リアルな心理描写は、少年マンガの皮を被った少女マンガ!? TVアニメ『恋と嘘』原作・ムサヲ&宅野誠起監督インタビュー

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2017年06月24日 21:03  おたぽる

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おたぽる

(C)ムサヲ・講談社/政府通知普及委員会

 DeNAのマンガアプリ「マンガボックス」で2014年8月から連載を開始し、第1話掲載直後から1カ月あたりの総閲覧者数は350万人超、コミックス(講談社より刊行)もシリーズ累計130万部を突破した人気マンガ『恋と嘘』。そんな注目作が、いよいよ7月3日(月)より、TVアニメとなって放送される。



 物語の舞台は、理想のパートナーを政府が決める自由恋愛禁止の世界。初恋相手・高崎美咲と、政府が決めた結婚相手・真田莉々奈との間で揺れ動く少年・根島由佳吏をはじめとする少年少女たちの純粋な恋愛模様を、可愛らしく繊細なタッチで描く、禁断の恋物語だ。



 今秋には、若手実力派女優・森川葵主演による、原作のアナザーストーリーを描いた実写映画の公開も控えている『恋と嘘』。「おたぽる」では、本作の原作者であるムサヲと、TVアニメで監督を務める宅野誠起氏にインタビューを敢行! お二人にアニメの見どころをたっぷりと伺った。



* * *



■「キャラの生っぽさ、リアルさは少年マンガではなかなかお目にかかれない」宅野



―― まずは、アニメ化が決まった時のお気持ちをお聞かせください。



原作者・ムサヲ(以下、ムサヲ) 最初、「アニメ化の話が来てるけど、実現するかはまだ分からない」「7割方は実現すると思うけど、ぽしゃる可能性もあるから……」みたいな感じだったんですよ(笑)。でもその後、(アニメ制作スタッフと)顔合わせをすることになって、そこでようやく決まったのかなと思ったという感じでした(笑)。



―― アニメ化のプロジェクトが動き出したのはいつ頃ですか?



ムサヲ 2015年の年末ぐらいだったでしょうか。本当にやるのかな、とずっと思っていました(笑)。



―― 監督が原作を読まれたのも、そのタイミングですか?



宅野誠起監督(以下、宅野) そうですね。最初に読んだときの感想は「新しいな」と。物語やキャラクター設定などは男性向けですけど、細やかな感情の機微が念入りに描かれていて。そういう男性向けマンガはあまりないと思いますし、女性キャラクターたちの描かれ方にしても、例えば、(高崎)美咲の生っぽさ、リアルさは少年マンガではなかなかお目にかかれない視点だなと感じました。



―― 正式にアニメ化が決定して、顔合わせをされた際の印象はいかがでした?



宅野 実は秋葉原のサイン会にお忍びで先生を見に行ったんですよね。私と担当さんで。



取材に同席していた柴宏和PD(以下、柴PD) たぶん先生初のサイン会ですよね。その時に僕と宅野さんは、楽屋にご挨拶に伺ったんです。あの時アニメ化が決まっていたことを、先生は知ってたんですか?



ムサヲ 決まりそうとは聞いていて。ただ、担当編集さんが用心深い方で(笑)、「でもまだわかんないよね」と。「アニメ化するとしたらあの2人(が担当)だよ」みたいな感じで。



柴PD そうだったんですね。僕と宅野さんも先生がどこまで知ってるかわからないから、なんて挨拶していいのか、アニメ化が決まったと言っていいのか分かんないから「どうも」みたいな挨拶だったと思うんです。ちょっと距離をはかりかねていたというか(笑)。



ムサヲ 自己紹介もしていただいたんですけど、その時点ではお二方のうち、どちらが監督で、もう一人の方はどういう役職の方なんだろう、と思っていました。



宅野 僕はその時、先生はお綺麗な方だなとか考えていましたかね(笑)。



ムサヲ (笑)。その後、最初の打ち合わせのときに、宅野監督から自己紹介を受けて。監督って、何かもっとふんぞり返ったり、怖いイメージがあったんですけど、凄い物腰の柔らかい方だと思いました。




■「キャラの裏腹な二面性、微妙な表現をどうやって絵で再現するか」宅野



―― 実際に制作が進んでいく段階で、物語の内容をつめたり、ムサヲ先生から資料を提供されたりしたかと思いますが、そのあたりはいかがでしたか?



