Q : スポーツモデルほど“太くて薄いタイヤ”を履いてますよね。太くて薄いタイヤは、走行性能にどんな影響があるのでしょうか。カッコだけですか?(千葉県42歳男性)
A : スポーツモデルが“(タイヤ幅が)太くて(タイヤ側面の厚みが)薄いタイヤ”を採用する理由は、見た目のカッコよさと走りのよさの両方ですね。むろんそれはスポーツカー以外のすべてのクルマにも当てはまりますが、とりわけスポーツカーの場合は見た目も走りも、そのクルマの存在価値に関わる大事な要素なので、よりカッコよく見えて、走りもよくなるようなタイヤを履いています。
では、「太くて薄いタイヤは走行性能にどのような影響があるのか?」について、わかりやすく、太さと薄さを分けて考えてみましょう。
まず太さについて。同じクルマにどのようなタイヤを履かせても、接地面積はほぼ変わりません。ただし、接地形状が変わって、太いほうが横長になります。すると横方向のグリップが増して、コーナリング性能が向上します。ではデメリットはというと、太いと走行抵抗が増すので、実際には加速性能が落ちるし、燃費も悪化します。細かい話をすると、前面投影面積(正面から見たときの面積)が増えて空気抵抗も大きくなるので、燃費だけでなく最高速が伸びなくなったりします。BMWのi3が燃費向上のため、積極的にタイヤ幅を細くしたことも話題になりました。
一方、薄さについては、ひとことでいうと薄いほうがハンドリングがよくなります。タイヤというのは入力によって変形しますが、薄いほうが変形が小さくなります。変形が小さくなると、たとえばステアリングを切ったときの応答遅れが低減したり、入力で生じた振動が瞬時に減衰されて収束したりします。むろん、薄いと衝撃を緩和するというタイヤとしての重要な役目をいくぶん削ぐことになり、乗り心地は悪化する傾向となりますが、それが引き締まった感じでよいという人もいて、一概にはなんともいえません。
このように太さと薄さは分けて考えたほうがよいのですが、相乗効果もあり、太くて薄いタイヤのほうが見た目も走りもよいことには違いありません。ただし、世の中でますます燃費の問題が取り沙汰されるようになってきたことを受けて、市販車ではタイヤサイズをやみくもに太くしない傾向が見受けられます。コルベットやポルシェ911など、世界を代表するスポーツモデルも燃費重視の方向で動き始めているようです。