”古きも新しきも受け入れる煎餅店の八代目

0

2017年03月22日 00:05  オズモール

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

オズモール

写真
◆銀座物語03


昔からあるものも新しいものも、常に“いいもの”が集まってくる銀座。そんな地に根差しながらも、新しい風を取り入れる老舗店がある。今回は、銀座四丁目からすずらん通りに移転した「松崎煎餅 本店」の八代目・松崎宗平さんの銀座物語



◆“目の前の人を喜ばせたい”古きも新しきも受け入れる老舗煎餅店/「松崎煎餅」八代目・松崎宗平さん








新しいことに挑戦する意志を受け継いで
銀座の街を歩けば、レストランにカフェ、お菓子店など、長い歴史とともに愛される老舗店がズラリ。ここ「松崎煎餅 本店」もまた、200年あまり続くれっきとした老舗だ。1804年に芝で創業し、1865年に銀座4丁目に移転。そしてこの4丁目の閉店に伴って、2016年にオープンしたすずらん通りのフラグシップショップ「松崎煎餅」が、今年2月に本店の名を受け継いだ。





どっしりとした老舗店の門構えとは違って、まるでモダンなカフェのような雰囲気のこちら。地下1階に看板商品の瓦煎餅「三味胴」の専門フロアを設けるなど新しい取り組みを行っている。

仕掛け人は、八代目・松崎宗平さんだ。「今となっては、銀座に店を持つことがステータスだったり、ゴールだったりするかもしれませんが、戦後間もないころの銀座は、日本中から新しい人が入って来て新しいことを始めたチャレンジの街だったのじゃないかって聞いて。松崎煎餅が銀座にきた150年以上前は、この移転が栄転だったかもわからない。むしろチャレンジだったんじゃないかって思っています。こういった新しいことに挑んでいく精神は失いたくないんです」







150年も銀座で商いを続けてきた街に恩返しとしたいとも松崎さんはいう。「大きな企業と違って僕らは小さな商店なので、できることはそんなに多くはないかもしれません。だからこそ“ものを売る”以外のことも一緒に届けていきたい。それは、スタッフとのコミュニケーションだったり、Nakamura Nazukiをはじめとした作家さんとコラボしたアクセサリーだったり。お店で何かひとつでも新しい発見をしてもらえたら、銀座をもっと好きになってもらえるような気がして」






真心を込めた1枚が誰かの笑顔に
「松崎煎餅」に代々伝わる信念がある。“1枚1枚心を込めて手を抜くな”という言葉だ。ところがこの本当の意味を理解したのは、ごくごく最近のことだそう。

「いつも祖母から『どこまでいっても町の煎餅屋は町の煎餅屋でしかない』って言われていたのですけど、正直、この意味がずっとわからなくて。元々、ITのベンチャー企業にいたこともあって、代々続いたというブランド力もあるし、当初はもっと会社を大きくしてやろうと考えていました。だけど、2016年に“原点回帰”“地域密着”をテーマにしたコンセプトストアを松陰神社前にオープンして、料理にしてもコーヒー1杯にしても、どれひとつとして手を抜けないと思ったのです。もし手を抜いてしまったら、商いをする僕自身が楽しくなくなっちゃうし、それはお客さんにも伝わってしまうから。地域に根付きたいのに、目の前の人を喜ばせられなかったら商いをする意味がない。これは銀座で店をやるにしても同じことなんですよね」







ひとつとして手をぬかない信念を改めて確認した松崎さん。その思いを受け継ぐ瓦煎餅「三味胴(しゃみどう)」は、小麦や卵、砂糖などシンプルな素材を使っているから、どこか温かくて懐かしい味わいだ。職人の手作業によって描かれ、夏は花火、春は桜といった季節を感じられる絵柄が月替わりで登場するのも魅力のひとつ。







「焼く工程も機械といえば機械ですけど、道具といえば道具なんですよ(笑)。一般的な機械のイメージは、煎餅のタネが自動で充填→焼き上げ→ビニールに梱包だと思いますが、僕らの場合、焼き加減は人がチェックするし、自動の工程のものはごくわずか。機械生産にしようと思えばできるけど、手描きじゃないと1枚1枚の表情の違いや、色を乗せた時の立体感も出せない。さらにこの方法じゃないと、これまで受け継いできたやさしい味とサクッとした食感が出せないのです」

新しいものを取り入れながらも、代々受け継ぐ味を守り続ける老舗店。最先端のケーキやチョコレート、羊羹もいいけれど、いっそう間口が広がり入りやすくなった本店で脈々と受け継がれてきた、とっておきの1品を手に取りたい。




株式会社 松崎商店 代表取締役副社長
松崎煎餅 八代目松崎宗平さん

グラフィックデザインやWEBデザイン、WBディレクションを行うIT企業を経て、2007年に株式会社 松崎商店に入社。2016年に松陰神社前でオープンしたカフェ併設のコンセプトストアや、すずらん通りのフラグシップショップの立ち上げに携わる。



SHOP DATA__松崎煎餅 本店
1804年に芝で創業し、1865年より銀座に店を構える老舗煎餅店。2016年10月にすずらん通りにオープンしたフラグシップショップは、今年2月から本店として稼働開始。看板商品の瓦煎餅「三味胴(1枚130円〜)」は、小麦を使ったやさしい味わい。職人が1枚1枚丁寧に描く絵付けは、月替わりのものもあるから訪れる度に楽しみがいっぱい。

TEL:03-6264-6703
住所:東京都中央区銀座5-6-9 銀座F・Sビル
営業時間:11:00〜20:00
定休日:なし
アクセス: 東京メトロ銀座線ほか「銀座駅」A2出口より徒歩2分




PHOTO/NORIKO YONEYAMA WRITING/MAKI FUNABASHI


    ニュース設定