「了解いたしました」でいいじゃないか!

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2017年04月21日 15:00  citrus

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目上の人や仕事相手に「了解いたしました」は使ってはいけない! それは敬語じゃない! 正しくは「承知いたしました」である!

 

いつの間にか、そんな説が広まっています。とはいっても「常識」というほどではありません。「知る人ぞ知る」ぐらいの広まり方ですが、それがまた余計に厄介です。

 

「了解はダメ」という話を最初に聞いたのは、7〜8年前でしょうか。最初は「へー、そうなのか。ひとつ賢くなった」と素直に思って、少しのあいだ意識的に「承知」を使ってみましたが、どうにもしっくりきません。世間を見わたしても「了解いたしました」が「承知いたしました」に駆逐されていく気配もありません。

 

ちょっと調べてみると、結論としては「どっちでもいい」ようです。

 

「了解しました」や「承知しました」は、どっちにせよくだけた表現なので、目上の人にはNG。「了解いたしました」「承知いたしました」には、どちらも謙譲の意味が含まれているので大丈夫。さらに丁寧さを出したいなら「承りました」や「かしこまりました」という表現がオススメ。とまあ、ざっとそんな感じでした。

 

「承」に謙譲の意味があるので「承知」のほうが偉くて「了解」はダメ、みたいな話が出てきたようです。ま、この手の話は「正解」がないので、いやいや了解はやっぱりダメでしょ、とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが。

 

というわけで、今ではまた「了解しました」や「了解いたしました」を使っていますが、まだ心配の種は尽きません。「知る人ぞ知る」ぐらいには「了解はダメ」という説が広まっているので、その説を信じている人がこっちのメールを読んだときに、

 

「おいおい、こいつ『了解』を使うのは間違いだって知らないんだな。やれやれ……」
「プププ、いちおう物書きのくせに、平気で『了解』を使っちゃうなんて。プププ……」

 

なんて思われている可能性がないとは言えません。自分としてはどっちでも大丈夫なんだという“信念”に基づいて使っているのに、だとしたらやるせない展開です。

 

 

文化庁の平成25年度「国語に関する世論調査」の結果を読んでいて、前々からモヤモヤしていた「了解か承知か問題」があらためて気になりました。

 

この調査でも、たとえば「やぶさかではない」は、本来の「喜んでする」という意味だと思っている人は約34%で、「仕方なくする」と間違えて覚えている人が約44%もいるという結果が出ています。

 

うわわわー、今まで頼まれごとのメールに返事を出すときは、前向きな姿勢を示そうとして、さんざん「やぶさかではありません」と書いていたのに、もしかしたら「仕方なくやります」という意味にとられていた可能性が高いってことでしょうか!? ああ、穴を深く掘って底で体育座りしたい……。

 

言葉というのは、本当に難しいものです。「あっ、この人、使い方間違えてる」と得意気な気分になったとしても、こっちの知識がないだけのケースも多いでしょう。ちょっと前にこのコーナーでも「ら抜き言葉」が話題になりましたが、あれだって、絶対に間違いだとか、使うなんてケシカランなんてことは言えません。

 

 

「了解」も「ら抜き言葉」も、半径100メートルぐらいの世界ではちょっと大きな顔ができるぐらいにそこそこ高学歴でそこそこ教養があると自負している人たちにとっては、あるいは、実生活ではサエないけど屁理屈や口先だけは一人前なタイプにとっては、お手軽にプライドを満たしてくれる格好のターゲット。使っている人を見つけたら、鬼の首をとったみたいに「おいおい」とか「プププ」と見下して快感を覚えたがります。

 

うっかりそっち側の人にはならないように自分を戒める意味も込めて、私はこれからも胸を張って「了解いたしました」を使い続けます。「プププ」と笑わば笑え。生半可な認識で他人を断罪できる浅はかなヤツらに、言葉というものへの畏怖の念や己の知識への謙虚さを持てない傲岸不遜なヤツらに、何と思われようとかまいません。誰も気がつかないし誰も喜びませんが、目に見えない何かとひそかに戦い続けます。

 

ただ、絶対に「承知」を使いたくないわけではありません。親しい相手に対して簡潔に力強くOKの返事をするときは、積極的にこう書きます。「がってん承知の助!」。これはこれで、昭和へのリスペクトなどいろんな想いを込めた私なりの静かな戦いです。

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