都心のニトリと郊外のニトリ、違いはあるの? 広報さんに聞いてみた

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2017年03月28日 04:04  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
●ニトリはなぜ"都会っ子"になったのか?
家具も雑貨も日用品も、生活に必要な物は大体なんでもそろってしまう店、ニトリ。しかも価格も手頃という庶民の味方だ。

○ニトリが都会っ子になった気がする

そんなニトリ、なんだか最近都会っ子になっていないか?

かつてニトリといえば、郊外の国道沿いに大型店舗があって、布団カバーを新調しに訪れたのに買う予定のなかったコップとかカラーボックスとかをついつい買ってしまい車のトランクが埋め尽くされるという、IKEAやコストコに似た買い物スタイルの店だった気がする。

しかし、2016年9月16日には中目黒にニトリの路面店がオープン。同年12月1日(筆者の誕生日だ)には新宿タカシマヤタイムズスクエア(以下、タイムズスクエア)に出店し、2017年の6月には渋谷の公園通りにも大型店舗がオープンする予定だという。急に垢抜けた。どうしたんだ、ニトリ。好きな子でもできたのだろうか。

近ごろ急に増えてきた都心の店舗と、グッドオールドな郊外の大型店舗。客層や売っている商品、そもそもの運営方針に違いはあるのだろうか。そんな疑問をニトリホールディングスの広報さんにぶつけてみた。

○通販利用の4割が東京からだった

――ニトリ、最近急に都会っ子になっていますが、何があったのでしょうか
ニトリの通販で商品を買ってくださるお客さまの統計を取ったところ、約4割が東京都のお客さまだったんです。その結果を受けて、まだ私たちは都心部のお客さまに商品のアピールをする余地があるんだね、と。それで、都心部にもどんどんお店を増やしているところです。

――なるほど。手応えはどうでしょうか
実は出店を開始した当初は、都心部のお店は"売れるお店"じゃなくてもいいと思っていたんです。ブランディング戦略の1つとして、「ニトリってこんなにオシャレになったんだ」というイメージを広められればいいなと。

しかし、実際には目標の2倍の売り上げ実績が出る店舗もあって、「ニトリはこんなに都心のお客さまに求められていたんだ」と。逆に、「今まで出していたお店はそれほど遠い存在だったんだな」ということにも気付かされるいい機会になりました。

例えば、マロニエゲート銀座の店舗は、3月15日に2フロア営業の店舗にリニューアルしたのですが、元々はワンフロアの限られたスペースでの出店だったんです。しかし、売り上げが非常に好調だったので、「売り場面積を2倍にしよう」と増床を実施しました。

こんな風に、結果が出れば売り場面積もどんどん増やしていきたいですね。

――いつか、銀座の真ん中にでっかいニトリビルができるかもしれないわけですね
そんな日が来たら楽しいですね(笑)。

○都心は日用品少なめ&中価格帯

――やっぱり、都心の店舗は郊外の店舗より小さめになりますよね
そうですね。賃料も高いので、広いスペースに最初から大型店舗をドンと出す、という戦略は考えていません。ただ、マロニエゲート銀座の店舗のように、どんどん大きくなっていくケースはあり得ます。

それから、都心部はいわゆる"居抜き"の出店が多いので、やや手狭な店舗が多くなるという事情もありますね。

――必然的に、商品点数も都心では絞らざるを得なくなると思います。ラインアップはどのように変えているのでしょうか
大型店舗では、日用品から装飾品まで約1万〜1万2,000点のアイテムを置いています。対して都心の店舗では、日用品を少し減らして装飾品を多めのラインアップにしています。また、価格帯も"低価格路線"というよりは当社基準での"中価格帯"の商品を増やしています。

――日用品というと、調理器具とかですか
いえ、調理器具は割とどのお店にも置いています。ニトリのお客さまは女性が多いんですけど、女性の需要がキッチン用品は特に高いんです。

日用品というのは、例えば洗濯ハンガーのような商品ですね。一例では、郊外の店舗では20種類くらいあるものを、都心の店舗では半分の10種類程度に絞っています。

――なるほど。実際、日用品よりも装飾品の方がよく売れるのですか
それが、点数を削ってはいるんですが、中目黒店でも意外に洗濯用品などが売れるんです! 日用品を買える店がこの辺には少なかったんだ、という気づきになりました。

商品ラインアップを変えているのは、先程も言ったようにイメージ戦略の側面が強いです。内装やレイアウトも都心の店舗は全然違うんですよ。

○内装が全然違う!?

――どのように違うのでしょうか
まず郊外の大型店舗ですが、床がアイボリーのタイルで、ライトは蛍光灯の白い明かりですよね。

――ホームセンターみたいな雰囲気ですね
で、これが新宿タカシマヤタイムズスクエア店の写真です。床の材質はウッド調で、壁も一部をタイルに。天井のライトもダウンライトにして、よりオシャレに見える店舗にしています。

――ほんとだ! 全然違う
他にも大きく変わっているんですが、気づきますか? 私は初めて見た時「おー」と思ったんですけど。

――さっぱりわかりません
陳列棚の上に置いている在庫を一掃してるんです。ほら、大型店では棚の上に商品が積まれてますけど、都心の店舗ではスッキリしているでしょう。

――ほんとだ!!
ただこれだけのことで、お店の奥行きを見渡せて開放感も出て、オシャレに見えるんです。お客さまの中には、大型店特有のあの陳列が好きだという方もいらっしゃるんですが……。都心ではオシャレさをアップさせるために削りました。

――オシャレは引き算ですもんね!
足している部分もありますよ。都心の店舗では、商品のプレゼンテーションを増やしています。

――プレゼンテーションとは?
お店の壁や天井を使って、商品のオシャレな使用例を飾っているんです。棚の高さを低くしたことで空間を多く活用できるようになったので、お客さまが見て楽しめるような仕掛けを作るようにしています。

――比べてみると、本当に大きく違いますね
そうですね。私達も初めて見たときはビックリしました。社員がビックリするくらい違うんです(笑)。お客さまからもそういったお声をいただいて嬉しく思っています。

●都心出店で見えてきたニトリの強み
○ニトリに女子高生がきた!

