はあちゅうの“セクハラおじさん告発”に見る、「結局は自分にしか興味がない」人物像

3

2017年04月20日 22:05  サイゾーウーマン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サイゾーウーマン

はあちゅうオフィシャルブログより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「無自覚な人は根が深い」はあちゅう
『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京、4月16日)

 その昔、高畑裕太がまだテレビに出まくりだった頃、『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に俳優・渡辺裕太と共に“二世枠”で出演したことがある。その時、司会の坂上忍が、2人に「芸能界で生きていくにあたり、一番厳しいことは何か?」と尋ねると、高畑は「何かを見つけていかないといけないところ」、渡辺は「やりたいと思った以外の仕事でもやらないといけない」と答え、坂上に「それは二世ならではの答え」と不興を買っていた。

 坂上いわく、芸能界で大変なのは「(簡単に)テレビに出られないところ」とだそうだ。これは、芸能人にとって最初の仕事をつかむことが、どれだけ大変かと言い換えられるだろう。実績がなければオファーがなく、オファーがないから、実力を披露することもできずに仕事が来ないという悪循環にはまってしまう。そういった世界で、二世などコネのない女性が売れたいと思った時の最終手段は“枕営業”だろう。

 しかし、女性側に“カラダを張ってでものし上がってやろう”という野心がない場合、枕営業を持ちかけることは、ハラスメントでしかない。女性の生き方や恋愛などに関する著書を出版し、女性ファンから支持を得る作家・ブロガーのはあちゅうは、4月15日放送の新番組『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京)に出演し、司会の古館伊知郎、坂上、千原ジュニア相手に、テレビや広告業界の「俺と寝ておくといいことがあるよと匂わせるオジサン」について発言。その具体例として、「番組の偉い人から、“打ち合せ”と言われて出かけてみたら、バーだった」を挙げて、怒っていた。

 このほかに、進歩的とされるIT業界などで働く男性にも、「オンナがタバコを吸うなんて」「(自分はできなくていいけど)オンナには料理ができてほしい」「(自分は適当な格好でいいけど)デートの際、オンナにはメイクばっちりで来てほしい」といった昭和的な男尊女卑の人が多く、「無自覚な人は根が深い」と語った。

 男性のあり方を問うネタは、女性の共感を呼びそうなので、そこがはあちゅう人気の一因だと思うが、論理の甘さにも気づかされる。例えば、「“打ち合せ”と言われて出かけてみたら、バーだった」発言に、古館は「バーはダメなの?」と驚いて見せるが、はあちゅうは「人によると思うんですけど」と途端にトーンダウンしてしまう。「人による」発言の解釈は、「仕事の打ち合わせといって呼び出してきた男性が、タイプであればいい」もしくは「女性によっては、仕事の打ち合わせがバーであることを不快に思わない」の2通りあるが、はあちゅうがゲストとして招かれた番組で、他人の話をするとは考えにくいだけに、はあちゅうが前者を意図して発言をした可能性は高い。

 はあちゅう発言の真意を前者と仮定すると、「仕事の打ち合わせ場所としてバーを指定してくる男性はイヤだけど、男性によってはアリ」となるわけで、「セクハラに怒っている」という話なのではなく「嫌いな人と飲みたくない」という“自分話”にすり替わってしまっている。セクハラが根絶しない理由の1つは、「Aさんがやるとセクハラに感じるが、BさんがやるのはOK」というように、セクハラの基準が受け手の判断に任されているからだが、はあちゅうは自分がそれに加担していることに気付いていない。「無自覚な人は根が深い」というはあちゅうの発言は、彼女自身にあてはまっているのである。

 はあちゅうは、視野が広いとも言えない。彼女は、「突然仕事の電話をしてくる人たち」に怒りを感じるそうで、連絡手段はほか(メールやLINE)にもあるのに、電話をかけてこられると、「何この人、私の時間を邪魔してきている」と思うらしい。電話が個人の時間を奪うということに納得できる人は多いだろうが、相手の立場に立てば「それだけ急いでいる」「確かな返事がほしかった」とは考えられないだろうか。坂上は、そんなはあちゅうを「自分が主導権を握りたがる」と分析し、彼女はその意味をまるで理解していないようだったが、坂上には彼女が、「私の望むように、私を扱って」と訴える“お姫さま”に見えたのではないだろうか。

 既存の価値観に風穴を開け、多くの信奉者を集めているように見える人物でも、話をよく聞いてみると、自分にしか興味がない。ネットの特徴は、すなわち、はあちゅうの特性でもある。女子大生時代からカリスマブロガーとして活躍してきた、つまり仕事に困ったことがないことも、はあちゅうの視野の狭さを後押ししていると言えるだろう。

 「炎上」は、はあちゅうの代名詞だが、ネットというものは、誰かの反応がなければ成り立たないことを考えると、炎上は“才能”である。はあちゅうが火をつけ、その火を消すまいとネット民が薪をくべ、私のような者が、そこからこまごまと字を連ねる……そんな食物連鎖的なつながりができあがっているのだ。はあちゅうがネットからいなくなる日は、ネットがなくなる日。私は本気でそう信じている。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

このニュースに関するつぶやき

  • 枕営業無しで仕事オファーて人によるんじゃない。働いた金で贔屓の会社の円盤沢山買って関連会社を支援。手出しなくアフターフォロー万全。枕営業しないけどね〜
    • イイネ!0
    • コメント 1件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定