マツダが名門チームとタッグ。最終的な狙いは2020年のル・マン24時間か?

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2017年07月28日 18:00  citrus

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マツダの北米モータースポーツ部門であるマツダ・モータースポーツは7月18日、マツダ・チーム・ヨースト(Mazda Team Joest)の誕生を発表した。デビューレースは2018年1月のデイトナ24時間を予定している。


マツダは2017年のIMSA WeatherTech SportsCar Championshipに、DPi(デイトナ・プロトタイプ・インターナショナル)に分類される2台のマシンを投入している。DPiはル・マン24時間レースをシリーズの一戦に含むWEC(世界耐久選手権)のLMP2とシャシーを共有している。ヨーロッパ発祥のWECの場合、自動車メーカーが主体的に参戦するワークスチームは最上位カテゴリーのLMP1に参戦しなければならず、LMP2はプライベートチームに限定されている。


ところが、アメリカのIMSAはLMP2をベースにしたDPiで戦うことを自動車メーカーに認めている。LMP2は全車共通のエンジン(英ギブソン製4.2L・V8自然吸気)を搭載する決まりだが、DPiは自動車メーカーが独自に開発・選択したエンジンに載せ替えることができる。


LMP2は指定した4つのシャシー製造業者が開発・製造したシャシーを使う決まりで、それはDPiも変わらない。ただし、ボディワークは自動車メーカーが独自に開発することが許されている。WECのLMP1はシャシーもエンジンもボディワークも何もかも自動車メーカーが独自に開発しなければならないが、IMSAのDPiはシャシーを開発する手間が省け、自動車メーカーにとっては負担が軽くなる。WECよりもお手軽にトップカテゴリーへの参戦が可能なのだ。

 


マツダのマシンは市販車同様に「魂動デザイン」を取り入れている


DPiは2017年からIMSAに導入された規格だ。キャデラックは6.2L・V8自然吸気エンジンを搭載したDPi-V.Rを開発。スポーツセダンであるCTS-Vの特徴となっている縦長のヘッドライトを巧みにボディワークに取り込んでいる。ニッサンDPiは、GT-Rが搭載する3.8L・V6ツインターボをベースとしたエンジンを搭載しているのが特徴。日産車のフロントマスクを特徴づけているVモーショングリルを採用している。


マツダはRT-24Pと名付けたDPi車両を開発し、参戦。市販車でおなじみの「魂動デザイン」を取り入れたダイナミックかつ流麗なスタイリングが特徴だ。エンジンはイギリスのAER(Advanced Engine Research)が開発した2.0L・直4直噴ターボを搭載。キャデラックや日産と違って、量産エンジンとの関連は希薄だ。シャシーはアメリカのライリー・テクノロジーズとカナダのマルチマチックが共同で開発したMK30をベースとしている。


マツダ・チーム・ヨーストは2017年に投入済みのRT24-Pを受け継いで、2018年に実戦デビューを果たす。車両の開発や整備、チーム運営はこれまで、アメリカ・フロリダ州に本拠を置くスピードソース(SpeedSource)が行っていた。RX-7からRX-8を経て、近年ではマツダ6(日本名アテンザ)を用いたレース活動でコンビを組んできたチームだ。気心知れた古い仲である。RT-24Pのベースシャシーがライリー/マルチマチック製になったのも、彼らと付き合いの深いスピードソースの存在があればこそだ。


マツダはそのスピードソースにシーズン途中で別れを告げ、ヨーストに鞍替えしたのだ。よほど大きな野望がなければ、できない決断だ。


ドイツに本拠を置くヨースト・レーシングは、プロトタイプカー・レースの名門である。1999年からはアウディとパートナーを組み、ル・マン24時間(2012年以降はWEC)に参戦。2016年にアウディが撤退するまでの間、ル・マンで13回優勝し(2回の5年連続を含む)、WECのタイトルは2回獲得している。アウディの撤退とともに活動の場を失ったヨーストは一体、次はどことパートナーを組むのか……。


優勝請負人とも言えるヨーストと組むのだから、組んだ自動車メーカーは一気にプロトタイプカー・レースの主役に踊り出るに違いない。ヨーストの去就が注目を集めているなかでの、マツダとのパートナーシップ発表である。


マツダ・チーム・ヨースト発表の1週間前、アキュラ(ホンダのプレミアムブランド)がアメリカの名門ペンスキーと組んで、2018年のIMSAにARX-05と名付けたDPi(エンジンは量産ベースの3.5L・V6直噴ターボ)を投入すると発表した。これもビッグニュースに違いないが、アキュラ×ペンスキーのパートナーシップが霞むほど、マツダ×ヨーストのパートナーシップにはインパクトがある。


マツダは2018年に向けた開発に集中するため、2017年の残りのIMSA戦は欠場すると発表した。2018年シーズンで頂点に立つのが、マツダ・チーム・ヨーストの短期的な目標であるのは間違いない。だが、それはあくまでも、大きな野望に向けた布石でしかない。

 


マツダは1991年に日本メーカーとして初めてル・マンで優勝した


その野望とは、ル・マン24時間への復帰である。マツダは4ローター・ロータリーエンジンを搭載した787Bで、1991年に日本の自動車メーカーとして初めてル・マン24時間を制した。2017年の時点でも、ル・マンで優勝した唯一の日本の自動車メーカーである。そのマツダが、ル・マンの優勝請負人とも言えるヨーストと手を組んだのだ。両者のパートナーシップは、マツダのル・マン復帰に向けた布石と見るのが自然だろう。


マツダが創立100周年を迎える2020年が怪しい……。
 

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