――客層に違いはありますか?
郊外の店舗は20代後半〜50代くらいのお客さまが多いですね。都心の場合は、お店にもよるんですが、郊外ではあまり見られない10代のお客さまもいらっしゃるのが印象的でした。ニトリで制服を着た女子高生を見る日がくるとは思わなかったです(笑)。

都心の店舗の設計思想として、「車がない人でも行きやすい店」という考え方があるんです。たとえば、郊外の店舗には息子夫婦の買い物のついでに連れて行ってもらっていたようなご年配の方が、病院の帰りにふらっと立ち寄れるとか。まだ免許を持っていない10代のお客さまも、学校の帰りに立ち寄れるような店ですね。そうやって、お客さまがニトリに近づいてくださるのではなく、ニトリがお客さまに近づいていきたいなと。

○競合店はむしろウェルカム

――都心の場合は競合店も多くなりそうですが、その辺はいかがでしょう
中目黒なんか、オシャレな家具屋さんが多いですよね。ただ、価格帯がニトリとは全然違うんですよ。職人さんが手作りされたデザイナー家具なんかを扱っているお店が中目黒では多いんですけど。うちはそういうのじゃないので(笑)。

――新宿のタイムズスクエアでも、すぐ隣に日用雑貨や家具を扱う大型店舗がありますよね
そうですね。ただ、私たちとしては、近くにたくさんお店があっても、お客さまからしたら両方回れて悩めるから便利だよね、という考え方をしています。いろんなお店を回って買い物をしたい人が集まってくることで、結果的にニトリの商品が売れれば問題ないよね、と。

――なるほど。商品に自信があるからこその考え方のように思えます
そうですね。負ける気はありません(笑)。

○「価格」も「品質」も強み

――ニトリの商品の強みはなんでしょうか?
以前は「価格」でした。今も変わらず強みではありますが、最近は少し高めの価格の商品も増えています。

――ということは、品質も強みになりつつある?
はい。品質も自信をもって打ち出しています。経済産業省が行っている「製品安全対策優良企業表彰」という表彰があるんですが、ニトリは流通小売業として初めて「経済産業大臣賞」という最上位の賞を頂いたんです。

――すごい。具体的にはどんな安全対策を施しているのですか
新商品を売り出すにあたって、まず商品のサンプルが社内で上がってきます。そのサンプルを、一度完全にバラバラに分解するんです。「全バラ検証」っていうんですけど。

――全バラ検証!
パーツの空洞などを1つひとつ確かめて、製品の脆い部分を見つけ出すんです。それと並行して、「意地悪テスト」も行います。

――さっきからネーミングが秀逸ですね
「意地悪テスト」では、「お客さまがこんな使い方をしてしまうかもしれない」という仮定のもと、思いもよらないような負荷をかけて耐久性を確かめるんです。パーツを逆側に曲げてみたりとか。

それらの検証の後に、耐久検査を行います。例えば、ソファは10万回座っても大丈夫かを確かめるために、機械を使って人間が座る負荷を10万回かけています。

――経済産業大臣賞も納得の検査ですね
ありがとうございます。受賞を示すカードもありますよ! 社内には横断幕もありますが……、撮りますか?

――それは大丈夫です

○目標は「2022年までに1,000店舗」

――最後に、今後についてお聞きできればと思います。これからも都心店舗をどんどん増やしていくのでしょうか
そうですね。……でも、お店としては都心にも大体出店できてきたかな、という感じです。山手線の内側に限定するとまだちょっと少ないんですけどね。

全体的な話で言うと、今は国内外に約470店舗を展開しているんですが、2022年までに1,000店舗の出店を目指しています。

――1,000店舗ですか! どこに住んでいても"最寄りのニトリ"がある時代になりそうですね
そうなるように、私たちもがんばります。

――ありがとうございました

ニトリの"都会っ子"化は筆者の気のせいではなく、品質が高くオシャレな商品も増えたニトリによるイメージ戦略だった。都心店舗では限られたスペースを有効に活用しつつ、商品の比率を変えてオシャレな雰囲気を演出しているのだ。

当初は売り上げを重要視していなかったようだが、ニトリの商品は都心部での需要も高く、現在では単なるイメージ戦略にとどまらない効果を発揮しているようだ。ハイブランドを着こなすファッショニスタがファストファッションのアイテムを取り入れて楽しむように、高級家具店が並ぶエリアでもその安定した品質とリーズナブルな価格で競争力を発揮できるのがニトリの強みなのかもしれない。(諫山大樹)

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  • 「同年12月1日(筆者の誕生日だ)」…この情報は必要なのかw
    • イイネ!2
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