併映短編作品『ひな鳥の冒険』のぬいぐるみをイチオシ商品としてオススメしてくれた。


 映像制作会社だけに、映画を観る環境も充実。主に監督が作品をチェックする際に使われるスクリーニングルームが2つあるほか、シネコン並みのサイズのスクリーンや音声環境、座席を完備したThe Steve Jobs Theaterは、社員向けの試写などで使用されるとのこと。


 社員のオフィスが並ぶ2階には、社内用に作られた、外には一切出ることがないポスターやアートワークの展示が行なわれている。展示物はビルの西側と東側で分かれており、西側ではピクサー作品のポスター、東側では『ファインディング・ドリー』にまつわる作品が展示されていた。映画公開タイミングなどにあわせて、まるで美術館や博物館のように展示物も入れ替えられるそうで、数ヶ月前までは『アーロと少年』の展示が行われていたそう。


 今回は、第3回のレポート記事にも登場してくれたキャラクター・アート・ディレクターのジェイソン・ディーマーによる、ハンクとドリーの描き方レッスンも体験することができた。ジェイソンによると、キャラクターを描くときは、まずそのキャラクターを描くためのモチーフを考えるそうで、ドリーには、卓球のラケット、ローマ字の“S”、羽根、ギターピック、卓球ボールなど、ハンクには、カラーコーン、野球ボール、ワインのコルク、バックパックなどの要素があると説明しながら、キャラクターの描き方を解説。今回は特別に、リアルサウンド映画部のために直筆でハンクのイラストも執筆してくれた。


 スタジオには、The Steve Jobs Buildingのほか、Brooklyn、West Village、SoHoという、ニューヨークの地域からつけられた3つの建物があり、敷地内には、バスケットコートやサッカー場、プールなどの施設も。あまり治安がよくないというエメリービルだが、敷地内にはいたるところに“Assistance”と書かれた青いポールが設置されており、ボタンを押せばすぐに警備が駆けつけるようなシステムになっている。セキュリティにも細心の注意が払われているのだ。


 The Steve Jobs Buildingには、主にアーティストやマネジメント担当のオフィスが入っているが、Brooklynビルには、テクノロジー系やアイデア系の仕事を担当する社員が集まっている。こちらでは、『モンスターズ・インク』のサリーとマイク、『インサイド・ヘッド』のビンボンがお出迎え。


 The Steve Jobs Buildingとは対照的に、ソファーや暖炉、ビリヤード台などが配置されたBrooklynビルには、落ち着いた大人の雰囲気が漂う。暖炉の内部には、Jimmy Claxton Loungeという名前がついた隠し部屋があり、20世紀に初めて黒人として野球リーグでプレーした選手で、オークランド・オークスのスターでもあったジミー・クラクストンにまつわる展示物が飾られていた。


 『ファインディング・ドリー』ではドリー役のエレン・デジェネレス以外の全キャストがアフレコを行なったというレコーディング・スタジオも、このBrooklynビルの中にある。今回はアフレコを体験をさせてもらったが、レコーディング・スタジオにもピクサー作品のキャラクターのぬいぐるみやフィギュアなどが飾られており、ピクサー作品に命が吹き込まれていく現場の空気を味わうことができた。


 今回は見学することができなかったが、スタジオ内にはトレーニングルームやヨガルームなどの設備もあり、ジョン・ラセターをはじめとする社員それぞれのスタッフルームも、ピクサーならではのオリジナルなものになっているそうだ。ピクサーが世界的な評価を受けるようなクオリティの高い作品を常に生み出すことができるのは、充実したスタジオの設備によるところも大きいのだろう。約10時間の滞在だったが、一瞬たりとも退屈することのない、非常に有意義な時間を過ごすことができた。(取材・文=宮川翔)


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