国内の患者数は成人の約5%
画像はリリースより
アルコールや薬物と並び、依存性が強いとされるものに、ギャンブルが挙げられます。金銭的な問題などを抱えても、やめられずに続けてしまう状態は「ギャンブル依存症」と呼ばれる病気で、家族や周囲の人に大きな影響を与えることにもなりかねません。国内の患者数は成人の約5%と推測される上、潜在的な予備軍も多いと考えられており、対策が急務となっています。
ギャンブル依存症には、なりやすい性格がありますが、単なる性格の問題として片付けることはできません。多くの研究や臨床では、患者には常に過剰にリスクを好む傾向があるという考え方が主流でしたが、このような傾向の人ばかりではないことが最近の研究で明らかになっており、理解や治療に限界がありました。
京都大学大学院医学研究科の高橋英彦准教授らの研究グループは、状況に応じてリスクの取り方を柔軟に切り替える能力に着目。ギャンブル依存症の患者は、サッカーの試合前半のように比較的安全な戦略で大丈夫な場合でも、終了間際で負けている場合と同じようなプレッシャーを感じ、過剰なリスクを冒すのではないかと考え、検証するための実験を行いました。
状況に応じてリスクの取り方を変えられず
実験は、いずれも男性の患者21人と患者ではない29人を対象に実施。新たに考案したギャンブル課題を実行した結果を比較し、その際の脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で観察しました。課題は「ハイリスク・ハイリターン」、「低リスク・低リターン」の2つのギャンブルが画面上に提示され、好きな方を選んでステージをクリアしていくというもの。なるべく多くのステージをクリアすることが求められ、各ステージにはノルマが設定されています。
その結果、未治療もしくは治療期間が短い患者群はハイリスク・ハイリターンのギャンブルを選択する傾向が強いことが判明。ノルマが低く簡単にクリアできるステージで、その傾向が強くなりました。さらに、治療期間が短いほど、ノルマが低いステージで必要のないリスクを冒す傾向もみられました。患者以外の人はノルマに応じて柔軟にリスクの取り方を切り替えられるのに対し、未治療あるいは治療期間が短い患者は切り替えがうまくできないことが読み取れます。
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また、患者の脳では、状況判断に関係する「背外側前頭前野」の活動が低下していることもわかり、電気などで脳に直接刺激を与える治療も今後考えられます。研究グループは「依存症の神経基盤を明らかにしたことで、多様なギャンブル依存症の病態の理解、新たな治療法開発につながるものと期待している」としています。(菊地 香織)
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