卵子の成熟を助ける新たな分子を発見

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2017年05月26日 12:02  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

卵巣の働きが悪いと不妊に至るケースも


画像はリリースより

 命の“始まり”となる「卵子」。その卵子のもとである原始卵胞を大量にストックしているのが卵巣です。卵管に支えられるようにして、子宮の両脇にある器官で、ウズラの卵のような形をしています。排卵が起こる年頃になると、脳下垂体の指令で分泌される女性ホルモンの影響を受けて原始卵胞が成熟し、受精可能となった卵子が1か月に1個ずつ排出される「排卵」が始まります。

 原始卵胞は数百万個もストックされていますが、このうち成熟卵胞になるのはわずか400〜500個。しかし、卵胞の発育が遅くなかなか排卵しない「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」のような疾患もあり、排卵誘発剤などを使った治療が必要となる場合もあります。卵巣の働きが悪いと、排卵障害をはじめ、卵子の未成熟、生理周期異常などを引き起こし、不妊症の原因となることもあります。

 九州大学大学院の研究グループは、卵子の成熟を助ける新しい分子を発見したと発表。これは、「PRIP(Phospholipase C Related but Catalytically Inactive Protein)」という分子で、卵巣における卵胞成熟過程に作用することを明らかにしました。

アンチエイジングにつながる可能性も

 研究グループは、PRIP遺伝子欠損型マウスを作製し、野生型マウスと比較。その結果、欠損型マウスは出産回数が少なく、一度の出産で生まれる子どもの数も少ないことがわかりました。さらに調べたところ、性周期が乱れ、排卵数が減少していました。PRIPがないと、脳からのホルモン分泌やシグナル伝達機構に不具合が生じて卵胞の成熟がうまく進まず、成熟した卵胞が少ないために排卵できる卵子数が少なくなるものと考えられます。これによりPRIPは卵子の成熟に必要ということが明らかになりました。

 また、研究に用いたPRIP遺伝子欠損型マウスは、野生型に比べて非常におとなしく、野生型が活発に活動している時間帯でもじっとしているという違いがありました。PRIPがなくなることで、生殖や骨代謝に支障をきたすだけでなく、このような行動にも影響しており、研究者は「興味深い」としています。

 研究グループでは「いまだに不明点が多い生殖機構の基盤研究に進展をもたらすとともに、妊娠・出産を妨げる疾患の病因・病態の解明につながることが期待されます」とコメント。また、卵巣には、女性ホルモンの分泌という働きもあることから、卵巣の働きが良好であり続ければ、老化を遅らせる「アンチエイジング」につながることも考えられ、その手がかりとなる可能性もあります。(菊地 香織)

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