今年のF1は20年前のシューマッハ&ビルヌーブを“ある意味”彷彿させる!?

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2017年07月06日 19:00  citrus

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ひと騒動起きたのは、6月25日に行われたF1第8戦アゼルバイジャンGPでのことである。セーフティカーの先導による走行中、先頭を走るルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)の車両に、後続のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が追突した。


通常なら「ごめん、うっかりしていて」と謝るのはベッテルの方だろうが、怒ったのはベッテルの方だった。ハミルトンが後続のベッテルを困らせてやろうと、故意に急減速したと思ったのだ。


怒ったベッテルはハミルトン車の横に出ると、ステアリングを右に切って体当たりし、抗議の意志を態度で示した。レース後のベッテルの言い分は、抗議のために手を挙げたらぶつかってしまったというものだが、理由はどうあれベッテルの行為が許されるはずはなく、レース中に10秒間のストップ&ゴー・ペナルティが科された。ピットに戻って10秒間静止する罰である。このペナルティを消化したせいで、ベッテルは順位を落とし、4位でフィニッシュした。


話はこれだけでは終わらない。ベッテルにすれば、悪いのはハミルトンだというわけだ。自分にペナルティが科されるなら、ハミルトンにも科されるべきだというのがベッテルの主張である。ところが走行データから、ハミルトンが故意に急減速した事実は確認されず、ハミルトンに対してはおとがめなしに終わった。それでも、ベッテルの腹の虫は収まらない。


ベッテルがとった行為を重く見たルール統括側、すなわちFIA(国際自動車連盟)は、ベッテル本人と、所属チームであるフェラーリのチーム代表をフランス・パリの本部に呼び寄せた。事と次第によってはもっと重い罰を下す含みを持たせての召喚である。

 

 

■実は20年前にも似たような揉め事が…


1997年の最終戦ヨーロッパGP(スペイン・ヘレスで開催)でも似たような事件は起きた。相手より1点でも多く獲ればチャンピオンが確定するレースで、3度目のチャンピオンを狙うミハエル・シューマッハ(フェラーリ)がタイトル獲得に向けて先頭を走っていた。2番手で追いかけるのはジャック・ビルヌーブ(ウィリアムズ)である。ビルヌーブがシューマッハより前でゴールすれば、ビルヌーブが参戦2年目にしてタイトルを手にすることになる。


ゆうゆうトップを走っていたかに見えたシューマッハだが、突如ペースが落ちだした。69周で争われたレースの48周目、隙を狙ってビルヌーブがシューマッハのインを差す。ビルヌーブのウィリアムズがシューマッハのフェラーリより半車身ほど前に出たところで、事件は起きた。


ビルヌーブを先に行かせまいと、シューマッハがビルヌーブ側にステアリングを切り込んだのである。コースの外に押し出してやれ、というわけだ。ビルヌーブが走行不能に陥り、自分が生き残れば、チャンピオン獲得である。インに差し込まれたのに気づいて、無意識にステアリングを切ってしまったというのが、後のシューマッハの言い分だった。魔が差した、というやつだろうか。


だが、はじき飛ばされたのはシューマッハの方だった。ビルヌーブはコースにとどまり、走行を続行。シューマッハのフェラーリはグラベルはまってしまい、リタイヤとなった。悪いのは明らかにシューマッハだが、仕掛けたシューマッハがリタイヤし、仕掛けられたビルヌーブは生き残ってチャンピオンになった。


だから、ということでもあるのだろう。シューマッハの行為は「レーシングアクシデント」だとして不問に付された。


ところが、話はこれで終わらなかった。ベッテルのケースと同様、後日、FIAに呼び出されたのである。そこで下った裁定は、1997年のドライバーズ・チャンピオンシップから除外するという極めて厳しい内容だった。無意識に反応してしまった行動(シューマッハの言い分を信じればだが)とはいえ、危険な行為には違いないし、スポーツマンシップに反するとうわけだ(余談だが、筆者は現地にいた。当然だが、昨日のことのようには覚えていない)。

 


「俺は悪くない!」と言っていたベッテルだったが…


ベッテルやチーム代表の脳裏に、20年前の事件がよぎっただろうか。アゼルバイジャンではハミルトンを非難していたベッテルだったが、FIAの前では全面的に自分の非を認め、謝罪した。素直に謝ったからなのだろうか、ベッテルに対する追加の制裁措置はとられることなく、これにて一件落着となったのである。ぶつけられ損だったハミルトンの胸の内は穏やかではないようだが……。


なかには、ベッテルが出場停止などの重い処分を受ける→納得いかないフェラーリがボイコットするぞとFIAを脅す→フェラーリにボイコットされては困るので、FIAが手打ち案を提示する、という、F1にはお決まりのパターンを期待した人がいたかもしれない。


残念ながら、そうはならなかった。しかし、ハミルトンとの和解はまだ済んでいない。さて、どうなることやら……。
 

 

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