過剰摂取で心臓病の発症リスク増
過剰摂取によって、動脈硬化症や生活習慣病などのリスクを高める「トランス脂肪酸」。植物油などからマーガリンやショートニングを製造する工程で生じるもので、食品安全委員会の調査によると、100g中に平均して、マーガリンは7.0g、ショートニングは13.6g含まれています。これらを材料にしたケーキなどの洋菓子や、牛肉の肩ロースやハラミなども含有量の多い食品として知られています。
健康への影響を考慮し、WHO(世界保健機関)では、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示。海外では規制が厳しい国もありますが、日本人の摂取量は総エネルギー摂取量の0.3%程度で、通常の食生活において健康への影響は少ないとみられています。
しかし、海外の研究によって、トランス脂肪酸を過剰摂取することで、心臓病の発症リスクを高めたり、肥満やアレルギー性疾患との関連が認められたりしています。ただ、発症メカニズムは未解明な部分が多いことから、東北大学大学院薬学研究科の研究グループは、特にリスクが高い動脈硬化症の発症メカニズム解明に着手しました。
細胞死亢進作用が明らかに
研究では、体内で産生された炎症を引き起こす物質(起炎性因子=DAMPs)の漏出や免疫担当細胞のマクロファージの細胞死が、動脈硬化発症に関連することに着目。DAMPsのひとつ、細胞外ATPによって誘導されるマクロファージの細胞死、つまり細胞の“自殺”に対するトランス脂肪酸の影響を調べました。
細胞外ATPは、細胞膜上のプリン受容体P2X7と結合し、その下流でストレス応答性キナーゼASK1を介したp38MAPキナーゼ経路活性化によって細胞死を引き起こすことが知られています。詳細な解析を行ったところ、トランス脂肪酸は、この経路の活性化を亢進することで細胞死を促進する、細胞死亢進作用があることが明らかになりました。
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トランス脂肪酸による細胞死亢進作用は、摂取に伴う動脈硬化症の発症や進展に大きく関わっていることが想定され、これまで謎に包まれていた発症メカニズムの一端を解明する手がかりとなりました。今後は、発症メカニズムの全容解明に向けて、より一層の研究の進展が期待されます。(菊地 香織)
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