脂肪を燃やす細胞「褐色脂肪組織」、安価で高解像度な造影が可能に

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2017年04月06日 12:02  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

人体に“無害”な近赤外光を活用


画像はリリースより

 肥満に関連する病気の予防や治療のターゲットとして期待される「褐色脂肪組織」をリアルタイムで観察できる方法を、産業技術総合研究所などの共同研究グループが開発しました。人体にほとんど害がない「近赤外光」を用いたもので、従来よりも安値かつ高解像度に造影できることから、メタボリックシンドロームなどの予防や治療法の開発に役立つことが期待されます。

 褐色脂肪組織は、脂肪を燃やして熱を産生する機能があり、“やせる細胞”ともいわれ、近年、盛んに研究が行われています。その観察手段は、がん診断に使われる「陽電子放射断層撮影(PET)」と「コンピューター断層診断装置(CT)」を組み合わせた方法があります。しかし、X線による放射線被曝や高額な検査料といった課題があり、人体への影響を抑えた観察手法の開発が望まれていました。

 一方、今回用いた近赤外光は生体透過性が高く、人体に照射してもほとんど害がないとされ、これまでも検査などに役立つと考えられてきました。しかし、この波長領域で発光する物質が少ないこともあり、発光による体内造影技術は発展しませんでした。

メタボ予防や治療法を研究する動物実験での活用に期待

 研究グループは、近赤外蛍光を発する物質「単層カーボンナノチューブ(SWCNT)」に着目。東京大学が開発した水溶性ポリマーの一種「PMB」を利用して、マウスの褐色脂肪組織を造影する技術の開発に取り組みました。PMBは医療機器表面のコーティングに応用されている物質で、コーティングすることで細胞膜に似た構造が形成されるのが特徴です。このため、生体内で用いても血液の凝固や免疫反応を抑制できる利点があります。

 マウスを使った実験では、PMBで表面を覆った単層カーボンナノチューブ(PMB-SWCNT)が褐色脂肪組織に選択的に沈着することを発見。これは、血中にある「アポリポタンパク質」という物質を取り込んだPMB-SWCNTが血流によって体内を循環するうちに、褐色脂肪組織の毛細血管内皮細胞にある「アポリポタンパク質受容体」に選択的に沈着するためです。PMB-SWCNTをプローブ(ある物質を検出するための物質)として近赤外光蛍光イメージングを行うことで、褐色脂肪組織を選んで造影することができるといいます。

 また、PMB-SWCNTをマウスの尻尾の静脈に投与し、近赤外光蛍光イメージングを行うとすぐに褐色脂肪組織が鮮明に造影され始め、リアルタイムでの観察も可能となります。研究グループでは「メタボリックシンドロームの予防や治療法を研究する動物実験でPMB-SWCNTが活用されることを目指し、PMB-SWCNTのサンプル提供を進めるとともに、共同研究を進めていきたい」としています。(菊地 香織)

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