風邪や擦り傷で119番… 救急車の「適正利用」について医師の切実な思い

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2017年02月07日 23:01  citrus

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車を運転していたり、バスに乗ったりしていると、後ろから救急車のサイレンが聞こえてきて、颯爽と通り過ぎていく、ということを目にしたことは、誰しもあるでしょう。また、家の近くに救急車が止まった時には、そわそわと外にでて様子をうかがってしまったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 

私も小さい頃は、「あ、救急車!」と行って家を飛び出して見に行ったり、ドキドキしながら走り去っていく救急車を見送ったりしていましたが、実際に自分が医師になってみると、考え方は大きく変わりました。

 

 

■救急車から患者さんが“ぴょいっ”と降りてきた?

 

もちろん、重症で運ばれてくる方がほとんどなのですが、中には驚くような患者さんがいらっしゃることも少なくありません。私が一番驚いたのは、卒業後2〜3年目の頃に夜間救急当直をしていたころ、病院に横付けされた救急車から、患者さんが、ぴょいっと飛び降りてこられた時でした。最初は付き添いのご家族さんと思ったら、ストレッチャー(移動式ベッド)には誰も乗っていなくて、救急隊員も苦笑いしながら降りてこられたことがありました。

 

また、休日明けの朝8時50分ぐらいに着いた救急車からは、患者さんが「○○科外来の○○先生に、今日一番で診てもらいたい。救急車で来たんだから。待つのはちょっと体がつらい」と言われて、文字通り、開いた口がふさがらなかったことがあります。まぁ、あまり極端な例ばかり挙げても仕方がないのですが、あぁ、これはちょっと……、と何とも微妙な気分になる例は、医師をしていると結構経験します。

 

まずは、病院に通院するタクシー代わりにする例です。あまり、ご高齢であったり、車いすであったりすると、病院に通院されるのも一苦労なことはわかります。ご家族が車で送り迎えしたり、タクシーを使ったりといった手段はありますし、最近では車いすやストレッチャーであっても運べる介護タクシーも整備されてきました。ただ、実際のところはご家族が仕事を休んだり、タクシー代がかかったりと手間もお金もかかりますから、手軽に、しかも無料で運んでくれる救急車を呼んでしまうというケースです。

 

また、それほど重症で無くてもとりあえず救急車を呼ぶというものです。ちょっと風邪気味とか、転倒して擦り傷ができたとか、何となくしんどい、とか、「え!? これで救急車で来られたのですか?」と聞き直してしまったり、救急隊員が苦笑いしながら申し送ってくれたりするようなケースです。もちろん、体調が心配なことはわかりますし、症状が急変することはあるのですが、あまりにも…ということはよくあります。

 

 

■それは「不適正使用」なのか否か

 

こういったことは「救急車の不適正使用」として、都道府県および全体を統括する消防庁も大きな問題として認識してきました。救急車の出動回数は、増加の一途を辿っていますが、その決して少なくない比率のケースが、「本当に救急車でなければダメか?」と思われるケースであると考えられてきましたが、2018年度にも総務省消防庁は、救急車の必要度の低いと判断されるケースがどの程度あるか、実態調査をすることにしたとも報じられています。

 

電話一本かければ、すぐに救急車がやってきてくれて、きちんと訓練を受けた救急隊員が必要な処置を行いながら、医療機関まで連れて行ってくれる。しかも、無料で!というのは、本当にすばらしい仕組みです。このことにより、命が救われたという方は、たくさんいらっしゃることでしょう。

 

しかし、救急車の不適正使用が横行すれば、本当に必要な人が、本当に必要なタイミングで救急車を利用することができなくなり、場合によっては、助けられる命が助けられなくなることがあります。国民によりよい医療を提供し続けるためにも、今回の調査は、きっと重要なデータを示してくれることでしょう。

 

 

■躊躇せずに119番すべき症状とは?

 

とはいえ、本当は救急車を呼ぶべき場合に、躊躇することがあってはいけません。消防庁では、救急車利用マニュアルを使って、適正な使用をよびかけるとともに、こういう場合には救急車を呼んでくださいという事例をわかりやすく説明しています。詳細はパンフレットをお読みいただきたいのですが、一般に、意識がないとか、顔面や手足に麻痺があるとか、けいれんしているといった症状があれば、すぐさま、119番をしていただいた方がよいでしょう。

 

しかし、判断に迷う場合、本人はけろっとしているが、どうしても心配なことがある場合には、119番ではなく、都道府県ごとに「救急相談センター」の様なところが解説されています。こちらに電話すると、専門家が病状を聞いてアドバイスをしてくれますので、どのような行動をするべきか決められないときには、是非、活用していただきたいと思います。

 

いずれにしても、救急車の適正使用に努めることは、結果的に、自分が救急車を必要とする時に、きちんとそのサービスを受けることができるということになります。是非、自分自身のためにも、安易な救急車使用は、避けていくように考えて行きたいものですね。

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