2017年F1は「ストレートではやや遅くなるが、コーナーはめちゃくちゃ速くなり、ラップタイムは3秒〜5秒短縮」する

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2017年02月23日 17:00  citrus

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“リアルの場”で2017年モデルを最初に披露したのはルノー

2017年のF1は3月26日に決勝レースが行われるオーストラリアGPで幕を開ける。突然走り始めるわけではなく、例年、事前に合同テストが行われる。今年は2月27日から3月2日までと、3月7日〜10日にスペイン・バルセロナで実施。そのテストが始まる前に、新車を披露するのがF1における例年のパターンだ。


資金難によってマノーが新シーズンを待たず消滅してしまったため、2017年は10チームがエントリー。先陣を切って2017年型マシンを公開したのは、F1参戦40周年を迎えたウイリアムズだったが、3Dレンダリングをインターネット上で公開したにすぎない。実車を最初に公開したのはザウバーだが、これもネット上で完結。現実の世界で「発表会」を行って実車を公開したのは、ルノーが最初だった。

 


ザウバーは新車「C36」を発表。ボディ、タイヤ、ウィングの調和がとれている

 

■ワイドボディに極太のタイヤがスピード感を演出


2月21日にロンドン市内のイベント会場で公開されたのは、2017年のF1シーズンに投入するR.S.17である。前日にザウバーの新車「C36」が公開された際にもうすうす感じてはいたのだが、幅の狭い15年型のマシンに17年から使用する幅広タイヤを装着したミュールカー(テスト車両)で感じた、木に竹を接いだような違和感がない。ワイドになったボディと幅広になったフロントウイングに低くなったリヤウイング、それに、幅広になったタイヤなどの調和がきちんととれている。


具体的な数字を追いかけていくと、車両の幅は2000mmになり、2016年までより200mmもワイドになった。フロントタイヤの幅は305mmで60mm増、リヤタイヤの幅は405mmで80mm増だ。リヤタイヤの幅などは、成人男性の肩幅と同じくらいだと言えば、その太さが想像できるだろうか。

 


向かって左半分が2016年モデル、右半分が2017年モデル。ボディが低くなり、タイヤが太くなったことが一目瞭然


そのファットな感じが、マシン全体のフォルムのなかに見事に溶け込んでいる。フロントウイングを上から見たときに、わずかにV字(ちょっと専門的に言うと「後退角が付いている」)になっているのは、ルノーが空力性能を高めたくてそうしたのではなく、レギュレーションでこういう形にしろと定めているからだ。リヤウイングが後ろに傾いているのも同じ理由である。スピード感を演出するためなのだが、どうだろう。


演出するまでもなく、2017年のF1は速くなる。理由は主に2つあり、1つはボディが全体的に大きくなって、発生するダウンフォースが大きくなること。2つめの理由は幅広になったタイヤで、グリップ力が増すからである。


ダウンフォースは、空気の圧力差を利用して車体を地面に押しつける力のことだ。前後のウイングでダウンフォースを発生するし、地面と車体の床面に挟まれた狭い空間を空気が素早く通り抜けることでもダウンフォースを発生する。前後のウイングもフロアも大型化したことによって、2016年に比べて30%ダウンフォースが増えると言われている。


以前より30%大きな力でタイヤを地面に押さえつけるので、タイヤはスリップしにくくなり、コーナーを以前よりも速く走れるようになる。タイヤの幅広化によってポテンシャルは高まっているので、その効果も上乗せするとさらに速くなる。「開幕の時点で2016年より3秒、シーズンが終わる頃には5秒速くなるはず」とザウバーの技術者は説明している。

 

 

■新しいマシンに備え、ドライバーは「首」を鍛えている!?


ラップタイムは短縮されるが、最高速は低くなる。タイヤも含めて車体のボリュームが増し、空気抵抗が増えるからだ。 2016年開幕戦オーストラリアGPの予選中の最高速は330.3km/hだった(フォース・インディア)。2017年型はどこまで落ちているのか、あるいは落とさずに済んでいるのかに注目したい。


ごく簡単に2017年型F1マシンのキャラクターをまとめると、ストレートではやや遅くなる一方、コーナーはめちゃくちゃ速くなり、ラップタイムは3秒から5秒速くなる。コーナーが速くなると何がつらいかというと、路面に踏みとどまるための力を受ける車体やエンジンもそうだが、遠心力に耐えなければならないドライバーがつらい。

 


ルノーの2017年仕様は740馬力以上。わずか4年で140馬力以上アップしている


彼らはオフシーズン中、例外なく首を鍛えている。遠心力に負けて頭が外に持って行かれないようにするためだ。フォース・インディアに移籍した若手ドライバーのエステバン・オコンは発表会場で太くなった首をアピールしていた。速くなったマシンはドライバーに負担増を強いる。ひょっとすると音を上げるドライバーが出てくるかもしれない……。


1.6L・V6直噴ターボを搭載するエンジンの規定に変更はない。が、着実に進化している。ルノーの発表によると、2014年の彼らのエンジンは600馬力を発生していたが、2017年仕様は740馬力以上を発生しているという。わずか4シーズンで、ファミリーカー1台分の馬力が上乗せされたようなものだ。


2017年型F1マシンはどれだけ魅力的な走りを見せてくれるのか。楽しみに待つことにしよう。
 

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