DNAマーカーで無花粉遺伝子を検出
画像はリリースより
雄花はできても、花粉は飛散しない無花粉スギ。その無花粉遺伝子を高精度で検出できるDNAマーカーを、国立研究開発法人森林総合研究所と九州大学が開発しました。このDNAマーカーを活用することで、品種改良のスピードをこれまで以上に早めることが可能となり、花粉が飛ばないスギの開発が加速することが期待されます。
いまや“国民病”ともいわれる花粉症。現在は国民の3人に1人が発症しているとされ、社会問題化しています。同研究所では、林業分野におけるスギ花粉症対策のひとつとして、少花粉スギと無花粉スギの開発に取り組んでおり、これまでに花粉の少ない少花粉品種142品種、花粉の飛ばない無花粉品種3品種を開発しています。
しかし、これらの品種改良には最短でも4年近くかかるなど課題も多く、短期間で効率よく開発するために、DNAマーカーの開発が求められていました。そこで、同研究所林木育種センターの星比呂志育種部長と、同大学大学院農学研究院の渡辺敦史准教授が、無花粉スギ「爽春」の無花粉遺伝子を高精度で検出できるDNAマーカーを開発しました。
判定精度は100%
DNAマーカーとは、ある特定の形質に関与する遺伝子が存在することを示す目印として使われるDNA配列のこと。本研究では、スギの針葉や木部、雄花などから遺伝子の塩基配列情報を集めて、約7万のDNAマーカーを開発しました。これらのうち、ひとつのDNAマーカーが、爽春の無花粉遺伝子を検出できるマーカーであることがわかったのです。
爽春の無花粉という特性は、ひとつの遺伝子で決められています。この遺伝子で無花粉となるタイプをa、無花粉にはならない通常のタイプをAとすると、爽春は無花粉タイプのホモ接合(aa)。通常の個体はAAかAaになるのに対し、aaの組み合わせになるときにだけ、無花粉になります。そこで、あらかじめaaとわかっている42の無花粉個体についてDNAマーカーで塩基のタイプを分析したところ、42個体全てがTTタイプとなりました。一方、正常個体は全てTCまたはCCタイプとなり、このDNAマーカーを使うことで、100%の精度で無花粉遺伝子をもつスギかどうかを判定することに成功しました。
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同研究所では、爽春と成長が早い「精英樹」の交配より、成長にも優れた無花粉スギの開発に取り組んでいます。今後は、今回の成果を活用しながら、交配と選抜を繰り返して、無花粉スギの性能をさらに高めたいとしています。(菊地 香織)
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