宅野 まず、シナリオ打ち合わせを毎週やっているんですが、先生は地方にお住まいなので、月に一度上京されるときに参加してもらっています。基本は原作に沿った形ですが、どうしてもエピソードの取捨選択が必要になったり、TVアニメとしてどういった話にするかという部分も含めて相談させてもらっています。



 特に、まだ原作が完結していませんから、TVアニメでの着地点についてはプロットと表情カットをいただいたいて、かなり細かい内容、台詞一つひとつを、先生と密にやり取りさせてもらいました。



―― 先生が進めている連載とは別のアニメ用のプロットということですか。



宅野 そうです。それに加えてまだ作品に登場していないもの、物語になる前のものをいただいたりとか。あと、この作品は繊細な表情が要求されるので、セリフだけではなかなか推し測れない、キャラクターの表情や感情の機微についても教えていただいています。口ではそういっているけど、実は……という、裏腹な二面性、微妙な表現をどうやって絵で再現するのか。非常に苦労しつつやっていますが、そういう面で本当に助けていただいていますね。



 デザイン面も、たとえば(五十嵐)柊ちゃんの後ろのマフラーの盛り上がりとか、先生は線一本一本にこだわられていて。



ムサヲ 細かいですよね(笑)。



宅野 細かいところへの執着心というか(笑)、でもそれは画面に表れる部分ですから。そのあたりの資料もいただいているので、現場のアニメーターさん方の助けになっています。



―― 確かに物語の中でキャラクターたちがちょこちょこ髪形をアレンジしていたり服装を変えているあたりが細かくて、丁寧だなと思います。



宅野 私は40の男ですし、高校生のファッションは全然分からないですから(笑)。そういうリアルな女子の感覚は、先生が非常にこだわられているところだと思いますので、色々教わっています。加えて色味も……例えば同じピンクだとしても、微妙な紫よりのピンクなのかオレンジよりなのか。そのあたりの先生のセンスも、画面になるべく反映したいです。




■美咲と莉々奈、二人の“肉感”の違いはムサヲ先生のこだわり



――先生はご自身の作品が初めてアニメ化されていく過程について、どのように感じられていますか?



ムサヲ 私は高校生くらいの暇なときに、姉妹で好きなアニメのOP映像だけを入れて集めたOP集とかを作っていたんです。今は公式側がネット上で映像を配信していますが、当時はまだそういったのがなくて。なので、家で自作の映像集を一日中見てるみたいな人だったんですよ。



 今回いただいたOPの絵コンテを、曲と照らし合わせながら見たら、すごくかっこいい、良いOPで。私はアニメの仕事について詳しいことは全然分からないですけど、「あっ!(宅野監督は)凄い方なんだな」と(笑)。



―― ちなみにどんなアニメのOP映像がお好きだったんですか?



ムサヲ 結構幅広いので、きりがないんですよ、OP集は600本分くらいありましたから。特に挙げるとしたら『新世紀エヴァンゲリオン』とかは好きでしたね、疾走感があって。『恋と嘘』のOPでもカットがターっと入るシーンがあるんですけど、やっぱそこがお気に入りです!



―― シナリオや絵コンテをご覧になられて、改めて気付いたことはありましたか?



ムサヲ 自分以外の方が一回手を加えるので、最初は何か違うなっていう感覚がどうしてもありました。そこで何で違うのかっていうのをもう一回説明するために、自分の中で再構築して考えて。



 この瞬間、このキャラは内心こんなことを考えているはずだから、ここのセリフはこう違うんだと思います――と考えるうちに、無意識で描いていたキャラの行動や心理を自分でも再確認できたというか。もう一回、このキャラはなんでこんなことを言ったのか、こんな表情なのかを分析し直して説明するという過程が、すごく勉強になりました。



―― 特に、美咲と(真田)莉々奈、ヒロインの2人の表情や感情線は注意されていると思います。彼女たち2人を描く際に、注力しているポイントを教えてください。



宅野 キャラクターの感情線を、ネジ(根島)が美咲と1話でああいう感じで確かめ合って。そこに莉々奈という別の娘が現れて、どんどん気持ちが三者三様で変わっていくという流れを、観てくれる人に伝わるようには気をつけています。



 あとは、やはり美咲は巨乳で(笑)ボンキュッボン。莉々奈は、ロリではないですけど華奢な感じの幼い感じの子で、その2人をかわいく見せるということで気をつけています。



ムサヲ 私も肉感には結構こだわってて。高崎(美咲)さんは胸が大きいので、あれだけ大きいと全身細いってことは有り得ないだろうと思っているので。莉々奈と2人で並んだ時は太ももの太さとかお尻の大きさとかは絶対に差を出すように注意してますね。




■「花澤さんは、ただありのままに“高崎さん”でした」ムサヲ



―― 先生もアフレコに立ち会わられているようですが、手応えはいかがですか?



