WBCをネタにして原稿を書くことがむしろ賞賛されるここ数週間の世間的な風潮は、私のような野球好きのコラムニストからすれば、まさに水を得た魚状態であるのだが、この“ゴールデンウィーク”をまだしばらくは満喫できるのか、それともサッと波が一気に引いてしまうのかは、3月22日の午前中に行われる準決勝「日本×米国戦」の勝敗にかかっている。
負ければ当然のこと、(少なくとも)私ら文筆業者の“WBC特需”は、その日で「ジ・エンド」だし、勝てば仮に決勝で負けたとしても今週中くらいは、まあ「ギリセー」なのではなかろうか? 理想を言えば1ヵ月でも2ヵ月でも1年中でも、ず〜っとWBCについてだけ書き続けていたい私としては、とにかくまずは、小久保監督も「一番難しい」と鬼門扱いする準決勝の勝利を心から願っている。
で、そんな「WBC絡みなら、なにを書いても許された」とくに先週、ドサクサにまぎれてとんでもなくニッチなニュースを一面に持ってきたのが、やはり東スポである。タイトルはコレ。
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「侍4強舞台裏
窃盗被害告白
米スカウト
千賀で騒然」
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さっぱり意味がわからない。つまり、意味がわかりたけりゃ買って読むしかないのである。
2次ラウンド。侍ジャパンがイスラエル戦(東京ドーム)で8-3と快勝し、決勝トーナメント進出を決めた3月18日、メジャー球団のスカウトたちを騒然とさせたのは、この日先発の千賀滉大(24=ソフトバンク)だった。
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……のはわかる。が、「窃盗被害告白」ってえのはいったい……!? タネを明かせば、かつて日ハムや楽天で活躍した元助っ人外国人で、現在は米大リーグ・カブスの国際スカウトを務めるフェルナンド・セギノール氏(42)が、なんと“仕事”のために来日している最中、財布や観戦チケット入りのバッグ(パスポートはホテルに置いてあったので無事)やジャケットを盗まれたというのだ。
事件が起きたのは、3月8日のWBCの一次ラウンド「日本×オーストラリア戦」の試合前、打撃練習中のこと。詳細を語るセギノール氏への一問一答は以下のとおり。
──これ(財布やチケット類が盗まれたこと)は事実なのか?
セギノール氏 (驚いた様子で)なぜそのことを知っている!? その話はあまりしたくないんだ…。
──ということは事実なのか
セギノール氏 そうなんだ。実は試合前、バックネット裏の自分の席に荷物を置いたまま、最前列まで行って日本の選手の打撃練習を見守っていたんだ。(中略)日本は安全な国なので、荷物を置いておいても大丈夫かな、と思っていたんだけど…。もっと注意すべきだったよ。
(中略)──現金も盗まれたようだが
セギノール氏 金額はあまり言いたくないが…まあ数万円ぐらいかな。日本円を含め、ドル札なんだよ。今頃盗んだヤツが飲み代に使っているかもしれない。そう考えると…悔しいよ。
(中略)──最後に犯人に一言あれば
セギノール氏 犯人は誰なのかわからないので。今後は仕事に集中しすぎないよう…気をつけるよ。
「千賀をはじめとする今年の侍ジャパン戦士は、財布を盗まれてしまうくらい目が離せない逸材揃い!」といった主旨なんだろうか? もはや、こじつけ以外の何物でもない凄まじいオチだが、こういう本来なら毒にもクスリにもならない一件が、まがいなりにもこうやってスポットライトを浴びるのも、またWBC特需の醍醐味なのかもしれない。