乳がんの影響で肝臓が肥大化する仕組みを解明

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2017年04月21日 12:02  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

遺伝子発現のリズムをかく乱


画像はリリースより

 いまや2人に1人ががんに罹患するという時代。がん治療において細胞ががん化するメカニズムの解明が進むなど、治療の選択肢は増えつつあります。一方、がんはがん細胞に侵されていない正常な臓器にも影響を与えることも知られています。肝臓肥大もそのひとつですが、その仕組みはよくわかっていません。

 このほど、マウスを使った実験で、乳がんが肝臓の遺伝子発現の“リズム”を乱すことを発見し、そこから肝臓肥大に至る分子メカニズムを解明したと、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、東京大学などの共同研究グループが発表しました。

 実験には、悪性度の高いタイプの乳がんを移植したマウスを使用。移植後、肝臓や肺、腎臓、心臓と行った主要臓器における遺伝子の現れ方を記録しました。その結果、肝臓において、「Nr1d1」という遺伝子の発現に異常が認められ、さらなる解析を行いました。

“時差ぼけ”遺伝子が関与

 異常が認められたNr1d1は、遺伝子の発現パターンの概日リズム、いわゆる体内時計を生み出す転写因子の1種で、“時計遺伝子”とも呼ばれています。遺伝子によってDNAから写し取られるRNAやタンパク質の量そのものに、約24時間の周期が存在するものがあり、マウスの肝臓では1,000以上の遺伝子の発現パターンに概日リズムがあることがわかっています。

 研究グループでは、「乳がんが肝臓の概日リズム遺伝子の発現パターンをかく乱する」と仮説を立てて解析。すると、ある遺伝子の発現ピークが乳がんマウスと正常なマウスでほぼ半日ずれており、発現パターンが“昼夜逆転”していました。さらに、リズムが乱れた“時差ボケ”遺伝子による生理学的反応に着目して実験を重ねたところ、乳がんが肝臓に酸化ストレスの上昇をもたらすことや、肝細胞のDNA含有量を増加させて細胞のサイズを大きくすること、そして、肝臓を肥大させることがわかりました。

 今回の実験結果から、乳がんが肝臓の概日リズム遺伝子の発現パターンに独特な影響を与えることが判明しました。研究チームでは「根治が見込まれる治療が受けられない場合でも、がんが個体に与える影響を制御しながら、がんと共存できるような手法を開発する基盤情報となることが期待される」としています。(菊地 香織)

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