【今週のTOKYO FOOD SHOCK】「うどんが主食」さん「ヨッピー」さん両事案から考える、ネット上の“誠実さ”って…

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2017年06月14日 17:00  citrus

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奇しくも似たような時期に「過去になかった事案」と「過去に何度も話題になった事案」がネットメディアを駆け巡っています。

 

前者はまさかのターゲットでの文春砲「食べログレビュアー「うどんが主食」が「高評価飲食店」から過剰接待(文春オンライン 17/6/7)」。後者は過去に何度も話題になっている「広告・PR記事」について「ヨッピーさんが提起した「記事広告に【PR】と入れるかどうか問題」について、たらればさんの解説が明快だった件(togetter 6/10)」という事案

 

結局のところどちらも、広告主やコンテンツの制作者、情報発信をする側が、ユーザーや読者に対して「誠実な姿勢」を伝えるには何をすべきか、何をしてはいけないかという話に着地します。

 

前者はいわゆる「李下に冠を正さず」という話で「レビュアーは対象となる店から(特に今回の報道のように過剰な)饗応を受けると誠実に見られない」。後者は「コンテンツ制作者が、広告・PR記事に【PR】等の表記を入れないと誠実だと見られない」という話です。コンテンツの背景をどうユーザーに知らせるかなど細かい議論は残されていますが、いずれにしても、現代コンテンツに応じて一定の誠実さを伝えることが重要だという話です。

 

後者はいずれ一定のルールやガイドラインが業界全体で共有されるでしょうが、前者のような、CGM(Consumer Generated Media=消費者生成メディア)はコントロールするのが難しい側面があります。もっとも「コントロールするのが難しい」からといって、「コントロールしなくていい」わけではありません。実際CGMを運営する多くのプラットフォームでは投稿に関するガイドラインを設定しています。

 

実際、今回の騒動の舞台となった食べログも、「対価を目的とした口コミの投稿を禁止」「(無料招待など)通常利用でない場合は「通常利用外口コミ」にチェックを入れてご投稿ください」とガイドラインに明記されています。

 

CGMよりも明確なルールが設定されているはずの「メディア」でさえも、時折売上やPVのために、「ヤラセ」や「飛ばし記事」が発生するわけです。投稿者の良心に任せた「ガイドライン」だけではコントロールしきれない部分が出てくるのは、仕組みとしてやむを得ない面はあるでしょう。

 

もっとも今回、週刊文春が報じたように、高得点をつけた店からブルガリの時計や数十万円以上の高級ワインで饗応されていたのが事実ならば、従来型のメディアであれば出入り禁止レベルの大問題です。広告記事でもないのに提灯記事を掲載するだなんて(まともな媒体なら、そんな原稿に編集部がOKを出すわけがありません)、メディアのブランドや信頼が毀損されかねない由々しき事態です。もちろんCGMを運営するプラットフォーム側も、自社サービスのブランドや信頼度が毀損されていいわけはありません。本来であれば運営側で何らかの防止策を想定しておくのが良策かのように思えます。

 

少し話は変わりますが、僕も選考員をつとめてさせていただいている「マンガ大賞」というマンガ賞があります。書店員やマンガ好きなど約100人が毎年、好きなマンガに投票してその年一番おもしろいマンガを決めようという賞です。そのマンガ大賞の内規には「マンガの編集者、デザイナーなど受賞する可能性がある作品の利害関係者は投票権を持てない」という項目があります。ですから、例えば去年まで選考員だったデザイナーが「好きなマンガ家のコミックスの装丁を引き受けた」りすると、翌年は選考資格を失います。ある意味CGM的な性格を持つ賞では、一定の線引きが必要だという判断なのだと思います。

 

マンガ大賞はもともと書店員が中心となって立ち上げた賞なので、各出版社やマンガ家本人と付き合いのある選考員も存在します。それでも「マンガ作品という好きなものを裏切りたくない」という気持ちは大きい。たとえマンガ家本人と友人だったとしても、他の選考員もそうした人間関係は知っているので、気持ちとしてはかえって票を投じにくくなったりもするわけです。

 

今回報じられた内容が事実だとすると、その行状は食べログのガイドラインに抵触する可能性は高い。しかしだからといって、食べログの信頼性が「毀損」されるかというと、おそらくはそうはならないでしょう。むしろ運営サイドとしてはガイドラインなど対策を講じていると周知するはず。「弊社はきちんと運用している」とPRする好機になるでしょう。

 

では「うどん」氏はどうなるのかというと、文春砲のおかげでプロデュースしたといううどんや著書は話題になりまくっています。冠番組も持っていますし、もしかすると今後はレビュアーとしてではなく、芸能界など、これまでとは違うステージでご活躍されるのでしょうか。まさかとは思いますが「実は週刊文春にスクープさせるという炎上商法で、ご本人はホクホクなのでは」という疑念すら湧き上がりかねない盛り上がりです。今後のまっとうなご活躍をますます遠くからお祈り申し上げる所存です。

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