ファミレス「ガスト」のテレビコマーシャルやポスター、メニュー表では、実に美味しそうな料理が紹介されている。だが、期待して注文すると、そこに運ばれてくる料理は、写真とは似て非なるもの。このことはネットでもよく話題になる。「愕然とする」という表現が大袈裟ではないほどの「別物」が提供されるのである。私も一度、あまりにも粗末なものが出てきたので、クレームを入れたことがあるが、その後改善されている気配はない。なのに、ファミレス業界ではダントツNo.1の地位を保っている。
■なぜ、そこまでの集客力があるのか。
圧倒的な美味しさを提供しているのかというと、決してレベルは高くない。サービスが優れているのかというと、パートとバイトで賄っているので必要最低限でしかない。集客できる秘密は、「メニュー構成」と「店舗数」にあると、私は見ている。
ファミレスの事業規模の上位は、「ガスト」「サイゼリア」「ジョイフル」「ココス」「デニーズ」「バーミヤン」「びっくりドンキー」「ビッグボーイ」「ロイヤルホスト」といったところ。その中で、和食と洋食が混在した昔ながらのファミレスは「ガスト」と「ジョイフル」しかない。他は、パスタ、ピザ、ハンバーグ、中華などに片寄っている。和洋の混在は、客層の幅を広げる。つまり、小さな子どもからお年寄りまでが一緒に利用できるのである。
昔はこのタイプのファミレスばかりだったが、戦略としてはターゲットを絞り込んだ方が集客力が高くなるので、メニューも絞り込まれるようになった。その結果、世の中には専門店が増えた。
「これが食べたい」と思えば、その専門店に行けば良い。だが、食べることは“ルーティン”でもある。好みに関わらず毎日食べなければならない。食べたいものが浮かばなければ、“適当な店”を選ぶことになる。それが、「ガスト」である。和洋があり、日替わりランチも安い。サラリーマンには助かる存在である。
また、女性ウケするサラダの種類も多く、おしゃべりに最適なドリンクバーも充実している。デザートも多い。子ども向けには、キッズメニューやおもちゃがもらえるセットもある。平日午後3時以降は「ハッピーアワー」として、アルコール類が249円(税抜き)となり、つまみも199円(税抜き)と299円(税抜き)が揃っている。とにかく、メニュー構成がきめ細かい。これほど幅広い客層に対応したファミレスは、他にないのである。
そして、集客できる大きな要因のもうひとつが、店舗数である。全国で1,357店(平成29年2月28日現在)と圧倒的な数である。店が多いということは、何を食べようかと迷った時に、すぐそこに店があるということである。身近にあって、手軽に利用できる。その利便性が「ガスト」の強みである。言い方を変えれば、他に適当な店がないから、仕方なく利用しているのである「ガスト」を批判しているのではなく、それが「ガスト」の役割になっているのではないかと考えている。
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もし、似たようなメニュー構成の「ジョイフル」が、店舗数を急激に増やすことができれば、No.1の座は奪われるかもしれない。だが現状では、料理写真と実物が違うと知っていても、「ガスト」を利用するしかないのである。