パソコン、スマートフォンをはじめ、何かと忙しく、追われるような現代生活。最近、「浅い呼吸」「口呼吸」「タメ息」など、明らかに不自然な息づかいの人が増えています。実は困ったことに、こうした「呼吸の乱れ」が酸欠状態につながり、さまざまな心身の不調を引き寄せているのです。だからこそ、「ふだんの息づかい」や「体の動き」をちょっと意識して変えれば、「心と体にやさしい呼吸」ができるようになり、驚くほど快調になっていきます。
■あなたも知らず知らずに“息を止めて”暮らしている
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私たちは1日に約3万回も呼吸を行なっています。呼吸のたびに、「息を吸おう」とか「吐こう」とか考えてはいないため、なかなか自分の呼吸のクセに気づくことはできません。心身の不調を招きやすい人には、口呼吸やタメ息、吐く息が短い、呼吸のリズムがバラバラなどの悪いクセがありますが、最も重大な問題を引き起こしているのが、「呼吸が止まる」クセです。慢性的な不調に悩む方や精神的に落ち着きのない方の多くは、無意識のうちに1日に何回も息を止めている瞬間があります。それは「生命の流れ」を止めることに等しく、心身に大きな負担となってしまうのです。
たとえば、シャンプーのとき、パソコンのキーボードを打つとき、モノを取るとき、イスに座るとき……。特にこうした動作は体が力んで息を止めやすいので、少し意識するだけで確実に変わります。呼吸を止めることなく、「新鮮な空気」が体じゅうをめぐるため、心と体の健康をキープできるのです。
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■ムリな「正しい姿勢」が呼吸を浅くしています
「姿勢をよくしなさい」――私たちは子どもの頃からこういわれ、“いい姿勢”をしなければと思っているのではないでしょうか。ですが、“いい姿勢”は肩甲骨を寄せて胸を張るために、ずっと力を入れ続けることになります。すると、呼吸は胸の表面だけの浅い呼吸になってしまい、そのために疲れやすくなってしまうのです。気づくたびに、こうした姿勢をやめるようにしましょう。やめた回数に比例して、心身へのリスクが減ります。
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■一度、息を全部吐ききってみましょう
浅い呼吸、止まる呼吸……そんな呼吸から、心身にいい呼吸を取り戻すために、いい方法があります。一度、息を全部吐ききってみましょう。私たちは、健康診断の肺活量の検査くらいでしか、息をすべて吐ききってみる経験がありませんね。イスに座って腕を上下させながら吐ききる練習をしてみることで、自然に呼吸が深くなっていきます。
- イスに座り、下腹部をへこませて両腕を上へ伸ばし、息を大きく吸ってさらに腕を上に伸ばす。
- 両腕を上げたまま、「スーッ」と音を出して息を吐きながら、下腹部をへこませていく。
- 吐ききったら、大きく息を吸い、さらに両腕を上に伸ばす。
- 息を吐きながら脱力し、両腕を下ろす。しっかり息を吐けるようになると、自然と呼吸が深くなっていきます。
■「朝の1分呼吸」で1日のスタートを快適に
目覚まし時計のアラームでハッと目を覚まし、ベッドから急いで出て、そのままバタバタと身支度! そんな朝が日常になっていませんか? 心と体がバタついた状態で1日をスタートすると、その日1日を乱れた呼吸で過ごすことになりがちです。
朝、目が覚めたらそのままベッドの中で、ただゆっくりと自分の呼吸を確認します。呼吸が体の中心を通り、お腹の深いところまで入っていって、ふくらむ。そして、息が出ていってしぼむ。その繰り返す動きを、1分間、静かにベッド中で確認してから起き上がります。これは、「目覚めること」「起き上がること」というふたつの動作を分けて行なうということ。たったこれだけで心が落ち着き、朝の支度もあわただしくなりません。その日1日をいい気分でスタートさせられるのです。
■肩こり、頭痛、冷え、ダイエット…さまざまな悩みも解決!
実は私自身、かつては、つらい肩こり、ヘルニア、腱鞘炎、偏頭痛、アトピー性皮膚炎など、体のあちこちに不調を抱え、イライラしたり落ち込んだりと気持ちも不安定でした。心身ともに疲れていたのです。それが、呼吸を意識して変えていくことで、自分でも驚くほどラクになっていきました。
これまで4万人以上の方々にも、深い呼吸ができる動作や姿勢、また、簡単にできる呼吸法などを実践していただいていますが、みなさん、「うれしい変化」を体感しています。気持ちが落ち着くことはもちろん、肩こり、頭痛、腰痛などの痛み、花粉症、冷えといった症状、不眠のつらさ、生理痛、不妊といった女性の悩み、高血圧などの数値改善からダイエットなど、さまざまな問題が解決していくのです。
呼吸は正直です。大事にすることで必ず応えてくれます。今回、誰でも簡単にできる日常のコツを一冊にまとめましたので、あなたもどこからうれしい変化が起こるか、楽しみにしてください!
【関連書籍】
『不思議なくらい気持ちが落ち着く 呼吸法』(三笠書房・王様文庫)