「“脱ぐべきゲスト”が脱いでくれた」最終話放送直前の『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』制作Pインタビュー

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2017年03月29日 21:33  おたぽる

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おたぽる

最終話先行場面カット

 秋葉原を舞台に巻き起こる戦いやドラマの数々を描きつつ、多種多様なオタクならではのネタを盛り込んだアニメ『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』(TOKYO MXほか)。3月22日に放送された12話「電マがバラバラじゃねーか!」では、ゲーム制作にかけるクリエイターの熱いドラマを描いた人気マンガ『大東京トイボックス』(作:うめ/幻冬舎コミックス刊)との強力コラボも実現した。29日にはいよいよ最終回を迎える本作に関し、アニメーションプロデューサーを務める奥山真吾さんにお話をうかがった。本記事(前編)ではコラボについてのエピソードおよび最終話の見どころを掲載!



* * *



■あふれる熱意を最高のタイミングでコラボとして実現!



――12話には『大東京トイボックス』のキャラクター、天川太陽(CV:羽多野渉)と月山星乃(CV:斎賀みつき)が登場しましたね。原作ゲームにも『大東京トイボックス』の舞台である「スタジオG3」が出てきていましたが、今回のコラボは、そこからの流れだったんですか?



奥山真吾さん(以下、奥山) そうですね。うめ先生が『大東京トイボックス』を描いているときに、先生とアクワイアさんの協力関係が出来ていまして。『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』をつくるにあたり、原作ゲームの発売元であるアクワイアの黒子さんが「いつでも協力しますよ!」と言ってくれていたので、それに乗るかたちでコラボが実現しました。



 シリーズ構成の兵頭(一歩)さんが『大東京トイボックス』が好きだったんですよ。私も好きでしたし「出したいね」とは思っていたんです。最終的には12話でのコラボとなりましたが、それまでのストーリーを振り返っても12話で出てくるのが妥当だったかなと思います。



――コラボに関して、詰めていった部分やこだわった部分はありますか? ほかのキャラとはまったく違う作画には驚きました。



奥山 作画は『大東京トイボックス』専任のキャラクターデザインと作画監督を立てました。これまでの『アキバニ』のテイストとはまったく違うので、現状のスタッフではどうにもならないと。なので完全に別のタッチで、濃い絵が描ける人にキャラクターデザインをお願いし、作画監督もその場所だけお願いして、本当に別の絵をつくるような形でやりました。



 作監に絵を回すときも、周りのキャラの絵を入れて、そこから別の作監に持っていって天川太陽と月山星乃だけ上から絵を乗せてもらっています。こだわっているというか、そこだけまったく別のことをしています(笑)。セリフはそもそも兵頭さんが『大東京トイボックス』が好きだということでうまく組み立ててくれていますね。キャスティングに関してはうめ先生の意向を尊重して、羽多野渉さんと斎賀みつきさんに出演いただきました。



――『大東京トイボックス』はゲーム制作がテーマの作品ですが、アニメ制作にも通じるところはあると思いますか? また、ものづくりの現場で大切にしていることがあれば教えてください。



奥山 私はもともとゲーム業界の出身で、先輩が朝礼で紹介していたので『東京トイボックス』は読んでいたんです。現場にいながら読んでいたので「こうだよね、アツいよね」という共感はありました。ちょうど上司に天川太陽みたいなアツいプログラマーがいたんです。大手メーカーから来て、プログラマーとしては超一流。「火事が起こったら俺より先にPC持って逃げろ」「プログラムが子どもだから子どもはいらん」と言うほどの熱血プログラマーでした。結婚はしているんですけど(笑)。それぐらいアツい人がいたので、制作者の空気はうまく表現されているなと思っていました。



 でもまさか、私がアニメ業界に来てからコラボすることになるとは思っていませんでした(笑)。実は『大東京トイボックス』のアニメ化企画を出していたこともあるのですが、ちょうど時期がドラマ化と被ったためかボツになった、なんてこともありました。



