物流業界大手の佐川急便が今月6日、ドライバーに週休3日制を導入することを明らかにした。すでに東京都と山梨県で正社員の中途採用のために週休3日制での募集を始めているそうで、状況を見て他の地域や既存のドライバーなどへ適用を拡げていきたいとしている。
理由はもちろん、インターネット通販の急増でドライバー不足が深刻になっているため。待遇を良くすることで人材を確保しようということなのだろう。
ちなみに佐川急便のドライバーは、現行の週休2日制では勤務時間は1日8時間だが、週休3日制では10時間になるとのこと。現状を基準とすれば2時間の残業になるわけだが、もともと宅配便の配達時間帯はそれより長い。2時間多く働いてもらう代わりに休日を増やすというのは、働く側からすればありがたいと思う人が多いのではないだろうか。
|
|
それでも勤務時間は少なくなるので収入も減る見込み。そこで佐川急便ではコンビニエンスストアでのアルバイトなど、一定レベルの兼業は認めていく方向だそうだ。
同じ日には佐川急便と並ぶ宅配大手、ヤマト運輸も週休3日制の導入を考えているというニュースも入ってきた。ヤマト運輸といえば今年2月、やはりインターネット通販の急激な増加でドライバーの労働環境が悪化していること受け、労働組合側が春闘で荷物の取扱を抑える要求を行うと報じられたことが記憶に新しい。これを受けて経営側は4月、実に27年ぶりの料金値上げを行うと発表した。
|
|
■米国ウォルマートでは従業員がについでに配達?
荷物の増加に悩んでいるのは日本だけではないようだ。米国では小売り大手のウォルマートが、通常は専用トラックで配送するオンラインショップでの注文品を、小売店の店員が帰宅途中に配送するプログラムを試験的に始めたという。もちろん店員は配送料をもらえる。
|
|
この発想はウーバーなどのライドシェアに通じるところがある。筆者も米国で何度か利用したことがあるライドシェアのドライバーも、やはり空いている時間を使って自家用車で他人の移動をアシストしている。
日本では現状、二種免許を持っていないドライバーが有償で旅客運送をするのはいわゆる白タク行為にあたり、交通空白地や福祉目的以外では禁止されている。しかし物を運ぶのであれば白タクではない。
お中元やお歳暮の配送のアルバイトなら筆者も学生時代に経験したことがある。そのときは運送業車の軽トラックや原付バイクを使ったけれど、自家用車で運んでいる人もいた。
あの頃は朝から晩まで配送にかかりっきりが当然だった。しかしライドシェアのようなマッチングアプリの登場で、登録さえしていれば好きな時間に仕事ができるというビジネススタイルが可能になった。シェアリングエコノミー先進国でもある米国ではさまざまな分野で実用化されている。
日本でもウーバーが、デリバリースタッフを持たないレストランが作った料理を一般のサイクリストやモーターサイクルのライダーが出前する「ウーバーイーツ」というサービスを東京で展開している。
ただし宅配ドライバーの不足は首都圏などの大都市で深刻になっているのに対し、大都市は公共交通を利用する人が多く、日本はモーターサイクルやスクーターで移動する人は少ない。つまりこの部分でのマッチングが良くないのは悩みの種かもしれない。
結局のところ、現在も一部の業者が打ち出している無料即配サービスは止め、物流には相応の時間と費用が掛かるという当たり前のことを全員が認識することが、現在の日本の物流にとってはもっとも大切ではないだろうか。