コメダ珈琲店にカーブス…シニア世代ビジネスに成功する企業の共通点とは?

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2017年08月05日 19:00  citrus

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名物メニュー「シロノワール」などで知られる「コメダ珈琲店」を運営するコメダホールディングスが2016年6月に上場。今後5年間で現在の約680店舗から1000店舗まで増やす計画だという。

 

「街のリビングルーム」として快進撃を続けてきたコメダ珈琲店は「和風喫茶・おかげ庵」も展開している。名古屋のみで7店舗とまだ小規模だが、メニューはコメダ珈琲店以上に多彩。コメダ名物の「シロノワール」の抹茶ソフトバージョンにうどん、ぞうすい、あんかけスパゲッティ、さらに、だんごやいそべ餅は専用七輪を使って焼ける(!)とか。

 

モビリティ・ジャーナリストの森口将之は、同店の魅力をこう語っている。

 

おかげ庵は、もともと高齢者が多いこともあって、車いすに乗った客が訪れても、他の客が特別扱いするような雰囲気はない。こういうお店なら、車いすに乗った高齢者も、積極的に訪れようという気持ちになるだろう

 

■いろいろな世代がいるほうが楽しい

 

「アクティブシニア」――定年退職後にも、趣味やさまざまな活動に意欲的な、元気なシニア層(コトバンク)をターゲットに、さまざまな企業がシニア世代向けサービスを打ち出している。特典内容は多岐にわたり、池袋や吉祥寺・立川といったエリアごとに大人向けの割引特典を集めた小冊子『50歳からの超トク おとな割』(パルディア)も刊行されている。

 

しかし、当のシニア世代に聞くと「『シニア』『高齢者』を連呼されると、気持ちが萎える」(62歳・女性)という意見も少なくない。「“年寄りのたまり場”になっている場所は避けてるかも。まあ、自分も年寄りなんですけど」(68歳・女性)というのだ。

 

前述のコメダ珈琲店は「街のリビングルーム」をコンセプトに掲げ、ゆったりとしたくつろぎ空間でシニア世代のニーズをがっちりつかむ。といっても特に高齢者向けをうたうわけではない。若者も家族連れも等しく扱う。店によっては来店客の大半を若いカップルが占めることもある。ウォーキングの帰りにコメダ珈琲店に寄るのが日課だというレイコさん(67歳)は「いろいろな世代がいると、他のお客さんを観察する楽しさもある」と語る。

 


コメダ珈琲店名物の「シロノワール」

 

コメダ珈琲店のメニューはブレンドコーヒ−やアメリカンコーヒーが420円、名物メニュー「シロノワール」は600円(ミニは400円)、特製サンド540円〜と決して安くない。そのため、レイコさんが店に行くのは午前中。11時までやっている「モーニング」なら、コーヒー代だけで、トーストとゆで卵もついてくる。

 

「家でも似たようなものを食べようと思えば食べられるけど、夫婦ふたりだとパンをかびさせちゃったり、食べ過ぎたりするのでおっくう。喫茶店に行くほうがラクなんです。夫は夫で行きつけの喫茶店があるみたいですよ(笑)」

 

 

■何のしがらみもなく、おしゃべりができる場が欲しい

 

「一番たのしいのは趣味の友達と過ごす時間です。この年になれば、誰だって大なり小なり大変な思いをしてきています。今も悩みがあるかもしれない。でも、趣味の場ではお互い知らんぷりをして“極楽トンボのマダム”として振る舞うんです」
こう教えてくれたのは、定年直後から念願の着付け教室に通い始めたというユミコさん(62歳)。

 

年をとるにつれてひがみっぽくなってきた夫に、隙あらば親の財布に頼ろうとする子どもたち。待ったなしの状況になりつつある義両親の介護問題と悩みは尽きない。しかし、ユミコさんは愚痴ったり、嘆いたりする代わりに“楽しさだけ”の時間を求める。それは長年にわたって、一筋縄ではいかない問題と向き合ってきた結果の“生きる知恵”だ。

 

 

■フィットネスで体力をつけ、「老老介護」に備える

 

スポーツクラブや体操教室も、シニア世代に人気がある。平日昼間のスポーツクラブに行くと、高齢者ばかりで驚くという話もよく聞く。“女性だけの30分フィットネス”を全国展開する「カーブス」などは、会員の7割を団塊世代が占めているとか。

 

米国発のカーブスが2005年に日本上陸した頃は「忙しい社会人女性でも、短時間で効率よくダイエットできる」がうたい文句だったように記憶している。同世代の友人と「これなら通えるかも!」と盛り上がった。でも、その後、20〜40代の女友達から名前を聞く機会はめっきり減り、代わりに親戚のおばさんをはじめとする年配の女性陣から「カーブスいいわよ!」と熱心に勧められることが増えた。

 

カーブス歴5年のミカコさん(68歳)が通い始めたきっかけは、夫の脳梗塞。幸い、命もとりとめ、後遺症もなく復帰できたが、一時期は寝たきり介護が始まるのも覚悟したという。

 

「うちは子どもも遠くで暮らしているし、もし夫の介護が必要になったら、私が面倒を見るしかないの。今回は大丈夫だったけど、次はわからない。“いざというとき”が来ちゃったときに、共倒れにならないよう、今のうちに体力をつけておかなくちゃと思って」

 

週2回のカーブス通いを続けているおかげで、顔見知りのスタッフや会員も増えた。「この年になっても、頑張れば筋肉量が増えるのよ」と“力こぶ”をつくり、笑うミカコさん。

 

「高齢者」「シニア世代」と、ひとくちに言っても、経済状況や健康状態によってニーズはずいぶん異なる。昭和ひとケタ世代と、団塊の世代とでは価値観の違いもある。とにもかくにも、高齢者の行動特性には注意深く目配りしつつも、年寄り扱いしないというのが、シニア世代をターゲットとするビジネスで勝機をつかむための鉄則なのかもしれない。


※情報は2016年8月1日時点のものです

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