F1「マクラーレン・ホンダ」がオレンジ色に染まった理由

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2017年04月04日 01:01  citrus

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2017年のF1シーズンを戦うマクラーレン・ホンダの新型マシンが発表された。カラーリングを見て「これがマクラーレン?」「ヨソのチームでしょ」と思った人がいるかもしれない。2016年までとまったく違うからだ。


2016年までのマクラーレンはグラファイトグレーを基調にしたカラーリングで、これに赤いブーメラン形のグラフィックをアクセントとして入れていた。2017年型はマクラーレンの言葉を借りて表現すれば、サテンブラックとタロッコオレンジ、それにグロスホワイトを組み合わせたカラーリングだ。


タロッコオレンジはイタリア産オレンジの一種で、赤い果肉を持ったブラッドオレンジである。その果肉ではなく皮の色をイメージしたオレンジ色ということだ。重要なのは、マシンのカラーリングにオレンジを用いたことである。サイドから眺めるとオレンジとブラックが半々でホワイトが少々という感じだが、正面から見るとオレンジが支配的だ。

 


グラファイトグレーを基調にしたカラーリングから一変。正面から見るとより一層オレンジカラーが目立つ

■セナとプロストの黄金時代


このオレンジには原点回帰の意味が込められている。マクラーレンというチームはもともと、ブルース・マクラーレンというレーシングドライバーが立ち上げた。1963年のことで、1966年からF1に参戦している。ブルースは1970年にテスト走行中の事故で亡くなるが、チームはその後も存続。ロン・デニスという人物がチームに加わって仕切り直しをしたのが1980年のことだった。


デニス率いるマクラーレンは1988年にホンダからエンジンの供給を受けることになった。ホンダのターボエンジンを搭載したマクラーレンMP4/4はアイルトン・セナとアラン・プロストという当代きってのドライバーに託された。無類の強さで勝ちまくり、16戦15勝してドライバーズ(セナ)とコンストラクターズのダブルタイトルを獲得したのは、特定の世代では記憶にありありと残っているだろう。


1998年にはミカ・ハッキネンとメルセデス・ベンツ製エンジンの組み合わせでダブルタイトルを獲得。2008年はデニスの秘蔵っ子だったルイス・ハミルトンが当時史上最年少でドライバーズチャンピオンになった。


デニスは2009年にチーム代表の座から退いたが、その後もグループ内の要職にとどまり、チーム運営に少なからぬ影響を及ぼしつづけた。が、2016年11月にグループから完全に離れることになった。オレンジのカラーリングは、マクラーレンがデニスと無縁になり、新体制に移行したことを世間にアピールするのが狙いだ。

 


チーム体制は変わったが、パワーユニットは従来同様にホンダ

■原点回帰をオレンジカラーでアピールする


では、なぜオレンジなのか。チーム創設当初はオレンジのカラーリングだったからだ。かつてのF1はナショナルカラーをまとうのが一般的だった。1960年代にホンダが初めてF1に参戦した際は、白地に赤のアクセントを施したボディカラーをまとったが、この赤と白が日本のナショナルカラーだった。イタリアは赤、ドイツは銀、イギリスは緑、フランスは青といった具合である。フェラーリの赤はイタリアの赤でもあるわけだ。


マクラーレンはイギリスのチームだが、ブルースがニュージーランド出身だったため、母国のナショナルカラーであるオレンジをチームカラーとして選択した。以上がオレンジの由来だ。


本来なら新型マシンの名称はMP4-32になるはずだったが、2017年型は「MCL32」と命名された。「MP4」はデニスがマールボロの支援を受けて始めた「マールボロ・プロジェクト4」に由来するネーミングである。デニスが去って新体制になったので、カラーリングをオンレンジ基調にしたのと合わせ、ネーミング手法も一新したわけだ。


チーム体制は変わったものの、マクラーレンがホンダのパワーユニットを搭載することに変わりはない。1.6L・V6直噴ターボエンジンと2種類のエネルギー回生システムを組み合わせた17年型のパワーユニットは、RA617Hと呼ぶ。15年型はRA615H、16年型はRA616Hだったので、ホンダのネーミング手法は不変である。


一方、中身は一新している。ホンダは過去2シーズンで得た蓄積をもとにコンセプトとレイアウトに「ビッグチェンジを施した」と説明する。大変更の狙いは、重量の削減と重心の低下で、車両運動性能の向上に寄与することだ。もちろんそれだけが2シーズンの経験を投じて行った開発の中身ではなく、エンジンの出力向上を図っている。


ある開発エンジニアは「他社に負けていると思っているので、まだまだ伸びないといけない。だから相当に手を入れている」と説明してくれた。


いきなりイチバンになるのはハードルが高すぎるにしても、メルセデスやフェラーリ、ルノーと互角に渡り合えるようにはなってほしい。そう願ってはいるのだが、合同テスト開始早々にエンジン関連のトラブルが発生して満足に周回を重ねることができず、テスト初日にステアリングを握ったフェルナンド・アロンソに「ちょっと残念」と言われてしまう始末。気を引き締めかからねば(重々承知でしょうが……)。
 

このニュースに関するつぶやき

  • ダサいカラーリングよりもクソ遅いホンダエンジンの方が問題なのでは・・
    • イイネ!13
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