「わかりません」はとても、とても重要な言葉です。「教えてください」と同意語といっても過言ではないでしょう。いわゆる、「わからないから、教えて」です。
私たち家族がニューヨークにいた頃、娘の小学校の「父親参観日」がありました(日本と同様です)。女の子20人ほどのクラスです。先生が黒板に問題を書き、「これ、わかる人」と問いました。すると20人中10人が「ハーイ!」「ハイ、ハイ!」「はーい!」と手を挙げました。日本人である私の娘だけ手を挙げません。先生は、手を挙げた中で一番元気が良かったルーシーという子を指しました。ルーシーは机に手を着くやいなや勢いよく立ち上がって大声でこう言いました。
「わかりません!」
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これにはズルッとするくらい驚きました。普通、わからなければ手を挙げません。私の娘はわかっていたのかもしれませんが、恥ずかしくて手を挙げませんでした。それなのにルーシーは堂々と胸を張って「わかりません!」と言ったのです。
ここにアメリカ人と日本人の大きな違いが存在しています。アメリカ人にとって、「わかりません」も答えのひとつなのです。「わかないから、ここ(学校)に来ているの」、「わからないから、教えて」、「私はできない子じゃないの、できる子なの。だから、教えて」なのです。
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大人になってもこの姿勢は変わりません。イチロー(現マーリンズ)がこんなことを言っています。
「日本にいた時も、僕より若くてキャリアのない選手がいろいろと聞いてくることはありました。でも、キャリアを積んだ選手となると、誰もいなかった。こちら(メジャーリーグ)では、3000本安打近く打っている人でもいろいろと聞いてくる。この違いは何なのか」
日本人は仕事(バイトを含め)が慣れてくると、あれこれと人に聞かなくなります。ベテランになればなるほど、たとえ疑問に思ったとして、恥ずかしく感じ、人に聞かなくなります。アメリカ人は違います。何歳になろうとも、わからなければわからないと言うし、「教えて下さい」と平気で頭を下げます。人から学ぼうとする向上心の違いといってしまえばそれまでですが、わからないことを恥と思わないだけのような気がしてなりません。
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日本のプロ野球選手とメジャーリーガーなどは、それこそ大きな差ができます。つねに人から何かを学ぼうとしている選手こそがスーパースターになっています。
「わかりません。だから教えてください」は、日本人の足りない部分を補ってくれるまさに“魔法の言葉”といえるのではないでしょうか。