なぜそこまで二輪車に冷たい?…二輪車生産王国ニッポン、国内の売れ行き激減がとまらない

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2017年04月21日 20:00  citrus

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日本の二輪車販売台数の落ち込みが止まらない。日本自動車工業会の統計によれば、1980年には237万台をマークしていたのに、35年後の2015年は32万台にまで下落している。

排気量別に見ると、50cc以下の原付一種が198万台から19万台と、10分の1に減っていることが目立つ。他の排気量を見ると、51〜125ccの原付二種は20万台から9万台、126〜250ccの軽二輪は9万台から5万台、251cc以上の小型二輪は10万台から4万台と、やはり落ちてはいるけれど、原付一種ほどの激減ではない。

筆者が運転免許を取得した1980年頃、原付一種はヘルメットを被らなくても良かった。今では信じられないことだが、原付=原動機付自転車という呼び名を連想させるようなルールだったのだ。しかしその後、ヘルメットの装着が義務付けられ、多くの交差点で自転車と同じ二段階右折が適用される。でも最高速度は30km/hのまま。しかも電動アシスト自転車という新たなライバルが登場したことで、原付一種の売れ行きは急激に落ち込んでいく。

これに追い打ちをかけたのが駐車違反取り締まりの厳格化だ。それまで二輪車は、路肩や歩道に駐車していても反則キップを切られることはほとんどなかった。それが突然、四輪車並みの厳しい取り締まりを受けることになったのだ。四輪車とは違って、当時二輪車の駐車場はほとんどなかった。つまり出かければ捕まる可能性が高い。これでは乗らなくなるのは当たり前だ。

日本が二輪車を作っておらず、人々の興味もほとんどない国なら分かる。しかし2013年のデータでは、本田技研工業、ヤマハ発動機、スズキの3社で、世界生産台数の半分を占めるという二輪車王国なのだ。なのに国内販売が振るわないのは、前述したような二輪車冷遇の状況が原因だと、四輪車よりも前に二輪車の運転免許を取った筆者は思っている。

欧州や東南アジアの都市では、日本よりもはるかに二輪車を多く見かける。駐車場も、自転車と共用の場所を含めて、あちこちに用意されていて困ることはない。四輪車より時間が正確で場所を取らず、自転車より速くて快適というメリットを合理的に判断し、多くの人が二輪車を選んでいるのだろう。それに比べて日本は、昔の高校での「三ない運動」に象徴されるように、とにかく二輪車をネガなイメージで捉えがちだ。世界一の生産国とは思えない扱いである。

特に原付は、アジアや欧州の主流は125ccになっており、欧州では四輪車の免許で125ccまで乗れるのに、日本は50cc限定。しかもその50ccは、いまだに30km/hという理不尽なスピードリミットが残っている。性能では同等なのにヘルメットなしで乗れる電動アシスト自転車に勝てるわけがない。

ただここまで冷遇された結果、四輪車の世界より望ましい現象も起こっている。四輪車では日本独自のルールが用意されている排出ガス規制や騒音規制が、二輪車では最近欧州と共通化されたのだ。それまでは日本仕様だけ最高出力がガクッとダウンしていて、それらを嫌うライダーたちのために、海外向けに作られた車両を日本で売る「逆輸入車」というカテゴリーが存在していた。欧州車は妙に太くて長い専用マフラーを装着したモデルもあり、せっかくのデザインをスポイルしていた。

でも日本の規制が海外と共通化されたことで、いまは日本仕様も欧州仕様も基本的に同一スペックとなりつつある。たとえばホンダの1000ccスーパースポーツCBR1000RRは、従来は118psだったのに対し、今年3月に発表された新型は192psにまでジャンプアップしている。200kgに満たないボディに192psが必要かどうかはさておき、国内仕様と海外仕様の共通化はメーカーにとってもユーザーにとってもうれしい。でも海外ではもともとこうしたスペックの二輪車を買えるうえに、多くの人が価値を認めているわけで、日本はやっぱり冷たいと思ってしまうのである。
 

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