なぜF1のホイールは13インチからアップしないのか?

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2017年08月05日 00:00  citrus

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市販車のホイールが大径化しているなか、F1は13インチのまま。ひと昔前の軽自動車並みのサイズだ

「インチアップ」などというドレスアップ用語はもう死語だろうか。エンジンの排気量も馬力もそうだったが、ホイールの径も大きい方がエライ、スゴイ、カッコイイと信じられていた。いや、現在進行形か。エライかスゴイかは別にして、確かに、大径ホイールはカッコイイ。15インチ(1インチ=約2.5cm)より16インチ、16インチより17インチの方がスタイリッシュだ。

 

近年は軽自動車でさえ15インチサイズのおしゃれなアルミホイールがついているし、エコカーの象徴とも言うべきプリウスだって、グレードによっては215/45R17サイズのアルミ&タイヤを装着している。スポーツカーでなくても太幅&大径はめずらしくない。

 

では、レーシングカーはどうかというと、モータースポーツの頂点を自認するF1のホイールは13インチである。ひと昔の軽自動車並みだ。だが、タイヤの外径はドライタイヤで660mmあるので、255/40R18と同等。タイヤのトレッド幅はそれなりにあって、フロントは245mm、リヤは325mmだ。245mmや325mmの幅があってホイールの外径が13インチ(約330mm)しかないのだから、サイドウォールはぶ厚く、まるで浮き輪をはめているようである。

 

 

■分厚いタイヤはサスペンション代わり?

 

F1はホイールの外径を規則で13インチに規制しているのだが、もともとはホイールの内側に収めるブレーキユニットのキャパシティを大きくしないためとの説がある。ブレーキの性能が上がらないようにするためで、ブレーキの性能が低ければ止まれない。止まれなければ飛ばさない。だから安全、という論法だ。現実にはブレーキユニットの寸法を規定してしまえば済む話なのだが、実際問題としてそう簡単に大径ホイールに踏み切れない理由がある。

 


13インチで幅の広いF1タイヤはさながら浮き輪のようなフォルム。このぶ厚いタイヤがサスペンションの機能も果たしている

浮き輪のようにぶ厚いタイヤが、サスペンションの機能のかなり大きな部分を受け持っているからだ。F1マシンも乗用車のように、サスペンションアームが車輪を保持しており、車体側にはダンパーやスプリング(乗用車のようなコイルではなくトーションバーと呼ばれる棒状のパーツ。これをねじって使う)を搭載している。このダンパーやスプリングが車体の動きを制御しているのだが、その制御の面で、空気のボリュームが大きいタイヤのたわみに依存しているのである。

 

もし、大径ホイール&偏平タイヤに切り替わったとしたら、F1マシンのサスペンションは現在よりももっと、サスペンション本来の機能に的を絞った健全な設計にする必要がある。タイヤにサスペンションの機能の大部分を頼っているのをいいことに、現在は空力性能を重視したアームの配置になっているからだ。(とくにスポーツ系の)乗用車のような偏平タイヤになると、ステアリングを切ったときの反応が俊敏になるので、設計の大幅な見直しが必要になる。大径ホイールにすると、これまで主にゴムと空気だった部分が金属(マグネシウム合金)に置き換わるので、重量増になるのも問題だ。

 

 

■ホイールは変わらないがタイヤは太くなる

 

現状でうまく回っているんだからいいじゃないか、というようなムードだったため、乗用車の世界でホイールの大径化が進んでも、F1は頑なに13インチの小径ホイールを履き続けてきた。しかし、トライはあった。2014年のシーズン中、「18インチ(約460mm)ホイールにするとどう見えるか」を主眼に置いたテストを行ったのである。タイヤの外径も30mm増やして690mmにした。

 

2016年シーズンも相変わらず、F1は13インチホイールを履き続けているところを見ると、18インチのテストは前述したような理由で利害関係者の賛同を得られなかったのだろう。その代わりということだろうか、 2017年のF1タイヤは、前後とも太くなる。13インチのホイール径は同じで、フロントのトレッド幅は60mm広くなって305mmに、リヤは80mm広くなって405mmになる。

 


2017年のF1タイヤ。13インチのままだが、フロント、リアともに幅が広くなる

タイヤの幅広化に合わせて車体幅は現行の1800mmから2000mmになる。ファット&ワイドにして、「どうだ、カッコイイだろう」とアピールする作戦だ。既存ファンのつなぎ留めと新規ファンの獲得が狙い。個人的には古くさい作戦に思えてならないが、F1のこの作戦、吉と出るだろうか。

 

 

■フォーミュラEは18インチタイヤを履く

 

一方、乗用車との技術の結びつきを重視して大径ホイールを採用したのがフォーミュラEだ。1社供給のサプライヤーに選定されたミシュランの希望もあり、18インチの大径タイヤ(フロント245/40R18、リヤ305/40R18)を採用した。

 


フォーミュラEは18インチタイヤを採用。しかも晴雨兼用の溝が刻まれたタイヤを履く

それだけではない。レーシングタイヤにあって画期的なのは、晴雨兼用としたことだ。上位カテゴリーのレースでは、路面が乾いているときはトレッド面に溝のないスリックタイヤを履き、路面が濡れているときは排水性を確保するためにトレッド面に溝が入ったウェットタイヤに履き替えるのが一般的だ。だが、乗用車は雨が降り出したからといって、専用のタイヤに履き替えたりはしない。だったら、レースも同じ条件で臨むべきだ、というのがミシュランの主張で、それが受け入れられた格好。

 

ちなみに、アメリカのインディカシリーズは15インチ、日本のスーパーフォーミュラは13インチサイズのホイールを履く。どちらも、ドライとウェットで専用のタイヤを用意。フォーミュラEは電気自動車によるレースという意味でも画期的だが、大径ホイールとドライ&ウェット兼用のタイヤを履くという意味でも画期的だ。

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