齊藤工はなぜ移動映画館を作るのか?国指定重要文化財の八千代座で「シネマバード」を開催した理由

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2017年06月25日 22:54  Fashionsnap.com

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齊藤工
齊藤工が発案した移動映画館「シネマバード(cinéma bird)」が6月25日の今日、熊本県山鹿市にある国指定重要文化財の八千代座で開催された。第5回目となる今回は、復興支援の想いも込め原田知世主演の「しあわせのパン」など3作を公開。第20回上海国際映画祭でアジア新人賞部門の最優秀監督賞を受賞するなど映画監督としても注目が集まる齊藤工は、同プロジェクトを行う理由についても言及した。

 シネマバードは、映画館のない地域に映画作品を届けようと齊藤工が立ち上げたプロジェクトで、同じ空間で感動を共有する大切さを伝えるためにこれまで宮城県石巻市、福島県広野町、大分県豊後大野市、福島県南相馬市で開催してきた。今回の「cinéma bird(移動映画館) in 熊本 2017」は1910年に建設された八千代座で行われ、前日の24日には齊藤工が益城町立 津森小学校を訪問して体育館で鉄拳のパラパラ漫画によるアニメーション動画「家族のはなし」を上映。津森小学校の青木博幸PTA会長は「昨年6月8日に齊藤さんが炊き出しに来てくださって、『また必ず来ます』と約束してくれたことが今回の上映会に繋がりました。このイベントを通して、子どもたちが『人のために何ができるのか』ということを考えるようになってくれれば」と話している。
 「cinéma bird(移動映画館) in 熊本 2017」では「しあわせのパン」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」「シング・ストリート 未来へのうた」の上映に加え、ミュージシャン古賀小由実や舞踊団「花童」、芸人の永野、ミラクルひかるのライブパフォーマンスが披露された。司会は熊本出身のモデル中別府葵が担当し、原田知世や高良健吾、行定勲監督がゲストとして登壇。「しあわせのパン」の制作の裏側などついてトークセッションを行った原田は「ドラマの共演時に、シネマバードの話を齊藤さんが楽しそうに生き生きと話してくださったことを今でも覚えています。歴史のある建物で映画を上映することはとても素敵なことだと思いましたし、笑顔になっているお客様を見て私も幸せな気持ちになれました」と振り返った。
 齊藤は映画館が減っている日本の現状を踏まえ、「映画館で作品を鑑賞するという体験がしづらい、できない人達が地方にいることに危機感を覚えていて、もっと映画という娯楽が日常に溢れ、大衆芸術として気軽に見ることができる環境を作りたかった」と立ち上げた理由について説明。八千代座という場所に関しては、「歴史のある演劇場ということも新鮮でしたし、八千代座そのものが映画のような空間だと感じたため」と語っており、実際に自ら熊本でロケハンを行い、決めたという。また同プロジェクトではスタッフの衣装にも力を入れており、毎回開催地を拠点に活動する職人と一緒に製作。「ファッションを通して色々な職人の方に出会えるので、とても貴重な体験だと感じています」とコメントしており、今回は熊本の「野のや」の染め師である中村いすずが手掛けた生地「天草更紗柄」をポケットに用いたTシャツを披露。「天草更紗柄」には、南蛮文化が来島した頃の熊本・天草が辿ってきた歴史として、天正遺欧少年使節団や天草四郎、古楽器、ギヤマン、ステンドグラス、西欧からやってきた植物、果物などが描かれている。
 映画への思いについて齊藤は「映画は世界中の街を旅できる、景色が見れる窓だと考えています。開けたら閉めるということが大事で、窓を閉じることで自分の時間に戻ることもできます。そして1人ではなく、みんなで窓を覗くということが大切だと考えています」とコメント。今後も様々な地方に赴き、映画の素晴らしさを伝えていきたい考えだ。
■cinéma bird 公式サイト
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