【今週の大人センテンス】アメリカ戦でWBC日本代表が教えてくれたこと

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2017年03月25日 23:01  citrus

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写真:田村翔 / アフロスポーツ

 

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

 

第51回 悔しさを乗り越えての感動コメント5選

 

「君たちのプレーにどれだけの人が心を打たれたか。負けの責任は全て俺が取る。胸を張って日本に帰ってくれ」by小久保裕紀(日本代表監督)

 

 

【センテンスの生い立ち】

 

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、侍ジャパンこと日本代表は、1次、2次ラウンドを全勝で勝ち抜いて決勝ラウンドに進出。しかし、21日(日本時間22日)に行なわれた準決勝でアメリカ代表に1−2で敗れ、残念ながら決勝進出を逃した。この大会に向けて、2013年10月に監督に就任した小久保監督は、試合後に退任の意向を発表。結果は残念だったが、試合後、出場した選手らから印象的な言葉がたくさん飛び出した。

 

【3つの大人ポイント】

・選手をねぎらい、責任は自分が取ると明言している

・どの選手も得たものを噛みしめて前を向いている

・負けはけっして「マイナス」ではないと示している

 

 

勝ち進んで優勝してくれたらもちろん嬉しいですが、負けてもたくさんの感動を与えてもらえるのが、スポーツのいいところ。応援しているチームも自分の人生も、勝つことだけを目的にすると薄っぺらいものになります。むしろ、負けることにこそ醍醐味や味わい深さがあると言えるでしょう。そもそも、勝ちより負けのほうが多いのが常。負けからたくさんのことを得てしまうのが、大人の力量であり人生を充実させる必須条件です。

 

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表は準決勝でアメリカに惜しくも敗退。しかし、この半月ほど、野球ファンだけでなく日本中を大いに盛り上げてくれました。負けたあとも、選手や小久保監督のがんばりを称え、感謝する声こそあれ、優勝できなかったことを責める声は聞こえてきません。

 

準決勝では、ふたつのエラーが試合の結果に大きな影響を与えました。ひと昔前なら、エラーをした選手が理不尽なバッシングを受けていたかもしれません。ミスがあるのは仕方ないし、それも含めてのチームプレーなので責めるのは筋違いです。的外れで感情的な非難が聞こえてこないのは、日本の社会がそれなりにいい方向に成熟している証と言えるでしょう。そこは「昔はよかった」ではなく、今の自分たちに誇りを持ってもよさそうです。

 

アメリカ戦のあと侍ジャパンのメンバーから、負けたからこそ……というと語弊がありますが、優勝に届かなかった悔しさとやり切った満足感が伺える「大人センテンス」がたくさん発せられました。その中から5つを選んでご紹介しましょう。

 

「君たちのプレーにどれだけの人が心を打たれたか。負けの責任は全て俺が取る。胸を張って日本に帰ってくれ」by小久保裕紀(3月23日付「スポーツ報知」より)

 

まずは小久保監督。試合後のミーティングで、いっしょに戦ってきた選手たちをこうねぎらいました。この言葉の前に「右も左も分からない俺が侍ジャパンの監督になって、侍のユニホームに袖を通してくれてありがとう」と、感謝の気持ちも伝えています。この言葉によって、負けて落ち込んでいる選手たちがどれだけ救われたことか。

 

勝ったら選手の手柄、負けたら自分の責任――。監督というのは、なかなかつらい宿命を背負っています。野球の監督だけでなく、上に立つ人は同じ覚悟が必要ですが、実際は手柄は自分、責任は部下というスタンスの人も少なくありません。結果に関わらず、部下に「胸を張れ」と言える。そんな上司や、そう言ってもらえる部下を目指したいものです。

 

「支えようと思っていたけど、支えられていたのは自分だったかもしれない。本当にいいチームだったと思うし、参加してよかったと思う」by青木宣親(3月23日付「スポーツニッポン」より)

 

メジャーリーガーとして唯一の参加だった青木宣親選手(ヒューストン・アストロズ)。成績はいまひとつ振るいませんでしたが、決起集会を主催するなどチームの兄貴分として大きな役割を果たしました。「支えられていたのは自分だったかもしれない」というセリフには、試合以外の部分も含めた「チームワーク」の意味や素晴らしさが凝縮されていると言えるでしょう。どんな立場、どんな状況でも、自分が周囲に何を与えてもらっているかを考えることは、とても大切です。

 

「足りない部分、新しい発見、感覚。大会を通じて新たに成長できるチャンスをいただいた。国を背負って戦うことは見ている方や子供たちに夢、生きる活力を与えること」by筒香嘉智(3月23日付「スポーツニッポン」より)

 

主砲として3本塁打8打点の活躍をした筒香嘉智選手(横浜DeNAベイスターズ)。他紙では「少しでも子どもたちが野球に興味を持ってくれたら」ともコメントしています。実際に出場して戦った選手にとっては、負けたことも含めて、こんな貴重な経験はありません。そして見ている私たちは、全力で戦う姿から「夢、生きる活力」を与えてもらい、負けて立ち上がる姿からもたくさんのことを教えてもらいました。

 

「監督は選手のことを第一に考えてやってくれた。こういう結果で申し訳ない」by中田翔(3月23日付「日刊スポーツ」より)

 

筒香と同じく、3本塁打8打点という好成績を残した中田翔(北海道日本ハムファイターズ)。アメリカ戦の前にも、選手を細かく気づかう小久保監督への尊敬の気持ちを口にしていました。監督は選手を思い、選手もまた監督を思う。相手のアラ探しをして不平不満を言うことに精を出すのではなく、まずは信頼や敬意をベースに接したいもの。それが、結果に関わらず「やり切った」という気持ちを抱くための必須条件と言えるでしょう。

 

「今の悔しい気持ちを忘れず、現状に満足せずに成長していきたい。泥くさく、必死に頑張っていきたい」by小林誠司(3月23日付「日刊スポーツ」より)

 

捕手として投手の持ち味を引き出し、打撃でもチーム最高打率だった小林誠司選手(読売ジャイアンツ)。「ラッキーボーイ」という聞きようによっては失礼な言い方をされましたが、「自分のことはどうでもいい。勝てばいいので」と言い続けてきました。この大会で評価を急上昇させたことに浮かれず、負けた悔しさを噛みしめ、謙虚に決意を語っています。「泥くさく」と言っているところが、とくにアッパレ。シーズンでの活躍も楽しみです。

 

この5つ以外でも、心に残る発言がたくさんありました。こうした発言を「いい子ぶってる」「きれいごとだ」と冷笑するのは簡単です。しかし誰にとっても、残念な結果に終わったときに、力を振り絞って前向きな言葉を口にするのは、結果を受け止めて糧とするための第一歩。そして日本代表という立場にある彼らにとっては、顔を上げて力強く前に進む姿勢を見せることが、応援に対する何よりのお礼であり、見られる側としての責任でもあります。そういうところにも敬意を表しつつ、あらためて大きな拍手を送りましょう。

 

【今週の大人の教訓】

負けても勝っても、結果を糧にできるかどうかが本当の勝負

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  • 個人的には、もう掘り返さないでほしい。だいたいこの記事ってなに?現国の授業か道徳の授業か?
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