【今週のカレイライフ】自慢話、陰口やいじわる…人間関係に悩む老人ホームの住人たち

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2017年04月26日 21:00  citrus

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誰しも、年をとっていくもの。では、年をとるとどうなるのか? 加齢にまつわる話題をピックアップ。華麗に加齢と向き合うヒントを探っていきましょう。

第5回:老人ホームの人間関係トラブルと、その対処法
 
倉本聰脚本のシニアドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)が話題だ。テレビ業界人専用の老人ホームを舞台に、浅丘ルリ子に八千草薫、五月みどり、加賀まりこという往年の大女優たちが次々登場。石坂浩二演じる主人公に迫ったり、なじったり、翻弄したり。楽しそうにすったもんだしている。

価値観も生活習慣もまるで違う者同士が共同生活をすれば、衝突は避けられない。実際、老人ホームで暮らしている方々に聞くと、「結局、一番の悩みは人間関係」(82歳・女性)だという。では、老人ホームで求められる“コミュ力”とはどのようなものなのか。有料老人ホームで暮らす人たちに聞いてみた。


■とにもかくにも「自慢」は嫌われキャラへの片道切符

「老人ホームで嫌われるのはやっぱり、自慢話をする人。でも、本人はただの思い出話や雑談のつもりでいることも多いんだけど、“あの人は自慢屋だから”という理由でどんどん人が離れていく」(78歳・女性)

自慢のなかにもリスクが高いものと、低いものがあるという。例えば、比較的寛容に受け止められていたのが、子どもや孫の自慢だ。

「誰でも子どもや孫は可愛いし、“うちの子は優秀だから仕事も忙しくて、なかなか面会にもこられない”とでも思っていなければ、やっていられないでしょ」(84歳・女性)

男性に多いのは「現役時代の役職自慢」。好かれはしないものの、「よっぽどつらいのね」「他に話題がないみたい」と同情に転じることが少なくないとか。本人にとって嬉しいかどうかは別として、不憫だからという理由で多少は大目に見てもらえるらしい。

一方、確実に嫌われるのが「以前住んでいた家」自慢だという。

「“昔住んでいた家はリビングが20帖あって……”と聞かされてもねえ。そんなに素晴らしい家だったら、ずっと住んでいればいいじゃない?」(83歳・女性)とバッサリ。辛辣な意見の背景には「こんなところ(老人ホーム)に住む羽目になるなんて思わなかった」という嘆きへの反感がある。話し手としては単なる思い出話であり、おそらく、そこにあるのは長年住み慣れた家を離れた寂しさや「もう戻る場所がない」という不安。しかし、聞かされる先輩入居者たちからすると、「こんなところに住んでて悪かったわね」とモヤモヤするのだ。


■陰口やいじわるへの対処法は?

日頃の言動に細心の注意を払っていても、トラブルに巻き込まれることがある。取材に応じてくれた由里子さん(90歳・仮名)も、ホーム入居者によるいやがらせに遭遇した一人だ。

ある日、由里子さんは食堂に杖を忘れ、取りに戻るが、置いたはずの場所には何もない。探し回っていると、いつも取り巻きを連れ、ボス然として振る舞っていた女性入居者(仮にAとする)がニヤニヤしながら「ボケが始まったんじゃない?」と話しかけてきた。

「おかしいなと思ったけれど、これだけのことで疑うのも申し訳ないので、その時は黙って部屋に戻りました」という由里子さん。しかし、1時間後に再び食堂に行くと、杖は記憶していた場所に置かれていた。その後何度も同じようなことがあり、彼女の仕業だと確信する。だが、問いただしはしなかった。「あまりにもくだらないでしょ。だから一切反応しないことに決めました」と由里子さんはふり返る。

聞こえよがしに陰口を言われても聞こえないフリ。恩着せがましく、隠した杖を渡されても「あら、ありがとう」とにっこり。向こうもつまらなくなったのか、Aさんたちのいじわるもおさまった。

「見ず知らずの他人と集団生活するんだから、もめごとなんてあって当たり前。トラブルに巻き込まれないためには“見ざる、聞かざる、言わざる”に限るわよ。イヤなことを言われても、右から左に流しちゃえば大丈夫」と笑う由里子さん。だが、「若い頃なら、とっくみあいの大喧嘩をしてた」とも言う。

いつ頃、悟りの境地に達したのかと尋ねると、「85歳を過ぎた頃かな」という答えが返ってきた。

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