――それがめぐりめぐってコラボというかたちで実現したと。



奥山 めぐりめぐってですね(笑)。これはアニメ業界とゲーム業界で違うなと思ったところなのですが、ゲームのほうは分業制というか、細かく担当が分かれちゃうんです。『大東京トイボックス』のなかでは「みんな集まって一緒につくるぜ」みたいな空気になるのですが、実際の現場ではみんなが個人のPCに向かってずっと作業としていて、和気藹々とはほど遠いような現場感がありました。私がいた会社では同じ社内にいても全部メッセンジャーで会話をする現場だったんです。ゲーム業界のときよりはアニメ業界のほうが「みんなで終わらせようぜ!」っていう空気感が強いと思います。『大東京トイボックス』とはその空気感は一緒かもしれないですね。



『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』の最終話も大変でしたが、各自担当の話数は終わっているから「みんなで集中してやろうぜ」と。5話で一人原画を担当してくれた北川(降之)さんがなぜか第2原画を手伝うとか。ダンスシーンのリテイクもあって、桑原(寿弥)さんという3話のダンスシーンをやってくれた方にもお願いしました。



――最終話にスタッフが集結していったんですね。



奥山 そうですね。キャラクターデザイン・満田(一)さんも作画をやって、総作監も集まってきて(笑)。ダンスに加えてアクションも盛りだくさんだったので、通常だいたい300カットのところが13話は430カットっていうすごい枚数になったんです。でも、みんなの力を集めてキレイに完成できたなと思います。みんなが集まったおかげで、短い期間でなんとか作りきった感じですね。最終的には制作も5人全員で走り回るし、みんなボロボロになっていくし。制作は制作で、クリエイターはクリエイターでみんなボロボロになっていくし(笑)。V編が終わった瞬間にみんなで「メシ食いに行こうぜ!」って十数人で朝まで飲み明かしました(笑)。



――そういうナマのコミュニケーションがあるからこそ、それぞれの思い入れが作品にしっかり反映されているのかもしれませんね。



奥山 そうですね。みんなが殺伐としちゃって、いがみ合いながら終わっていってしまう現場もあるんですが、今回はみんな「楽しくできたね」って乾杯できました。同じものづくりだから根幹の思いは一緒といえば一緒なんですが、アニメ業界は楽しく頑張って、ユルク真剣に! 個人的にはゲーム業界よりやりやすいですね(笑)。



■最終話は見どころ山盛り!? 「おとといフライデー」の小島みなみ、紗倉まなも本人役で声優に挑戦!



――総力を結集して制作されたという最終話ですが、見どころはどういった点になりますでしょうか?



奥山 まずは音楽ユニット「おとといフライデー」の小島みなみさんと紗倉まなさん、まさに“脱ぐべきゲスト”が脱いでいる点ですね。どこまで脱ぐかはお楽しみということで。いつもの本作どおりに脱いでくれるという程度で、そこまで脱げないですけど(笑)!



 本人たちが声を当てているので面白いですよ。アフレコもすごく楽しくできましたね。他のキャストと一緒には録れないかなと思っていたんですけど、時間を合わせて来てくれたおかげで本線で楽しくやれました。ちょうど「乙女フラペチーノ」から「おとといフライデー」に名前を変え、今夏のシングル発売に向けて心機一転頑張ろうというところですごくお忙しい時期みたいで、本線に入れるのはその日だけとのことだったので順調にできてよかったなと。



――彼女たちのシーンは見どころですね。



奥山 はい。あと2話のバトルでタモツが店長の腕を駆け抜けるシーンを描いた、小川完(タモツ)さんという勢い重視の絵が得意な作画さんがいまして。彼が13話の作画でも大活躍しています。2話で店長がびっくりしたときの顔と同じようなタッチの絵があって、しかもそれがすごく動きます(笑)。タッチがない絵が上がってきたとき「これ大丈夫?」って思ったんですけど、タッチが入ると「これでよかった」と安心する面白い絵になっています。小川さんのカットは必見です。ぜひ見てもらえると良いと思います。



