太ると血糖値が高くなる“仕組み”を解明

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2017年03月13日 12:02  QLife(キューライフ)

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インスリンの働きが低下


画像はリリースより

 食生活の欧米化に伴って、日本でも社会問題になっている肥満。肥満による病気の代表例でもある糖尿病は、太り過ぎが原因で血糖値をコントロールするインスリンの働きが悪くなるため発病します。このように、インスリンの働きが悪くなる「インスリン抵抗性」は糖尿病のみならず、メタボリックシンドロームの基盤病態としても重要視されています。

 インスリン抵抗性とは、白血球の一種「マクロファージ」が肥満状態の脂肪組織に入り込み、炎症を起こすことで誘導されます。マクロファージには、炎症を強める性質を持つ「M1型」と抑える性質を持つ「M2型」がありますが、通常の脂肪組織はほとんどがM2型で炎症も抑えられています。しかし、肥満になるとM1型が増加して炎症を引き起こし、インスリン抵抗性の原因になると考えられています。

 東北大学大学院医学系研究科の片桐秀樹教授を中心とする研究グループは、岩手医科大学、徳島大学との共同研究により、「肥満→インスリン抵抗性→糖尿病」とつながる仕組みを明らかにし、これに関わる脂肪組織内での分子メカニズムを解明したと発表しました。

鍵を握るタンパク質「CHOP」

 研究グループは、肥満した脂肪細胞では「CHOP」と呼ばれるタンパク質が増えることを発見。CHOPは、細胞内でタンパク質が過剰に合成されて細胞がストレス状態にある時に劇的に増えますが、肥満状態の細胞でも増加しています。

 CHOPを欠損したマウスでは、肥満してもマクロファージは増えるものの、M2型が多いままで、インスリン抵抗性や糖尿病になりにくいことがわかりました。さらに、痩せた状態の脂肪細胞はマクロファージをM2型に誘導する物質「Th2サイトカイン」を分泌していますが、肥満した脂肪細胞では産生・分泌が減少することを見出しました。実際に、培養した脂肪細胞に小胞体ストレスをかけると、CHOPが増加することでTh2サイトカインの産生が激減することを証明しました。

 ここから、肥満→脂肪細胞の小胞体ストレス→CHOPの増加→Th2サイトカインの減少→M1マクロファージの増加→脂肪組織の慢性的な炎症→インスリン抵抗性→糖尿病、とつながる一連の仕組みが明らかとなり、関与する脂肪組織内での分子メカニズムが解明されました。成果を受けて、研究グループでは「糖尿病・メタボリックシンドロームに対する統合的な治療標的になるものとして大いに期待される」としています。(菊地 香織)

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