生存日数を高齢者と非高齢者とで比較
画像はリリースより
国立がん研究センターでは、高齢患者の進行がんの適正な治療を検証するため、同センター中央病院を受診したがん患者さんの登録データを活用した予備調査を実施しました。
がんの種類は、肺、胃、大腸、乳、肝臓の5種類。がん患者さんのがん登録データを用いて、進行がんにおける抗がん剤治療と、緩和治療(放射線治療を含む)での生存日数を高齢者とそうではない患者さんとで比較しました。
具体的には、患者さんのがん登録データから治療記録、予後情報を用いる後ろ向き観察研究の手法で調査。一般的な組織型の患者さんを抽出し、病期などの情報が不足している患者さんは除外しました。
さらなる大規模調査が望まれる
がんの種別ごとの結果をみると、肺がんでは、75歳未満では明らかに抗がん剤治療ありの患者さんの生存期間が長い一方で、75歳以上ではそれほど大きな差はありませんでした。しかし、被験者数が極端に少ないため、治療による効果の違いを評価することは困難でした。乳がんでは、「ステージI」の生命予後は非常によく、5年生存率は79歳以下では94%を超え、80歳以上でも75%でした。「ステージIV」になると、生命予後が全体に悪いことや患者数が少ないことなどから、年齢による差はみられませんでした。
このように、年齢による違いも見受けられましたが、今回の検証では、臨床的、統計的に意味のある結果は得られませんでした。原因として、解析対象者のなかに70歳以上の患者さんが2割程度しかおらず、少なかったことが挙げられます。同病院の患者層が、日本全体のがん患者の集団を代表していないため、今回の解析には限界があり、科学的エビデンスの有無を問える成果を出すことができませんでした。
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今後、高齢者へのがん医療の効果について明らかにするには、全国がん登録などのデータベースと死因統計を用いた大規模調査により解析を行う必要があります。同センターでは、がん登録の正確な入力、大規模データを用いた研究を行う必要性を強調した上で、「がん患者また医学・社会学的に必要な評価をするための項目を検討し、過不足なく必要な情報を収集するシステムや方法についても検討が必要」としています。(菊地香織)
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