「作家とライターの定義」論争、はあちゅうの比喩が名言かもしれない

「ごめすさんて、なにやってるヒトなんですかぁ？」は、飲み会や合コンで女子から私へと投げかけられる、もはや「風物詩」とさえ呼べる、定番の“素朴な問い”である。そして、それに対して「どう簡潔に、わかりやすく回答するか」は、私にとっての永遠のテーマである。

 

私のなかでは本当のところ、「山田ゴメス業」と名乗るのが一番しっくりと来るのだが、初対面の女子（男子でも）に提示する回答としては、あまりに唐突かつ不躾すぎて、しかもジョークとしてもそう面白くない。「ネットニュースパトローラー（略：NNP）」 は、あくまでここcitrusさんでの限定的な肩書きであって、citrusさん以外の媒体ではネット上を全然パトロールしていない原稿もたくさん書いているので、これも違う。そもそもまだ世間的にそこまで耳慣れしている肩書きでもないので、「山田ゴメス業」と同様、より相手を混乱させるだけである。

 

こうやって私がリアクションに窮しているとき、周囲にいる付き合いの長い友人は「このヒト、ライターさん」と助け船を出してくれる。それはそれでありがたい。が、となれば次にかならず返ってくるのが「専門はなんですかぁ？」という質問だ。エロからODA、取材モノやインタビューから記名原稿まで……と“守備範囲の広さ”を一つの武器として食いつなぐ私としては、ここでまたリアクションに窮してしまう。「なんでも書きますよ」と答えてしまえば事は簡単だし、それがじつは“もっとも正しい回答”だったりするのだけれど、「ごめすさんて、なにやってるヒトなんですかぁ？」という相手の疑念（＝私に感じるうさん臭さ）を晴らす抜本的な解決策にはないっていない。

 

一度、みずからを「作家」と名乗ってみたことがあるのだが、そのときは不思議と「専門はなんですかぁ？」と“次の質問”が返ってこなかった。なんて便利な肩書きなんだ、と目からウロコが落ちる思いであったが、やはり「作家・山田ゴメス」はどうも座りが悪く、お尻のあたりがむずむずとしてしまう。どうすりゃいいの？　この私……。

 

話題のネタやニュースをツイートするアプリ『togetter』で、『はあちゅうさん「私は作家。ライターじゃない」→吉田豪さん「ライター枠の人だと思っています」』というタイトルの論争が掲載されていた。とりあえず、双方のざっくりとした「作家とライターの定義」を抜粋してみよう。

 

はあちゅう氏：作家→自分の意見を書く・ライター→誰かの意見（自分以外に取材）を書く

吉田豪氏：ウィキペディアにも「ただ単に『作家』と言った場合、著作家、とくに小説家を指す場合が多い」って書かれているように、ボクは作家＝小説が本業の人だと解釈している

 

ちなみに、はあちゅう氏は「ライターと作家はバレリーナとチアリーダーくらい違う」とし、自身の肩書きが「ライター」になっているときは、全部修正依頼を出しているらしい（※ブロガー・エッセイスト・コラムニストは「有り」らしい）。一方の吉田豪氏は、自身のことを「大雑把に分類するとライター」とし、「本業はなにかと考えた結果、プロインタビュアーを名乗っている」という。つまり、はあちゅう氏の定義だと、（少なくとも）citrusでは他人への取材を一切行わないことを信条に自己妄想ばかりを書き殴っている私（＝ゴメス）は「作家を名乗っても許される」ということになり、吉田豪氏の定義では、まだ本格的な長編の小説ってヤツを世に発表したことがない私（＝ゴメス）は「大雑把に分類してライター」だということになる。なるほど、どちらの言い分にも一理あるけれど、下手に一理あるだけに、私（＝ゴメス）の“肩書き問題”は宙ぶらりんのままである（笑）。いち早く「ネットニュースパトローラー」よりも遥かに認知性の高い「プロインタビュアー」に辿り着いた豪サンが、ちょっぴりうらやましい。

 

ただ一つだけ、私の25年にわたる文筆生活から得た絶対的な経験則がある。たとえば、「ライターを育てること」を目的とする学校に「作家」をイメージして通う生徒さん、つまり「ライターと作家を混同している人」は、たいがいが使い物にならない。コレを明確に位置づけ出来ていないヒトたちは、総じて原稿に“自分の意見”をまぶすさじ加減がコントロールできないのだ。そういう意味で、はあちゅう氏の「ライターと作家はバレリーナとチアリーダーくらい違う」という比喩は、ゼヒとも肝に銘じるべき珠玉の名言なのではなかろうか。