ちばあきおの名作野球漫画『キャプテン』復活の意味

２月14日の聖バレンタインデー、我々野球漫画マニアのあいだで激震が走った。なんと！　1984年に41歳の若さで早世した漫画家・ちばあきお氏による不朽の名作『キャプテン』『プレイボール』が38年ぶりに復活し、“その後”を描く新連載が４月５日発売の『グランドジャンプ』９号（集英社）からスタートすることを同誌が発表したのだ!!　オリコンによって報じられた詳細は以下の通り。

 

作画を担当するのは『おれはキャプテン』『グラゼニ』（「森高夕次」名義）などで知られるコージィ城倉氏。ちばあきお作品を心底敬愛する城倉氏は「新機軸は打ち出しません。コンセプトは『何も足さない。何も引かない』。ちばあきお先生が生きていたらおそらくこんなカンジで描いたのではないだろうか…というテイストを“再現”してみたい」とその意気込みを語っている。

続編のあらすじは「高校３年生になった谷口、高校最後の夏の戦いが始まる。墨谷二中で彼の後を継いでキャプテンを務めた丸井。イガラシらとともに、甲子園を目指して猛特訓開始！」とまで明かされている。

 

ここまでの“速報”を読むかぎり、当新連載は『キャプテン』ではなく『プレイボール』の続編だと推測される。私はかつて（集英社と同じ一ツ橋グループが運営する）某ちゃんとした系コラムサイトで、『キャプテン』の続編、つまり「近藤キャプテン率いる夏編」を読みたくてたまらない……と、せつに書きちぎったことがあるのだが、もちろん『プレイボール』の「最後の夏編」もモチロン同様で、そのアピールが届いた……のかどうかは知らないが、いずれにせよ私のそんな“切なる想い”が私の生きているうちに実現するとは……!!!!!　　記事のコメント欄では、

 

「原作者が“その後”のエピソードを（漫画家を変えて）描くのは良いけど、全然違う作者が想定して描くのは如何かと思う」

 

「ちばさん以外のは読みたくないかな？」

 

「画風がだいぶ違う気がする」

 

……ほか、今回の“大英断的リメイク”に対しては否定的な意見も多く見られ（ざっとした見立てだと70％くらいか？）、その心情はその心情で痛いほど理解できる。が、私はやっぱ普通に我慢できない。もう、ひたすら「読みて〜！」なのだ。

 

エースは谷口？　それとも井口（江田中卒）？　イガラシのポジションは？　墨二中時代のように丸井はまた精鋭揃いの新一年生にポジションを奪われるのか？　私が個人的に好きなサブキャラ牧野と久保の外野争いは？　東実に入学した元青葉学院エース佐野のライバルとしての存在感は？　半田と鈴木の「いつの間にか学年が１年下になっちゃった問題」は果たして？──これら諸々の“つじつま合わせ”は、ときに「うやむやに流す」ことでサラッと処理されていたのが、ある意味ちばあきお作品の“真骨頂”であり、また、それが許されていたのが昭和50年代の漫画界における牧歌性であったわけだが、緻密さも求められる近代漫画の世界でその“ユルさ”は許されない。『キャプテン』（＝『プレイボール』）を公式なかたちで「足しもせず引きもせず」に受け継ぐコージィ城倉氏は、上記したほぼすべてを白日の下に晒さねばならない重圧をも背負わねばならないのである。凄まじいまでの大仕事ではないか！

 

あと、時代背景をどこに設定するかもデリケイトな問題だったりする。「今」にして、その40年近くのタイムラグを『ドカベン・プロ野球編』のように“無きもの”とするのか？　それともあくまで「あのころ」の“昔話”としてこだわり抜くのか……？　

 

私の主観を述べるなら、願わくば“後者”でいってもらいたい。そりゃあ、「うさぎ跳び」だとか「硬球での超前進ノック」だとか「練習中水を飲んじゃダメ」だとか……現在の高校野球ではあり得ない“非常識”だって、いくらかは立ちはだかるだろう。でも、『キャプテン』（＝『プレイボール』）に「金属バット」やら「球速○キロといったスピードガン表示」やら「動画撮影によるフォームチェック」やら「ツーシームやらカットボール」やらが出てきたら、なんとなくイヤじゃないですか。とくに、コレはコメント欄にもあったのだが、

 

「谷口や丸井、イガラシがスマホで連絡を取り合うことだけはありませんようにwww」

 

……という意見には猛然と同意する。仮に設定が「今」となるなら、せめて部室の壁の片隅に「スマホ禁止！」と毛筆タッチで書かれた貼り紙くらいは、さり気なく見切らせてほしいものだ。ちなみに、このコラムの“続編”は「連載が実際にスタートした４月後半くらいには必ず！」と、躊躇なく予告しておこう。