ディスクトイがあぶり出した「クラウドファンディングの問題点」とは?

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2017年04月19日 08:42  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

先日、筆者は当メディア『FUTURUS』でディスクトイについての記事を執筆した。2017年4月17日のことである。

その内容は、ここ最近のクラウドファンディングで「真田昌幸のクルミ」のようなディスクトイが数多く出展されているというものだ。ただ指先を動かすためだけの、言わば暇つぶし用玩具である。そうしたものが、大量に生産されるようになった。

だが、この現象にまつわる問題点もあるということを記事の末尾に書いた。それはひとことで言えば、「アイディアの盗用」である。

出荷前から大量のコピー製品

先日の記事でも紹介した『Fidget Cube』は、もしかしたら640万ドル(約7億円)も集めるべき製品ではなかったのかもしれない。

これは何も、Fidget Cubeを貶める気で書いているのではない。だがこの製品が世界中から大注目されたことにより、出資者へ提供される前からコピー製品が現れたのだ。

Fidget Cubeは、何の機能も持たないスイッチの塊である。それが売りなのだが、アイディアのみで勝負しているということもまた事実だ。コピーに高度な技術は必要ない。

こうしたことは中国の工場の特技……かと思いきや、先進国のスタートアップも同じことをやっている。企業名はここでは伏せるが、所在地はカナダとだけ言っておこう。3DプリンターでFidget Cubeのコピー製品を量産し、「100%メイド・イン・カナダ」という箔をつけて販売している。

本物のFidget Cubeの出荷が遅れてしまったことも、コピー製品が流通する一因となったようだ。何しろFidget CubeのKickstarter提供枠が14ドルなのに、Amazonでまったく同じ機能のコピー製品が4ドルほどで売られているのだ。なのに、14ドル払った出資者は長く待たされた。理不尽にも程がある。

こうした問題は、これからのクラウドファンディング界隈に背後霊のごとくつきまとうだろう。

開発者のためになっていない?

残念ながら、この問題を防止する根本的な策はない。

だからこそのクラウドファンディングだ、と解釈するしかないのかもしれない。

銀行やベンチャーキャピタルから出資を受けるのは簡単ではないが、その代わりに話が上手く進めば金融機関が全面バックアップしてくれる。だが、クラウドファンディングの場合はすべての出来事を100%自力で解決しなければならない。商品販売について指南してくれる役回りがいないのだから、その分リスクも高くなる。

開発者側に立って見れば、クラウドファンディングでの大成功がその後のビジネスをより一層難しくしてしまうという現象に突き当たる。また、出資者側は「開発者のその後」についてあまり気にかけていないのではと筆者は考えている。出資者は気に入った製品を安価で手に入れればそれでよく、企業の成長は二の次という意識ではないのか。

そうだとすると、今後はテクノロジー系クラウドファンディングの趣旨が問われることになるだろう。このサービスは、果たして本当にスタートアップのためになっているのかという問題である。

鍵は出資者の意識

解決策を見出すとしたら、結局は出資者の意識に頼るしかないのかもしれない。

すなわち、「出資は企業の成長のためのもの」という考えを常に持たなければならないということだ。

基礎的なことになってしまうが、クラウドファンディングとは「投資の世界」である。例外もあるが、製品は「売買」ではなく「提供」あるいは「出資に対する見返り」という形で配送される。では、我々の出資は何を対象にしているのか? それは製品ではなく、企業である。

「こんな魅力的な製品を生み出したこの会社を応援したい」

出資者全員がこの考えのもとに結束すれば、コピー製品に立ち向かえるはずである。

現実はそうなっていないというのは重々承知の上だが、少なくともテクノロジーの発展と同時にクラウドファンディング出資者の意識も成長しなければならないという筆者の持論は、これからも変える気はない。

【参考・動画】

※ Fidget Cube: A Vinyl Desk Toy – Kickstarter

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