昔から「犬は人につき、猫は家につく」といわれるように、猫は自分の暮らしている環境の変化が苦手な動物です。痛いことやイヤなことをされる病院は、猫にとって一番苦手な場所かもしれません。治療のためとはいえ、体を触られたり、注射をされたりするからです。では、どんな病院なら猫は安心できるでしょうか。
■猫の「ごろごろ」に込められた深い意味
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アイルランドのダブリンにある「Just Cats動物病院」は、その名の通り、猫だけを治療するダブリン唯一の猫専門動物病院。猫を預かるキャットホテルも備わっています。そのJust Cats動物病院が先頃、猫好きならおもわず「勤務してみたい!」と思うような求人広告を掲載しました。報酬は、年収2万〜2万5000ユーロ(日本円で250万円〜300万円)で、これはアイルランドの動物看護師の平均だそう。
募集されたポストは「Cat Cuddler」で、直訳すると「猫を抱きしめる担当」。「猫を病院に連れて行くと、大きなストレスになる」と感じた飼い主は、猫を病院に連れて行かなくなってしまいます。それを防ぐため、Just Cats動物病院では猫のことを安心して任せられる「抱きしめる担当」を配置すると決めました。
募集条件は猫に恋していて、猫に優しく話しかけながら猫をなで続けることができて、猫がのどを鳴らす音「ごろごろ」の意味が理解できる人。猫はうれしさや幸せ、安心を感じたとき以外に、体のつらさ、苦しさ、不安、恐怖を感じたときも、気持ちを落ち着かせるためのどを鳴らします。その違いがきちんと理解できるかどうかはとても重要です。また、アイルランド獣医学協議会の認定を受けていることも必須とされています。
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「抱きしめる担当」は、病院に来た猫が安心して診察を受けられるよう、猫の気持ちを読み取り、その猫に一番ふさわしいケアをしなければなりません。撫でたり、だっこしたり、ときにはかまわないでそっとしておくことも必要でしょう。
■ときにはそっとしておくことも必要
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これらの条件をクリアするには、猫が好きなだけではなく、猫という動物、生態、習性について熟知している必要がありますし、個体差も理解していなければなりません。そしてなにより、猫に好かれる体質でなければつとまらないでしょう。猫に好かれる体質は、勉強したり努力したりすれば身につくわけではなく、特定の人に生まれつき備わっています。何もしなくても猫から近寄ってきてくれたら、その人にはその素質があると言えます。
しかし実際に、理想的な「猫つかい」がいるから猫が好んでその病院に行きたがるかどうかというと、そうは言い切れないでしょう。どんなにお気に入りの人がいる場所でも、慣れ親しんだ自分の家が、猫にとっては一番の場所だからです。
ちなみに、アイルランドには「猫嫌いには気をつけろ」ということわざがあります。「猫は自由気ままで人間の思い通りにならない動物なので、猫嫌いは自分の思い通りに人を動かそうとするはずだ」という意味です。こんなことわざがあるぐらい、猫を理解しているのがアイルランドの国民性なのでしょうか。猫を猫らしく愛でてくれるすばらしい国ですね。