インフルエンザを“診断”できる新材料を開発

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2017年05月09日 12:02  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

従来の検査法には課題も


画像はリリースより

 インフルエンザの流行は冬だけではなく、春になっても続いています。厚生労働省の発表によると、4月16日までの1週間に診断された患者数は全国で約22万人。全国各地の学校や保育園・幼稚園などで学級閉鎖や学年閉鎖も相次いでおり、4月21日現在、学級閉鎖は46か所、学年閉鎖は35か所、休校が3か所となっています。

 感染拡大を阻止するには、早期診断による薬の処方が最も有効と考えられています。また、近年は強毒性の鳥インフルエンザなど、新型インフルエンザの流行も危惧されており、迅速かつ高精度にインフルエンザウイルスの型を判別することが求められています。しかし、従来の検査法では、ウイルス検出に関する感度や時間、コストの問題があり、現状では感染拡大を防ぐには十分とはいえません。

 そこで、東京医科歯科大学生体材料工学研究所の合田達郎助教、宮原裕二教授らによる研究グループは、高感度・高精度かつ、その場で診断できる電気的インフルエンザウイルス検出法を実現するため、機能性材料の開発に取り組み、新材料を開発しました。

検出感度は従来の100倍

 研究グループは、ウイルス表面のタンパク質が感染する際、細胞膜表面に存在する糖鎖の種類を認識するという分子メカニズムに着目。検出に用いる材料として、電気伝導性が高く、化学的に安定で、インク液として材料に塗布できるなど、多くの利点を持つ導電性高分子(PEDOT)と呼ばれる機能性プラスチックに目をつけました。

 そこで、A型インフルエンザウイルスが認識する糖鎖配列を組み込んだ導電性プラスチックを新たに合成し、さまざまなセンサー表面に修飾。その結果、A型のウイルスのみが結合することが確認できました。さらに、電気的計測法の検出感度は、従来の免疫法と比べて100倍高いことが判明。糖鎖配列を組み込んだ導電性プラスチックはこれまでにない新材料で、糖鎖の種類と配列を変えることで異なるウイルスの検出にも対応できる汎用性も備えています。

 研究グループは、「今後、その場での診断を可能にする小型化・微細化・低コスト化・省エネ化に適した電気的なセンサーの開発に繋げたい」としており、将来的には、マスクと一体化したウエアラブルセンサーや持ち運び可能なポータブル検出器などの開発に貢献することが期待されます。(菊地 香織)

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