『進撃の巨人』『CRISIS』サントラ手掛ける澤野弘之、アニメと実写で楽曲はどう変わる?

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2017年05月09日 15:13  リアルサウンド

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『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』ORIGINAL SOUNDTRACK

 アニメファンを中心に、絶大な人気を誇る劇伴作家の澤野弘之。現在放送中のアニメ『進撃の巨人』Season2(TOKYO MXなど全21局)のほか、ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)でも、澤野がサントラを担当している。(※『CRISIS』はKOHTA YAMAMOTOとの共作)


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 澤野といえば、劇伴の中でもアニメサントラのイメージが強い。それもそのはず、アニメ制作にはほぼ毎年携わっているのに対し、地上波の民放ドラマで劇伴を手掛けるのは、2011年放送の『マルモのおきて』(フジテレビ系)から実に6年ぶりとなるからだ。最近では、映画もほとんどがアニメ作品である。とはいえ、過去には『医龍-Team Medical Dragon-』(フジテレビ系)や連続テレビ小説『まれ』(NHK総合)といった話題作の音楽も多数担当してきた澤野。アニメと実写作品では、彼の紡ぐ楽曲に一体どのような違いが見られるだろうか。


 まずは、澤野がこれまで制作を担当した作品の傾向から分析したい。アニメの場合、今期の『進撃の巨人』と『Re:CREATORS』を筆頭に、『青の祓魔師』や『ギルティクラウン』といったバトルファンタジーものが大半を占めている。しかし実写作品では、扱われるテーマが多岐にわたる。『CRISIS』や『BOSS』のような刑事ものから、『医龍-Team Medical Dragon-』や『魔王』といったシリアス系、『まれ』や『マルモのおきて』に代表されるホームドラマに至るまで、幅広く網羅しているのだ。


 作品のジャンルやテーマが異なれば、音楽のアプローチにも当然違いが出てくる。澤野サントラといえば、デジタルやバンドサウンドを駆使した躍動感溢れる楽曲や、重厚感のあるオーケストレーションの印象が強い。今回の『CRISIS』でも、アクションシーンに合わせてアッパーチューンで迫力ある楽曲が目白押しだ。SNSを見ていても、「CRISISのサントラかっこいいと思ったら、やっぱり澤野さんだった」というような、納得の声も多い。しかし、ホームドラマにそうした重たいサウンドはマッチしないだろう。ゆえに、日常的な世界観の実写作品では、音圧も控えめで軽やかなタッチの曲がメインとなる。逆に、アニメに多いファンタジー作品では、劇伴にも雄大さや異国情緒感などが必要とされる。そのため、たとえば『進撃の巨人』Season2のサントラでは、12型(44人編成)オーケストラで二重録音を試みたという。澤野いわく、壮大な世界観を演出するにしても、そこまで贅沢なレコーディングをしたのは初めてだったそうだ。(参照:https://www.youtube.com/watch?v=TuKBdumLpPg)また、「(実写とアニメで)音楽の作り方に違いはあまりないんですけど、ドラマよりアニメの方が、いろんなことにトライできるなとは思います」(参考:https://akiba-souken.com/article/26847/?page=1)とも語っている。


 そうしたアプローチの違いは、サントラの曲名からもうかがえる。澤野サントラには個性的な曲名が多い、というのはファンのあいだでは有名な話だが、それがアニメサントラだとより顕著になるのだ。


 たとえば『魔王』の場合、「pSYCHOMETRy」「LiVE/EViL」のように表記に特徴はありながらも、意味が読み取りやすい曲名が付けられている。『まれ』では「Mt氏」「Otto64」(読み:やまし、おっとろし)といった当て字のようなものが増えるが、これもまだ序の口。アニメサントラになると、「巨♀〜9地区」「犬Kあ3L」(読み:めがたきょじんちく、いぬかさる)など、さらに謎めいた曲名が目立つようになる。特殊記号が使われるのは当たり前で、一瞬文字化けを疑ってしまうほどだ。澤野いわく、タイトルにはなるべく意味を持たせないよう、意図的に不可解な文字列にしているそうだが、同時に「僕としてはお遊びの要素が強い」のだそうだ。(参考:https://cakes.mu/posts/13052)つまり、言い換えれば「アニメ劇伴の方がドラマ劇伴よりもお遊び要素が強い」のではないだろうか。


 普段、映像作品を見ていても、サントラのタイトルにまでは気がまわらないという視聴者がほとんどだろう。しかし、澤野サントラの場合、遊び心が存分に詰まったタイトルにもぜひ注目してほしい。サントラを比較する際にも、音楽的なアプローチ以外に曲名を照らしあわせることで、両者の違いがわかりやすく浮かび上がってくる。


 今回のように、澤野が地上波で実写とアニメ作品の両方を担当するのはなかなかない機会だ。『CRISIS』の曲名などはまだ公開されていないが(5月3日現在)、この折にぜひ両放送でサウンドを聴き比べてみてはどうだろう。(まにょ)


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  • 土曜日、澤野さんのLIVE行ってきます�ϡ���進撃のサントラを生演奏で聴ける幸せ。あとドラマ「魔王」のあの曲も。
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