citrus編集部のチンコロ(=密告・チクりのこと。関西弁?)によると、最近「インスタ映えを狙った一部ヤング女子たちあいだで、レコードを選ぶ写真“だけ”を撮って、買わずにお店から出て行く」のが流行っている……のだそう。東京産業新聞社が運営するニュースサイト『ガジェット通信』によると、こーいうことであるらしい。
奈良のレコード店が、女子がレコードを見ている様子を撮影して何も買わずに帰っていくということが増えているということをTwitterで報告した。
「突然人が入ってきて驚いた。しかも若い女性3人組。1人がレコードを見てる様子を友人が撮影し、すぐに帰っていった。実はこの春以降、全く同様の行動がこれで4〜5回目!買った人は1人もいない。若い女性だけに限って言うと、お客さんの実数よりも多いくらいだ(笑)。SNSってなんなのだろう?
(中略)僅かの間に凄い盛り上がりに(笑)僕もとりたてて非難の気持ちはなく、単純に今の若い人のインスタグラムへの情熱に驚いているのが一番の感想。ウチを出た若い女の子グループが近くの雑貨ショップで「次の撮影」にかかる場面を目撃したことも(笑)」
また、(もはや「お約束」とも言ってよい)そんな「インスタ女子」に対する、次のような賛否両論がネット上で飛び交ってもいるのだという。
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「おしゃれ感覚なのかな」
「レコードで聴いてますアピールなんて止めた方が良い」
「そんなブームだったら要らない」
「むしろ撮影を奨励してレコードを買う人が出てくるかも」
さて。citrus編集部がチンコロしてきたってことは、「このゴメスに上記の現象に関して、なんらかのジャッジを下してほしい」って目論みなんだろうが、結論から申し上げると「別にかまわない」……のではないか。奈良のレコード屋の店員さんも「僕もとりたてて非難の気持ちはなく〜」って、ツイートしているわけだし。すなわち、お店側には一応迷惑も掛けていないってことですから。賛否の「賛」の声どおり「むしろ撮影を奨励すればレコードを買う人が出てくるかも」くらいの鷹揚さをもって“見過ごす”のが大人の対応だと私は考える。
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だって、レコードのジャケットワークって、いにしえのグラフィック職人の粋が正方形に凝縮されているって感じで、どれもこれも相当にハイクオリティじゃないですか。CDと比べて単純に大きいし、スマホやパソコンの画面と違って、紙に印刷されているザラッとしたマチエールもいい。
下手な美術館に行くよりも楽しいんじゃないか? しかも、手に取ったり、そのさまを写メしたりする行為を店側が禁止していない以上、そのチョイスのセンスをインスタにアップするのは、デコデコのソフトクリームの写メだけを撮って「ダイエットのために」と食べずに捨ててしまうより、ずっと健全だ。
ただ、私らの若いころは「レコードジャケットを撮影だけして帰る」なんてえのはまさに論外で、ジャケットの絵が手元に置いておきたいほど気に入ってしまったら最後、ロクに視聴すらさせてもらえず、購入するしか方法はなかった。いわゆる「ジャケ買い」というやつで、コイツが悲しいことに、音とジャケットが一致するケースは案外少なく、失敗した場合はレコードラックの左端に詰め込まれるか、部屋のインテリア代わりに飾られ、ホコリを被っているのが日常茶飯事だったのである。
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スマホやパソコンにかぎらず、あらゆるテクノロジーは、極論「人間が犯すリスクを回避するために開発され続けている」とも解釈できるが、私は高性能な超小型カメラ機能が内蔵されている携帯電話のおかげで「ジャケ買いのリスク」を背負わずに済んでいる若い世代が、ある意味うらやましい。ジャケ買いどころか、ハウスマヌカンの口車に乗せられマルイの10回ローンでゲットしたDCブランド洋服やら、挙げ句の果てにはクルマやらに大枚をはたかねば“自分アピール”ができなかった私ら40〜50代からすれば、彼ら彼女らはじつに節約上手だったりする。が、同時に彼ら彼女らは「無駄な散財によって劇的ななにかを学ぶこと」も、たぶんない。そして、それが幸せなのか不幸なのかは正直なところ、私にはよくわからない……。
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