 ちなみに池畠監督は小川さんが大好きなので、一回タモツという名前のキャラをつくりたいと。それで主人公の名前がタモツになっているんです。



――ポロッとすごいネタが出てきましたね(笑)。



奥山 その小川さんをはじめとして、みんながいいアクションを描いてくれたので13話のアクションは本当にすごいですよ。しかもすごく壮大なことをやってます(笑)。



――アクションといえば、本作は1話の時点から女の子に対して相当えげつない描写をしてるんですけど、あれも最初のコンセプトにあったことなんですか?



奥山 あれは完全に池畠監督の趣味です。12話のうらめへの顔面パンチもそう。めり込んでましたもんね。最近見ないですよね、ああいう演出は。13話も同じような感じでご期待どおりに(笑)。かわいそうって思っちゃうとちょっと見てられないかもしれないですけど。あれはあれで面白いと思う人が増えてくれると、笑いどころとしてもいいと思うんですけどね(笑)。



 13話ではいろいろなものが刺さったりします。そういったネタ探しはもちろん、物語がすべてまとまって大団円を迎えるので、その点も「よかったね」って言ってもらえると一番いいですね。細々としたネタもいっぱいありますけれど、大きなお話としてまとまったということがまず重要なので(笑)!



――では最後に、これまで見てくれていたファンの方に向けてメッセージをお願いします。



奥山 これまでの力を総結集してつくったので、いろんな要素が13話には詰め込まれています。詰め込みすぎぐらい詰め込んでいるので、いままで楽しんでくれていた方は絶対に楽しめる話数になっています。ぜひ見てください。よろしくお願いします!



* * *



 さらに「おたぽる」では、12話でのコラボについてのご感想と最終話の見どころについて、『大東京トイボックス』の原作者・うめ先生と、原作ゲームの発売元であるアクワイアの黒子さんからそれぞれコメントをいただいた。



■『大東京トイボックス』作者・うめ先生
「今回のオファーを受けた際は、『マヂでw!?』という感じでした。12話を見て、なによりまず『おい太陽、お前なんでそこにいんだよw』と思いましたね。絵柄も他のキャラクターと全然違うので、なんかこいつらがすみません、みたいな。とはいえ、実際、絵が動いて声がつくと、思ったよりは、違和感がなかったです。アニメの力ですね。すごい。W 



 声優さんのキャスティングについては、いくつかサンプルをいただいて、本当に声だけで選びました。羽多野さんは、太陽の持つケレン味がぴったりで、斎賀さんは、甘さのない声が素敵でした。



『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』『大東京トイボックス』の共通点は色々あるとは思うのですが、いちばん根っこにあるのは、世間では理解されにくい情熱をめげずに描いている点だと思います。あとは秋葉原(笑)『AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-』の魅力は、なにより魂が合ってることです!」(うめ)



■アクワイアの黒子さん
「アニメの制作が決まったのは2015年の11月でしたので、ここ1年半の半分位はアニメのプロデューサー的なお仕事をしておりました。その初期『秋葉原を、そしてアキバに集う人たちを大事にしてほしい』とアニメのスタッフさんにお願いしたことがあり、文字通りぶつかったこともあります。しかし、制作が進んでいくうちに、『大東京トイボックス』天川太陽のセリフではないですが“魂は合ってる”と思うようになってきました。



 12話でのコラボは、実際、弊社がマンガの舞台のモデルになったこともあり、ゲームではゲーム内ゲームやDLC、初回特典などでコラボし、実写ドラマ版では現場密着に近い協力をしておりましたので、どんなコラボでも大丈夫かと思っていたのですが、シリーズ構成の兵頭先生から構想をお伺いした時にはびっくりしました。



