スッキリしない「慢性便秘」の疑問・質問を専門医の先生に聞きました

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2017年04月18日 18:03  QLife(キューライフ)

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 頑張っても頑張っても、いまいちスッキリしない慢性便秘。世の中にあふれている“便秘解消法”にもスッキリしない人も多いはず。先日、都内で行われた、アステラス製薬主催のメディアセミナー「便秘型過敏性腸症候群に初めての治療薬『リンゼス錠』新発売」で、島根大学医学部内科学第二教授の木下芳一先生が、最新の慢性便秘の医学的知見について講演を行いました。

Q.医学的には、どこからが慢性便秘?

A. 今のところ、慢性便秘には明確な定義がありませんが、排便感覚や残便感、便の水分含有量がカギを握ります。日本内科学会は「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」、日本消化器病学会は「排便が数日に1回程度に厳守し、排便間隔不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指すが、明確な定義はない」としています。ですが、ちょうど今まさに、別の研究会が「慢性便秘症診療ガイドライン」を作成中で、今年中には初めての「慢性便秘についての医学的なガイドライン」が誕生します。

Q.慢性便秘の原因は?

A. 慢性便秘の原因には以下の4タイプがありますが、最も多いのは機能性疾患です。

機能性疾患 機能低下を起こして便の回数や量が減少する機能性便秘や便秘型過敏性腸症候群によるもの 薬剤性 抗コリン薬や抗がん剤、カルシウム拮抗薬などのお薬によるもの 症候性 甲状腺機能低下症や糖尿病、パーキンソン病やアミロイドーシスなど別の病気が原因となるもの 器質性疾患 大腸がんや巨大結腸症、直腸瘤など、便の通り道に病気があるもの

Q.「過敏性腸症候群」というと、下痢のイメージですが、便秘にもなる?

A. 過敏性腸症候群には3タイプに分かれており、それぞれ下痢型29%、便秘型24%、混合型47%という調査があります。この混合型の約半数は便秘に悩んでいると考えられ、過敏性腸症候群の半数は便秘型といっても差し支えないでしょう。10人に1人以上が過敏性腸症候群という調査もあることから、日本人の約5%は過敏性腸症候群が原因の便秘になっているといってもよいでしょう。

Q.「便秘型過敏性腸症候群」にはどんな人がなりやすいの?

A. 便秘型過敏性腸症候群の患者さんには以下の7つの特徴があります。

  • 女性に多い
  • 年配の人に多い
  • 過去数か月以上便秘で悩んでいる
  • 毎週のように下腹部の痛みがある
  • 血液や大腸の検査を受けたが、異常なしと言われた
  • 大腸の内視鏡検査を受けた時、とても痛かった
  • 旅行に行ったり、みんなと一緒に行動するときに腹痛が起こりやすい

Q.食事や生活を見直すと、便秘は解消する?

A. 便秘を改善させる食事・生活改善方法には、さまざまなものがありますが、実は医学的科学的に「効果あり」と証明されているのは数少ないんです。例えば「毎朝朝食を食べ、その後排便する。1日30分以上のウォーキングや運動をする」ことに「エビデンスがない」とした論文や明快に「効果なし」とする論文があります。また、「1日3回バランスの良い食事をとって、水分の摂取を増やす」ことについても「水をたくさん飲んでも効果なし」とする論文があります。

そうしたなか、機能性便秘患者さんの食事指導に関するもので、昆布やエシャロット、リンゴなどの水溶性食物繊維については、「効果あり」「効果なし」の論文が混在していますが、プラセボ対照試験という、より科学的な方法で行った試験では3試験中2試験で「効果あり」という結論が出ています。

Q.便秘の薬にはどんな種類がある?それぞれ薬の働き方が違うの?

A. 便秘のお薬にはその作用によってさまざまな種類があります。

膨張性下剤 水分を含んでゲル状に膨らみ、便の性質を整えて排便しやすくします。 浸透圧性下剤 体に吸収されにくく、大腸に留まるお薬で浸透圧によって腸の中に水分を引き入れ、便を柔らかくします。最も処方されているマグネシウム製剤などはこのタイプです。 上皮機能変容薬 慢性便秘症には小腸に作用して水分の分泌を増やすことで、便を柔らかくするクロライドチャネルアクチベーターというお薬が、便秘型過敏性腸症候群には、内容物に水分を与え便の移動をスムーズにするとともに、痛みに花瓶になっている神経の伝達を抑えるお薬であるグアニル酸シクラーゼC受容体アゴニストというお薬が使われます。 刺激性下剤 硬い便が詰まった場合に腸の粘膜を刺激させ排便を促すお薬です。 自立神経作用薬 胃腸の運動や働きを調整するお薬です。 漢方薬 主に大建中湯や大黄甘草湯、麻子仁丸、潤腸湯が使われます。 プロバイオティックス 腸の働きを整える整腸薬で、ビフィズス菌や乳酸菌のお薬が代表的です。

Q.便秘で病院受診はちょっと恥ずかしい…?

島根大学医学部 内科学第二 教授 木下芳一先生

A. 多くの病院で「便秘外来」や「便通異常外来」などの専門外来があるほか、消化器科や大腸肛門科などのクリニックでも完全予約制のところがあるなど、慢性便秘で病院を受診しやすい環境が整っていると思います。私の所属する島根大学医学部附属病院でも、2016年にそれまでの「便通異常外来」に加えて、「女性便通異常外来」を新設したところ、多くの患者さんが診察に訪れています。「たかが便秘」と思わずに、まずは医師に相談してみてください。

 便秘でスッキリしない人はもちろん、便秘治療に関する疑問・質問がありスッキリしない人も、まずはお近くの医師に相談してみてはいかがでしょうか?(QLife編集部)

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