残業代ゼロ法案は働き方をどのように変えていくのか?

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2017年07月25日 12:32  JIJICO

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残業代ゼロ法案とは?


「残業代ゼロ法案」という言葉が、テレビやネットを賑わせています。この言葉が最初に登場したのは、2015年4月ですから、すでに2年以上が経過したことになります。「残業代ゼロ」という言葉だけ聞くと、「いくら残業しても、残業代がもらえなくなるのか!!」と早合点してしまう人も多いのですが、言葉の響きから考えると、当然かもしれません。そこで、まずは、法案の中身を再確認しておこうと思います。


「残業代ゼロ」とは、給料を仕事の「量」でななくて「質」で決めようということです。つまり、「仕事をした時間」でななくて「仕事でどんな成果を出したか」で決めるのです。例えば、スーパーの特売チラシの原稿を作る仕事だったら、「10時間で原稿を1枚作ったから、10時間に対して○○円」ではなくて、「原稿1枚に対して○○円(何時間かかっても同じ)という決め方です。


残業代ゼロ法案のメリットとデメリット


では、この法案にはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。メリットとしては、残業代を稼ぐためのダラダラ残業はなくなります。遅くまで残って仕事をしても、給料が変わらないのであれば、さっさと仕事を終わらせて帰ろうとする人が増えるはずです。デメリットとして考えられるのは、仕事を早く終わらせたいがために、仕事が雑になったり、手抜きになったりしてしまうことです。


高度プロフェッショナルな仕事の定義


そもそもこの法案は、当初は、年収1,000万円以上の労働者が対象とされていました。しかし、その後、ほとんど審議らしい審議はされずに、今年7月に「残業代ゼロ法案」政府案修正の方針が出されました。今回の修正には、専門職で年収の高い人を労働時間の規制からはずす「高度プロフェッショナル制度」が盛り込まれています。つまり、「高度プロフェッショナル」な仕事をしている人たちは、残業代支払いの対象から外れることになります。


では、一体どんな仕事が「高度プロフェッショナル」に該当するのでしょうか。


例えば、がんの新薬開発に取り組んでいる人は、一般的に「高度プロフェッショナル」と言うことができるでしょう。


専門学校の専任講師はどうでしょうか。講師には、実際に授業をする時間以外に、授業の準備をする時間が必要になります。準備にかける時間は人それぞれです。少しでも、いい講義をしようと時間をかけて入念に準備をする人もいれば、効率よく時間をかけずに終わらせる人もいます。学校の経営を考えると、労働時間の規制からはずしてしまったほうがいいのでしょうが、全ての専門学校の講師が「高度プロフェッショナル」に該当するかどうかは大きな疑問です。


労働基準法ができた時代は、日本人の多くが労働集約産業で働いていました。しかし、今は、労働時間の規制がなじまない仕事が、数限りなく存在します。法律による規制も必要ですが、基本は経営者が、労働者の仕事と生活のバランスを考えて、労務管理を行っていくことが重要だと考えます。



(小倉 越子・社会保険労務士)

このニュースに関するつぶやき

  • 『残業代ゼロ法案』というのは反対派が使っている蔑称です。私はこの法案には反対ですが、中身の議論をする上でこの蔑称を使う記事はまじめに見る価値なしとみなしてます。
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