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「さい帯血」が医療の可能性を広げる ――小児脳性麻痺の治療における臨床研究がスタート

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2017年03月31日 13:03  MAMApicks

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「さい帯血(臍帯血=さいたいけつ)」という言葉を聞いたことはあるだろうか。母親と赤ちゃんを結ぶ「へその緒」に含まれる赤ちゃんの血液のことをさい帯血といい、出産のときにのみ取れる貴重な血液だ。このさい帯血には、「幹細胞」がたくさん含まれている。


幹細胞とは、皮膚や血液、筋肉・軟骨、神経などのもととなる細胞で、体のさまざまな組織に分化することができる。幹細胞を使えば、病気や事故などで体の組織が傷ついたり失ったりした場合に、その組織を再生や修復ができる可能性がある。この幹細胞を使った治療法のことを再生医療という。

ちなみに2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授が初めて作成した「iPS細胞」も幹細胞のひとつだ。再生医療は現在注目を集めている医療分野だが、さい帯血の再生医療への活用についても、アメリカをはじめ、世界中で研究が進められている。

さい帯血を医療で使うためには、出産時に採取されたさい帯血を冷凍保存しておく必要がある。その保管場所が、さい帯血バンクである。

さい帯血バンクは、大きく公的バンクと民間バンクにわけられる。公的バンクとは、善意でさい帯血を「寄付」し、「第三者」へ提供するための施設だ。一方、民間バンクは赤ちゃんの親が保管料を支払い、「赤ちゃん本人のために使う」ものである。

なお、民間さい帯血バンクでシェア90%以上を占めているステムセル研究所では、約4万人(2017年3月現在)のさい帯血が保管されている。

日本でもさい帯血を使った再生医療の研究は行われており、最近では小児脳性麻痺の治療についての研究が始まった。

小児脳性麻痺とは、胎児から新生児までの期間に、何らかのストレスで脳の組織に十分な酸素がいかない状態が続いたり、脳内で出血したりすることで、脳が損傷して運動機能や姿勢などに異常が出る病気のことをいう。

小児脳性麻痺を引き起こす原因はさまざまで、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剥離、早産、低酸素性虚血性脳症(出産時に仮死状態が長時間続くことによる脳障害)などの出産時の障害、新生児期の髄膜炎や脳炎などの後遺症などが挙げられる。

いったん損傷が起き、脳障害が生じた場合、治療は難しいとされており、リハビリで麻痺した体をいくらか動かせるようにするくらいしか方法はなかった。

そこで治療法としてあらたに注目されたのが、再生医療である。幹細胞を体内に注入することで、幹細胞が脳細胞を再度活性化したり、組織を再生したりして、失われた脳細胞が再生される可能性があるからだ。幹細胞は、本人のものが最も適しているといわれている。

以前から脳性麻痺の研究をしている高知大学医学部附属病院では、自家さい帯血を最も多く保管するステムセル研究所に研究協力を依頼した。これにより、1,000人に2〜3人の発症率と言われる脳性麻痺の治療法の開発に拍車がかかった。

研究の対象となるのは、小児脳性麻痺と診断され、ステムセル研究所に2016年12月16日までにさい帯血が保管されている7歳未満の患者だ。その中でも中等症以上の低酸素性虚血性脳症の診断を受けており、脳性麻痺への移行することが確実だと画像の検査で認められているという条件が加わる。もちろん、そのさい帯血細胞が移植する基準を満たしている必要もある。

さい帯血幹細胞は、患者に負担の少ない方法(点滴)で投与される。安全性の確認に加え、投与細胞が脳機能の修復を促すことが期待されている。

投与自体は数時間で終わるが、患者は高知大学医学部附属病院に約3週間入院し、事前および事後の検査を行うことになっている。また、退院後も6ヵ月後、12ヵ月後、24ヵ月後、36ヵ月後に、同様の検査を行って状況がどのように改善したのかを調べる計画だ。研究期間は2023年3月31日までとなっている。研究期間が終わるころには、さい帯血の可能性がさらに明らかになっていることが期待される。

なお、民間バンクのステムセル研究所にさい帯血を保管するための費用は、21万円(10年間)。出産の時の万が一に備えてだけではなく、赤ちゃんが成長した後に、スポーツや交通事故などで脳や脊椎を損傷するなどして、再生医療が必要になる可能性は決してゼロではない。将来の保険のひとつとして、検討する価値はあるのではないだろうか。

ただし、自家さい帯血の保管をしたい場合は、民間バンクに協力している産院に採取の申し出をする必要がある。

ただ、たとえ民間バンクに協力している産院であっても、産院側からさい帯血の保管をすすめられるとは限らない。今回取材に協力していただいた浅川産婦人科では、油田啓一副院長自らがさい帯血の有用性について、妊産婦に対して説明している。

出産までにさい帯血について知る機会は様々のようだが、本記事が我が子の将来をしっかりと考えるよいきっかけになることを願う。

【取材協力】
ステムセル研究所
http://www.stemcell.co.jp/
浅川産婦人科
http://www.asakawa.or.jp/

【関連アーカイブ】
「さい帯血」がよくわかる! ――研究所見学で再生医療が身近に
http://mamapicks.jp/archives/52210273.html

今井 明子
編集者&ライター、気象予報士。京都大学農学部卒。得意分野は、気象(地球科学)、生物、医療、教育、母親を取り巻く社会問題。気象予報士の資格を生かし、母親向けお天気教室の講師や地域向け防災講師も務める。


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