ムサヲ 白黒で動きもなくて文字を読むマンガというのは、その人独自の想像が入ることでその世界を知ってもらうメディアですよね。アニメではさらに動きがあって、色があって、声が入る。すごく多面的というか、今まで平たかった世界が、誰が観ても分かる形になるのが凄いなと思っています。



 このキャラはこんな気持ちなのかなと想像するだけだったのが、声優のみなさんの声色ひとつでそのときのキャラの感情が伝わってくる。それがすごく大きいというか、確変だなって(笑)。すごいことなんだなと改めて思いました。



宅野 ご参加いただいているキャストの方々が申し分のない人たちばかりなので、信頼してお願いしています。やはり題材が非常に難しいので、本当に微妙な心情表現が要求されるんですよ。演技も大事ですけど、間を取ってあげたりとか、それによって演技の質も変わってきてしまうので、その辺の難しさはありますね。すごい役者さんたちに演じていただいてます。



―― 美咲役に花澤香菜さん、莉々奈役に牧野由依さん、根島役に逢坂良太さんと聞いて、人気も実力もある方々が揃っているなと思いましたが、原作を読むと、吐息一つで表現しなければならないようなシーンが多いので、やはり実力のある声優さんでないと演じきれないのだろうと感じました。



宅野 そうですね。じゃないと何回もテイクを重ねてしまうことになってしまっていたという気がします。みなさんすごく演技力の確かな方ばかりです。



ムサヲ 私の妹が、「高崎さんは絶対花澤さんだよ!」って言っていたので、そうなんや〜って思っていたんですけど、いざ花澤さんの声を聞いたら、「すごい」の一言で! なんでしょう、吐息のニュアンスや絶妙な時の演技の抑え方が素晴らしくて。私から何か言うこともないです、ただありのままに“高崎さん”でした。




■「命が吹き込まれたキャラたちの感情の移り変わりを楽しんでいただけたら」ムサヲ



―― 秋には実写映画も公開されます。ちなみに、オファーの順番は……? 



ムサヲ アニメのほうが先でしたが、ただ、結構早い段階から実写の話も来ていると伺っていました。アニメの打ち合わせが始まって3カ月目くらいに、実写もほぼ決まりそうみたいな感じのことを言われて。



―― アニメと映画とで連携を取られたのでしょうか?



ムサヲ それは特にありませんでした。映画は映画で、と。ただ、やっぱり実写化に抵抗の多い読者の方も多いと思うので、どういう形だったらそういった方たちに少しでも観てみようかなと思ってもらえるかなっていうのを考えて企画書を出させていただきました。



―― 監督は、映画で主演を務める森川葵さんに負けないぐらい、この2人のヒロインを可愛く描かないといけないわけですね。



宅野 負けていられませんね(笑)。でも実際はそんなに意識はしていません。映画はオリジナルストーリーと聞いていますし、多分ターゲットも違うものになってると思いますし。ただ、実は古澤健監督が私と同じ専門学校出身なんですよ。



 多分先方は知らないと思いますけど、先輩なんです。だから一本の映画として気になりますけど、アニメと比べてどうこうということはありませんね。



――アニメはアニメ、映画は映画で『恋と嘘』の世界観を作り上げるということですね。最後に、原作ファンやアニメで初めて作品に触れる方に一言ずつメッセージをお願いいたします。



宅野 原作を読んでいる方は、自分が好きなキャラクターや好きなシーンがあると思うんですよね。そこが実際動いて、音も入って、色がついて、どう表現されているのか、楽しみに観ていただければなと。原作未読の方は、ただひたすら、自分がこの世界に入ったらどっちの女の子がいいかなぁとか、そういう気持ちになって毎回観ていただけるとうれしいです。



ムサヲ そうですね、原作から読んでくださってる人は、やっぱり声がついて小さい命が吹き込まれたキャラクターたちの、カットごとに変化する感情の移り変わりなどを改めて映像で観て、楽しんでいただけたらなと。



 マンガだと私一人の技量で多少のクオリティの上下がありますが、アニメの場合、皆それぞれプロフェッショナルが集まって、背景から、小物から人物も、全部しっかり作ってくださってるので、アニメで初めて観る方は、その完成された世界として初めて出会ってほしいなと思います。




■TVアニメ『恋と嘘』
・公式サイト http://koiuso-anime.com/
・公式Twitter @anime_koiuso



・放送情報
7月3日(月)より放送開始
TOKYO MX毎週月曜 24:00〜24:30
tvk毎週月曜 25:00〜25:30
サンテレビ毎週月曜 24:00〜24:30
KBS京都毎週月曜 24:00〜24:30
BS11毎週月曜 24:00〜24:30
AT-X毎週金曜 22:00〜22:30



(C)ムサヲ・講談社/政府通知普及委員会




■映画『恋と嘘』
・公式サイト http://koiuso.jp/
・公式Twitter @koiuso_jp


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