「スイッチ」で任天堂はよみがえるか

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2017年03月24日 10:52  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<約4年半ぶりに新型機「ニンテンドースイッチ」を発売した任天堂。Wiiがかけたゲームの魔法を復活させられるか>


マリオやドンキーコングはパワーアップして、セガがたどった破滅の道から任天堂を救うことができるのか?


任天堂は3月初めに世界同時発売した「ニンテンドースイッチ」に社運を懸けている。WiiU以来、約4年半ぶりに発売する据え置き型ゲーム機だ。


熾烈な競争が繰り広げられる世界のゲーム市場で、任天堂はゲームオーバー寸前だった。01年発売のゲームキューブの人気は散々で、多くの専門家が「任天堂はもう終わり」と書き立てた。06年に発売したWiiは体を使って遊ぶスタイルでゲームに革命を起こしたものの、12年発売のWiiUでは有名キャラクターのゲームソフトを投入せず、任天堂は再び瀕死の状態に。


それが今、ニンテンドースイッチで「リセット・ボタン」を押している。この新型ゲーム機はテレビに接続する「TVモード」、持ち運べる「携帯モード」、スタンドを使う「テーブルモード」の切り替え(スイッチ)ができ、価格は300ドル(2万9980円)。一度の充電で3〜6時間持つ。


目玉はコントローラーの「ジョイコン」。本体の左右から取り外せば、2人で遊ぶことができる。対戦格闘ゲーム「ARMS」の場合は左右の手に持ち、画面の中のキャラクターの腕の動きをコントロールする。


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カギとなる開発者の支持


28種類のゲームを収録するソフト「ワン・ツー・スイッチ」でも、コントローラーは独創的に使われる。このソフトが面白いのは、ビデオゲームからビデオをなくしたこと。例えば「ピンポン」では2人のプレーヤーが見えない卓球台を挟んで対戦。リアルな触感を再現する「HD振動」と音によって、見えない球が行き来するのを感じる。


任天堂オブ・アメリカのレジナルド・フィサメCOOは説明する。「動きを指示するためにテレビ画面が『あなたに話し掛け』、得点を記録し、誰が勝ったかを知らせる。誰が勝ちそうかといった画面の表示内容が見えるのはプレーをしていない人だけ。見学している人もゲームに参加している感覚が増えた。つまり一緒に遊ぶという点で、新しいゲームの在り方だ」


スイッチの初回出荷台数は全世界で200万台。滑り出しは好調だ。ターゲットは多くのゲームオタクたちだが、家族同士で遊び、年配のゲーマーも楽しめるように「いっしょにチョキッとスニッパーズ」のようなソフトも用意した。「スニッパーズ」は「スニップ」と「クリップ」というキャラクターを操作して、パズルを解いていくもの。最大4人まで一緒に遊べる。


ようやく任天堂が、ゲーム製作者たちをもう一度わくわくさせてくれたようだ。スイッチ向けには、60社以上のゲーム販売会社や開発会社が100種類以上のゲームを製作中。任天堂と初めて仕事をする会社もある。


スイッチは柔軟性があるので、ゲーム製作者は室内で遊ぶスタイルと携帯して遊ぶスタイルの両方を検討できる、とゲーム開発・販売会社のアクティビジョン・パブリッシングのジョシュ・タウブ上級副社長は言う。「子供たちは家でも、車の後部座席や飛行機の中でも同じように素晴らしい体験ができる」


開発者に支持されるかどうかは、任天堂にとって決定的に重要だ。Wiiの1億台以上のヒットで他社を圧倒したものの、後継機のWiiUは約1350万台と苦戦(現在は生産終了)。


WiiUには数々の失敗があった。Wiiより高価で、ソニーのプレイステーション(PS)やマイクロソフトのXboxOneにグラフィックで劣った。独自性にこだわるあまりゲーム開発会社から敬遠され、発売当初から魅力的なソフトがないという問題に悩まされた。


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かつてないゲーム人口


世界最大のゲームソフト販売店であるゲームストップでは、スイッチの先行予約がWiiUのそれを上回った。「多くの顧客が複数のソフトを注文した。特に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が人気だ」と、販売担当シニアディレクターのエリック・ブライトは言う。


任天堂は89年のゲームボーイ発売以降、ハードとソフトの相乗効果で携帯ゲーム機市場を支配してきた。ニンテンドー2DSや3DS向けの「ポケットモンスター サン」「ポケットモンスター ムーン」といったゲームはベストセラーとなり、こうしたソフトのおかげで3DSは昨年9月時点で累計6100万台以上が売れている。


スマートフォンやタブレット市場には手を出さずにいたが、昨年ついにDeNAと提携して人気キャラクターのモバイルゲームに乗り出した。その1つである「スーパーマリオ ラン」(アップル版)は9000万ダウンロードを達成。アンドロイド版は今月末に配信予定だ。話題となったポケモンGOも120億円以上の利益に寄与した。


スイッチがおもちゃ業界でこの春一番の注目株であることは間違いない。かつてWiiがかけた「世代を超えるゲームの魔法」がよみがえることを任天堂も期待している。Wiiが発売された06年から、多くのことが変わった。あらゆる機器で気軽に、無料のゲームを楽しめる今、かつてないほどゲーム人口は増えている。


任天堂にはさまざまな人気キャラクターがいる。彼らはみんなスイッチで新しい冒険に飛び出そうとしている。



[2017.3.21号掲載]


ジョン・ガウディオシ


このニュースに関するつぶやき

  • はいはい、まさに『任天堂に潰れて欲しいと願うクソメディア』の記事だな。WiiUは国内で百万本以上売ったソフトが複数あり、しっかり黒字になったハードなんだよ。瀕死なのは山ほど債務を抱えたSIEの方です。
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