『大東京トイボックス』の天川太陽と月山星乃は、当初はアクワイアちゃんのようにモブキャラクターで声無しの想定だったので、アニメ世界観にあわせたキャラデザになると思っていたのですが、11月にキャララフが届いたら、超リアル(というか原作通り)。何事? と思いゴンゾ制作部の柴崎さんに連絡をしたら「違うデザイナーさん(作画監督の土屋圭さん)を立てました」と当たり前のようなご回答で、うめ先生と驚愕しておりました。



 同じく秋にはセリフがあるだけでなく、重要なことも言うとの展開になっており、太陽と月山に声が付くとのことで、予想はしていたものの、想像の外のこととなっていました。「スタジオG3」の場所がどこになるかは本読み(シナリオや制作の方向性を決める会議)の時に軽く話をしていたのですが、ドラマ版の万世橋の方ではなく、マンガ版の昌平橋の方になっており、秋葉原エリアをフルに使ってくるなあとこちらも驚いておりました。



 監督の池畠さんと脚本の兵頭さんが2話でタモツに言わせていた『新規を大事にしないコンテンツには未来は無いぜ』というところにアニメならではの魅力が凝縮されているかもしれません。もちろん、秋葉原は歴史のある街で、私たちも大切にしています。秋葉原は変化が早く、特に最近は季節ごとにどんどん変わっていく。私たちも追いつくために日々取材をしていますが、ゲームで取り扱える魅力の広さと深さはアニメとやはり違うものになりますね。時折、秋葉原を知っている人向けだけに、ゲームを知らず知らずに作っていってるかもしれないと心配する時もあったりもします。



 初めて、秋葉原の旅-AKIBA’S TRIP(アキバズトリップ)-に触れる場合は、ゲームをプレイするよりもアニメを見ていただく方が各テーマ回(3話〜10話)に限ってはいいかもと思ったところもこの3カ月はありました(笑)。アニメの『AKIBA'S TRIP』はそれだけ新規のファンを大事にしてますね。



 ここから先はネタバレになってしまうので詳細は避けますが、そうは言っても、ゲームとアニメの共通の魅力はラストシーンに文字通り描かれると思いますので、是非最終話を見ていただければ。13話はある意味番外編、ある意味王道のフィナーレと言える展開です。あっという間の30分だと思いますが、みなさまに楽しんでもらえたらと思っています。



『アキバ3』や『アニメ2期』で再びお会いできるよう、引き続き応援していただけましたら幸いです」(黒子)



* * *



 これまでのエピソードでも、細部にまで込められたあふれる熱意と遊び心がたしかに感じ取れた本作。13話では、これまでのすべてに匹敵するほどのエネルギーが込められているようだ。脱衣アクションあり、ダンスあり、ギャグもあり、そして感動のエンディングありの最終話。ファンは全裸で待機しよう(ただし日光を浴びて蒸発しないように)!



 後編では引き続き奥山さんに、アニメ『AKIBA’S TRIP -THE ANIMATION-』の企画の成立や、お気に入りのキャラクター、今回のタモツの名前の由来のような制作秘話の数々をうかがったので、ぜひそちらもお楽しみに!
(取材・文/イデア)




■TVアニメ『AKIBA’S TRIP -THE ANIMATION-』
公式サイト http://akibastrip-anime.com
公式ツイッター @akibastripanime
*最終話最新放送が今夜3月29日 深夜23時30分より放送!
TOKYO MX、BSフジ、AT-X、dアニメストアほかにて放送、配信中
*Blu-rayボックス Vol.1 4月4日/Vol.2 6月2日 発売決定!
・初回仕様限定特典版では脱衣アプリ対応のキャラクターデザイン・満田一描きおろしデジジャケットやサウンドトラックCDほか豪華特典満載!
・DVD Vol.1も同日4月4日発売! 以降順次5月より毎月1巻発売予定。



(C)2017 ACQUIRE Corp./AKIBA'S TRIP製作委員会


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