【中年名車図鑑】『ボレロ』の調べで現れた、80年代大ヒットの“FFスーパーボルテージ”

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2017年03月01日 17:01  citrus

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82年に登場した2代目プレリュード。ホンダ初のリトラクタブルヘッドライト、ワイド&ローなボディがスタイリッシュだった

前回紹介したトヨタ・ソアラと並んで、1980年代に“デートカー”として一世を風靡したのが、2代目ホンダ・プレリュード(1982〜1987年)だった。先駆モデルを象徴する“前奏曲”の車名を纏った第2世代のFF(フロントエンジン・フロントドライブ)スペシャルティカーは、その先進的なスタイルやメカニズムはもちろん、お洒落な広告展開でも話題を呼ぶ。では、総生産台数60万台以上の大ヒット作に発展した“FFスーパーボルテージ”の話で一席。

 

 

【Vol.5 2代目ホンダ・プレリュード】

ホンダ初の本格スペシャルティカーとして1978年11月にデビューした初代のSN型系プレリュードは、優れた足回りとシャープなコーナリング性能がファンや識者から高く評価された。しかし、日本での販売成績は思ったほど伸びず、生産の8割近くが輸出に回される。上級乗用車のアコードと一部基本コンポーネントを共用化していたために動力性能の面で精彩を欠いた、ルックスがやや地味だった、車格の割にボディが小さく室内空間も狭かった、などが不評の要因だった。

 


■ホンダ初のリトラクタブルにフルバケットシート


全面改良を企画するに当たり、本田技研工業の開発陣は従来型の欠点を徹底的に解消する方針を打ち出す。メカニズム面では当時の同社の最新技術を目一杯に盛り込んだ。エンジンは新設計のES型1829cc直列4気筒OHC12V・CVCCユニット(120〜125ps)を搭載。サスペンションは当時のFF車としては異例の前ダブルウィッシュボーン/コイルを採用する。制動性能を引き上げるために、ブレーキシステムには国産車初の4輪アンチロックブレーキも設定した。プラットフォームは2450mmのホイールベースを持つ2代目アコードをベースに専用チューニングを実施し、組み合わせるボディは従来型よりさらにワイド&ローを強調する。ホンダ初のリトラクタブル式ヘッドライトや極端に低いフロントノーズもデザイン部門がこだわった部分で、スタイリング全体からスペシャルティ感を醸し出すように演出した。インテリアもスペシャルティ感を重視。フルバケットシートや小径ステアリング、カラーフィルター式液晶デジタルメーターなどの新規アイテムを精力的に盛り込んだ。

 


小径ステアリング、フルバケットシートでスペシャルティ感を演出


1982年11月、2代目となるAB型系プレリュードが満を持してデビューする。キャッチフレーズは“FFスーパーボルテージ”。車種展開は豪華仕様のXX、スポーツ指向のXZ、ベーシックモデルのXCという3グレードを設定した。既存の国産車にはなかったエレガントなルックスに、ホンダ自慢のハイテクを組み込んだ第2世代のプレリュードは、たちまち市場の大注目を集める。ラヴェル作曲の『ボレロ』をBGMに使ったシックなCMも話題を呼んだ。結果的に2代目プレリュードは月販目標台数の2000台を大きく上回る受注を獲得し、納車数カ月待ちの状態が続くこととなった。

 

 

■ソアラに乗るか、プレリュードに乗るか?


2代目プレリュードは、自動車文化にも大きな影響をもたらした。いわゆる “デートカー”の流行である。当時は女子大生がブームで、彼女たちが好きなクルマとしてプレリュードとソアラ(1981年2月デビュー)が首位を競った。プレリュードのエレガントなルックスは、男女を問わずに高い人気を獲得したのだ。

 


2代目プレリュードのXXグレード。当時の国産車にはなかったエレガンスさで女性人気を集めた


好調な販売成績を維持し続ける2代目プレリュードは、1983年10月にXJグレードを追加し、1984年10月にはマイナーチェンジを行ってリアガーニッシュやシートなどの一部仕様を変更する。そして1985年6月になると、高性能モデルのBA1型「2.0Si」を発表した。 Siで最も注目を集めたのは、パワーバルジ付きの専用ボンネット下に収められる新エンジンだった。B20Aの型式を名乗る1958cc直列4気筒ユニットは、DOHC16Vのヘッド機構と4連サイアミーズクローズドデッキ構造のアルミ製シリンダーブロック、軽量高強度のコネクティングロッドなどをセット。燃料供給装置は電子燃料噴射システムのPGM-FIで、点火装置もやはり電子システムのPGM-IGを組み合わせた。さらに、エンジン制御機構には世界初のデュアル・8ビットデジタルコンピュータを採用する。結果的にB20A型は当時の2リッター自然吸気クラスのトップレベルとなる160ps/19.0kg・mのパワー&トルクを誇り、プレリュードのスペシャル度をいっそう引き上げた。

 

 

■3代目、4代目も斬新なテレビCMで話題に


2代目プレリュードで『ボレロ』をBGMに使ったCMが話題を呼んだことを紹介したが、2代目以外の歴代プレリュードも広告の演出は非常に凝っていた。


初代(1978年11月デビュー)は名F1ドライバーのジョン・サーティースをメインキャラクターに起用し、スポーティでシックな映像に仕上げる。3代目(1987年4月デビュー)は映画『地下室のメロディ』のテーマ曲を使い、上品な映画のプロモーション映像風に仕立てた。そして4代目(1991年9月デビュー)は不世出のF1ドライバーで、当時ワールドチャンピオンに君臨していた“セナ様”ことアイルトン・セナを起用。F1ファンのみならず、女性からも熱い支持を集めたのである。
 

【中年名車図鑑】

Vol.1 6代目 日産ブルーバード

Vol.2 初代ダイハツ・シャレード・デ・トマソ

Vol.3   4代目トヨタ・セリカ

Vol.4   初代トヨタ・ソアラ

 

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