この猛暑のなか「エアコンなし」のクルマに乗るドライバーって…

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2017年07月21日 15:00  citrus

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例年にない暑さに見舞われた2017年のル・マン24時間(6月14日〜18日)は、「エアコンの有無」がちょっとばかり注目を集めた。


一年で最も日が長い時期に行われるル・マンは、天候が読みづらい。つまり、年によって暑かったり寒かったりするのだが、本番を迎えてみるまで傾向が読めないのが困りものだ。ダウンジャケットが必要なほど肌寒い日が続く年もあれば、突然の雷雨が頻発する年もある(2016年がそうだった)。


2017年のル・マンは走行プログラムがあった5日間一度も雨が降らず(雨が降らないのも珍しい)、しかも連日暑かった。決勝レース日は外気温が30℃を超えたほどだった。直近のデータを振り返ってみると、2016年は最高20℃、2015年は24℃、2014年は25℃、2013年は18℃、 2012年は21℃だった。今年は突出して暑かったことがわかる。


最上位カテゴリーのLMP1ハイブリッド(LMP1-H)には、ポルシェとトヨタが参戦している。ポルシェ919ハイブリッドにはエアコンが装備されているが、トヨタTS050ハイブリッドにはエアコンが装備されていない。この違いはどこから来るのか。


LMP1-Hの場合、規則ではエアコンの搭載を義務づけていない。つまり、エアコンは搭載しても搭載しなくてもいい。チームの自由だ。ただし、コクピットの温度は規則で以下のように定められている。

 


・外気温が25℃以下の場合、コクピットの温度は32℃以下でなければならない。
・外気温が25℃より上の場合、コクピットの温度は外気温プラス7℃以下にしなければならない。


2013年のように外気温が18℃までしか上がらなかった場合でも、コクピットの温度は32℃まで許容される。一方で、2017年のように外気温が30℃まで達した場合は、コクピットの温度を37℃以下に抑えなければならない(室温37 ℃と考えると、なかなか過酷な環境ではある)。


さらに、

 

・外気温が32℃を超えると予測された場合、エアコンを装備していない車両を運転するドライバーは、80分以上連続で運転してはならない。

と定めている。ドライバーの体調に配慮した規則だ。ル・マン24時間では150分(2時間半)前後連続して乗り続けるのが一般的で、長い場合は200分(3時間20分)以上連続して乗ることもある(なんともタフである)。ドライバー交替による時間のロスを最小限にする狙いだ。だから、「80分(1時間20分)以上連続で運転してはならない」規則が適用されると、ドライバー交替を頻繁に行わなければならなくなり、大幅なロスになる。


幸い、2017年のル・マンに80分ルールは適用されることがなかった。エアコンを装備しないトヨタはホッと胸をなで下ろしたことだろう。

 


「ノーエアコン」のトヨタ。ドライバーは気合いで乗り切る!?


ル・マン参戦車両を開発するチームにとれば、エアコンはできれば搭載したくない。重たくなるからだ。ポルシェが搭載するエアコンはシステム全体で10kg以下と伝わるが、それでも積みたくない。LMP1-Hの最低重量は878kgと規則で定められている。900kgに仕立てて走ってもいいが、余計な重量は車両運動性能にとって邪魔になる(遅くなる)し、タイヤの傷みも早くなる。

 

だから、878kgの最低重量に抑えて開発したい。欲を言えば、878kgの最低重量より軽く設計し、余った分をバラスト(重り)として利用したい。860kgで設計すれば、18kgの重りを適所に配置し、前後重量配分を適正な値に近づけることができる。そうすることで、クルマの動きのバランスが良くなって速く走れるようになるし、タイヤの摩耗も均等になる。エアコンを積まないチームの言い分は、重くなるのがイヤだからだ。

 


エアコン搭載のポルシェ。「ギンギンではないが助かる」とドライバーは語る

重くなるにもかかわらずポルシェがエアコン搭載を選んだのは、ドライバーのコンディションに配慮してのことである。ドライバーが暑さにやられたのでは、運転どころではないからだ。

 

ポルシェ919ハイブリッドをドライブするあるドライバーは、「エアコンが付いているからといって、乗用車のようにギンギンに冷えるわけではない。でも、ずいぶん助かるよ」とコメントした。

 

一方、エアコン非搭載のトヨタTS050ハイブリッドに乗るドライバーは、「確かに暑いですね」とコメント。でも、エアコンがないことよりも、雨が降ったときに視界が悪くなるほうが耐えられないと、ドライバー目線で優先順位を語ってくれた。暑さは我慢できる。でも、視界が悪くなるのは耐えられないと。

 

今どきエアコン未装備のクルマなど乗っていられないと、オジサン(つまり筆者)などは思ってしまいますけどね……。

 

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