「服育」という取り組みをご存知でしょうか? この取り組みは、2004年に大阪の繊維専門商社チクマが提唱したことから始まりました。服育net研究所が運営するウェブサイトによると、服育とは「私達の暮らしになくてはならない衣服の大切さやその力について理解し、私達の暮らしに活かす力を養う取り組み」を指し、おもに子どもを対象としたものです。
昨今注目を集めているこの取り組みに、国内の大手アパレルメーカーも賛同しています。ユニクロを擁するファーストリテイリングは、“子どもが自分の意思で服を選びコーディネートをする”体験型の服育サービス「はじめてのコーディネート体験 MY FIRST OUTFIT」を全国のユニクロ店舗で開始しました。
■「服を学ぶ」時代!
このニュースを耳にしたとき、「明るい色の服を選ぶ発想がなかった」という声をクライアントから聞いたことを思い出しました。小さいころは母親が選んだ服を着ていたけれど、高校生になって自分で服を選ぼうとしたとき、選ぶ基準がないことに初めて気づいたというお話でした。
私は服のコンサルタント(パーソナルスタイリスト)として、のべ4,000人近いビジネスマンの買い物に同行してきました。実はこの仕事を始めたきっかけも、先ほどのクライアントと同様に、服のことが“わからない”という悩みを抱えた中学生時代の私自身の体験からでした。
わからないから服で冒険ができず、黒・グレーを中心とした無難な色を着る毎日……。すると、行動範囲も限られてしまいます。なぜそう言い切れるのか? 着る服ひとつで人の行動は変わり、出掛ける先が変わるからです。
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たとえば、服の「色」に注目したとき。色彩心理学という分野からも服育の意義を裏付けることができます。色は目に飛び込んでくる光そのものであり、人間はその見ている色によって気分・感情までも変わります。色は光の波長が反射することで見えているものであって、その波長が視覚を通じて脳が信号としてキャッチしているからです。服の色が人の心に及ぼす影響は大きいのです。
では、「普段から明るい色を選ぶ人」と「そうでない人」で、どんな違いが生まれるのでしょうか? 私は、感情表現能力の発達に影響が及ぶと見ています。
たとえば、普段から明るい色を選ぶ人は、目立つことに躊躇がないためコミュニケーションもオープンマインドの可能性が高いでしょう。一方、そうでない人は目立つことに抵抗があるからこそ、人前で自分をさらけ出すコミュニケーションに苦手意識を感じる人が多いように私には見えます。外向性・内向性は環境による人格形成が強い訳ですが、その環境には「普段から着ている服」も関係しているように感じてなりません。
■服育における「コーディネート」という概念
数多くのクライアントを見て──かつての私も含め──気づいたことは、男性の多くは服と服を組み合わせるルールを知らないということです。その結果、いつも似たような服を選んでしまい、服を着ている当人の心理状態にも変化は生じにくくなります。すると、出掛ける先までもがいつも似通ってしまいます。
現に、ドレスコードがあるホテルのレストランに行くことに躊躇してしまう男性はいまだに多いです。それは、ドレスコードにふさわしい服を知らないからです。もし、あなたが「ファッションに興味がないから」という考えを持っていても大丈夫です。「コーディネート」のルールを知っておけば問題ありません。これは、大人でも今から始められる「服育」です。
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流行を取り入れるためには、いち早くその流れをキャッチするセンスが必要です。一方、コーディネートにおいては、センスはさほど必要ありません。そして、流行にルールはありませんが、服の組み合わせには一定のルールがあります。ルールがあるからこそ“理解する”ことで、コーディネートは習得することができます。すると、誰もが普段着とは異なる服にチャレンジできるようになるはずです。
子どものころから「服育」を施されていれば人生の歩み方さえ変わる、というのは大げさな話ではありません。私が服のコンサルタントとして依頼を受ける件数も相当数ですから、それだけ“わからない”人がいるというのが実情です。私は「服育」に賛同します。そして、より多くの人の人生が服によって豊かになることを願っています!
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