“異世界転生”アニメはなぜ増えた? 『ソードアート・オンライン』以降のWeb小説ブーム

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2017年02月19日 16:03  リアルサウンド

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(c)2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

 最近、“異世界転生(転移)もの”のアニメが人気だ。このところほぼ毎クール、異世界転生をテーマにした作品が放送されているのではないだろうか。今期では、日本人サラリーマンが異世界で金髪幼女に転生する『幼女戦記』、昨年放送された『この素晴らしい世界に祝福を!』や『Re:ゼロから始める異世界生活』なども記憶に新しい。実はこの3つのアニメ、異世界転生がテーマなだけでなく、Web小説が原作という共通項もある。近年、こうしたWeb小説原作の異世界転生アニメが急増しているのはなぜなのだろうか。


参考:『君の名は。』は映画市場をどう変えたか? GEM Partners梅津氏が読む、2016年の興行データ


 異世界転生Web小説ブームの発端となったのは、2002年から個人サイトで連載をスタートさせた『ソードアート・オンライン』(以下、SAO)だろう。素人投稿によるWeb小説の場合、人気作品はまずライトノベルなどで書籍出版され、その後コミカライズやアニメ展開されていくのが基本の流れだ。厳密にいえば“ゲーム転移もの”の『SAO』は、ネット上でじわじわと話題を呼んで2009年に書籍化、2012年にはアニメ化を経て、熱狂的なファンを獲得した。さらに『SAO』のヒット以降、その流れを汲んでか、ラノベ・アニメシーンでは異世界転生ものの作品が急増する。なかでも、アマチュア作家をメインとした小説投稿サイト「小説家になろう」からデビューする作品が目立つようになった。前述した『この素晴らしい世界に祝福を!』と『Re:ゼロから始める異世界生活』も、「小説家になろう」からヒットを遂げた作品だ。そして、こうした異世界転生Web小説が増加したのは、この「小説家になろう」内のシステムに由来すると考えられる。


 「小説家になろう」では、大きく「異世界」と「現実世界」の2ジャンルに作品がカテゴリ分けされている。読者人気が圧倒的に高いのは「異世界」ジャンルだが、その中でも特に「異世界転生・転移」ジャンルが強い。サイト内の人気ランキングを見ると、なんと上位10作品全てが異世界転生ものとなっている(2016年2月18日現在)。『SAO』のヒット以降、異世界転生ジャンルのファン需要が高まったのは確かだろう。後続する作品が増えていき、サイト内ランキングにも頻繁に異世界転生ものが登場するようになったのだ。すると、今度は「異世界転生をテーマに小説を書けば、サイト内で注目されやすくなる」と考える作家が増え、より一層このジャンル作品が量産されていった。母数が多ければ、良作が生まれる確率も高くなる。そうして、「小説家になろう」から見出された作品を中心に、ラノベ・アニメシーンで異世界転生ものが急増していったわけだ。その結果、“「小説家になろう」イコール異世界転生もの”という認識が生まれ、サイト内外を問わず、異世界転生を描いた作品は「なろう系」と呼ばれるまでに至った。


 なろう系には熱狂的なファンが多い反面、アンチの存在も目立つ。批判の声としてよく挙がるのは、「設定やストーリーがカブりがち」というものだ。なろう系に多いのは、「現実世界では冴えない男主人公が、異世界に転生して大活躍し(チート)、複数の女性に好意を抱かれる(ハーレム)」というストーリー展開だ。そのため、あまりに無双すぎる主人公を揶揄して、「俺TUEEE系」と呼ばれることもある。しかし、こうした批判は人気と表裏一体のものだ。ネガティブな意見がありつつも、本日公開の『SAO』劇場版を筆頭に、今後もしばらくなろう系ブームは続くことだろう。


 さらに、今期アニメ『幼女戦記』のように、異世界転生ものでありながら、なろう系の紋切り型から大きく外れた作品も出てくるようになった。多くのアマチュア作家たちがネット上で切り拓いてきた今日の異世界転生ジャンルは、今後もさらに切磋琢磨され、アニメシーンにも大きな影響を及ぼすだろう。(まにょ)


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  • ふと…SAOは異世界でも転生でもないよな…あえていうなら"電脳世界幽閉"だよね(-_-;)
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